人事部は、事態を重く見た。彼は出向していたので、本社に呼び戻されて、別の人が配属されるようになった。そして奈美さんは上司と人事部から厳重注意を受けた。彼に連絡しようにも、LINEはブロックされており、電話番号もメールアドレスもわからない。
「噂はあっという間に広まり、別の部署に異動になりました。こんなことなら160万円を払っておけばよかったと思います」
何に対して「こんなことなら」と思っているのだろうか。今のところダメージは、会社にバレたことしかない。奈美さんはキャリア志向ではないので、特にそれは応えていないようだ。
「彼と会えないことです。あのとろけるようなテクニックを知ってしまったら、別の男性と何をしても燃えません」
具体的に何をされたのかを聞くと、単に奈美さんの肉体をほめながら触れるということだった。
「あんなことをしてくれる人はもういない。彼に会えないことがさみしくて。今も一人で思い出しながら、自分を慰めています」
Text:Aya Sawaki
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