売れるクルマにはそれなりの理由があります
新車の納期がズレ込んでいる。「7月に買ったけどいまだ納期未定。6月に買った人さえまだ納車になっていない。車検が迫っているのにどうしたらいいのか?」と、そんな声さえSNS上に飛び交います。顧客と直接顔を突き合わせる販社は困惑。無論、資材不足でクルマを作れない自動車メーカーも大変です。
このような状況下では在庫車から買うか、欲しいクルマを気長に待つか、私たちには選択肢がありません。この先を考えると、冬のボーナス商戦どころか、年度末商戦にも間に合わぬ。車検を契機に車両入れ替えをお考えの皆さんは、比較的ポピュラーなモデルでも、半年先納車を見越して商談を進める気構えが必要ですのでご注意ください。
さて、今回はレクサスの末っ子SUV『UX』を考えてみます。数字上は日本で一番売れているレクサスが『UX』です。自販連のデータを見ると、コロナ禍の令和2年度が8761台新車登録されてランキング49位。これが日本におけるレクサスの最高順位となります。他車種はトップ50圏外。
「お安いから当然でしょ!」といわれそうですが、少し視野を広げると、そう安いともいい難い。価格は2.0Lエンジン搭載の純ガソリン車『UX200』が397万3000円~482万8000円、ハイブリッド(エンジンは2.0L)の『UX250h』が432万9000円~544万9000円。なかなかいいお値段です。
ブランド力はさておき、価格面から外車と比較すると、この価格帯がもっとも売れるストライクゾーン。日本自動車輸入車組合の価格帯別昨年のデータを見ると、200~299万円が3万1609台、300~399万円が5万8778台、400~499万円が4万4889台、500~599万円が3万14台。狙い処は”イイ感じ”と出ました。
ちなみに令和3年度上半期で見ると、『UX』が4441台でランキング45位、2番目に売れているレクサスの『RX450h』が3183台で49位。コロナ禍の混迷期にデビューした最新モデル、本命の『NX』ですが、人気爆発なれど当初の予定どおりは生産不可能。少なく見積もっても1年程度は『UX』がレクサスNo.1を維持することが見込まれます。
レクサス『UX』をハード面から検証してみます。クルマ作りの根幹となるプラットフォームはトヨタCH-Rと同じGA-Cを採用。しかし、レクサスは車両価格が高い分だけコストがかけられます。ボディデザインもこだわって作れるし、毎年行われる年次改良でもアップデート可能。デビューは2018年11月ですから、次の年次改良では大幅なアップデートが期待されます。
デビュー当初の『NX』に対するメディア関係者の評価は、ぶっちゃけ「LEXUSを名乗るには程遠いですね」というもの。しかし、そんな『NX』も年次改良を重ねいまは期待十分。おそらく、今回の年次改良で別モノに進化したと推察いたします(希望を含む)。最終評価はご自身でお確かめください。
唯一のネックは大幅な変更が期待できぬインテリアデザインでしょうか。素材や表面仕上げは工夫するでしょうが、ダッシュボードやドアのインナーパネルなど、大掛かりな造形までは通常いじれません(一般的に)。
乗用車寄りのクロスオーバーというキャラクター上、ハリアーのようなしっとり感は期待できない、というか、コンセプト的に作り込みを行わないことも想定されます。『UX』のボディサイズは全長4495×全幅1840×全高1540mm。既存の概念ではクルマの大きさが車格を表しますが、このディメンションなら都市生活で使いやすくパーキングも不自由しません。
しかし、このちょうどいいサイズ感で上質感を盛り込めればドイツのプレミアム御三家もひれ伏すしかありません。彼らが「もうお手上げだよ」というレベルまで『NX』は進化・熟成するのか? そんな次元上昇を期待せずにいられません。
Text:Seiichi Norishige