クルマにあまり興味のない方も、知っているであろう、MINI(ミニ)。それもそのはず、2020年に日本で最も売れた輸入車モデルはMINI(JAIA:日本自動車輸入組合データによる)。日本で最も愛されている輸入車なのだ。

特に「クラシックMINI」は、その愛くるしいサイズや特徴的なデザイン、ゴーカートのようなキビキビした運転フィールで、昔から熱狂的なファンが多かった。しかしながら、BMW製になってから、世代を追うごとにボディサイズは拡大をしており、すでに「ミニ(小さい)」とはいえない。
名実ともに大きくなったMINIの歴代モデルのボディサイズを比較しながら、将来のMINIの姿について予想してみようと思う。
■軽規格に近い「クラシックMINI(1959~2000)」
MINIの歴史は、2000年以前のBMC(ブリティッシュモーターコーポレーション)製の「クラシックMINI」と、2001年以降のBMW製の「ニューMINI」のふたつに分けられる。
クラシックMINIと呼ばれるモデルは、1959年に発売開始以来、改良を加えられながら、41年間もの間、フルモデルチェンジをすることなく生産され続けた。このモデルが誕生した背景には、「深刻な燃料不足」という差し迫った社会問題があったという。その解決策として考案されたのが、「最小限のスペースで最大限の体験を提供する」という信念で開発された「MINI」だ。

道行くクラシックMINIを見かけると、小さすぎて心配になるようなサイズだが、4人が移動するに必要十分な大きさは確保されており、ボディサイズは、3075×1530×1330(全長×全幅×全高)mm、ホイールベースは2035mmと、現在の軽自動車規格(全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下)と、さほど変わらないサイズ感であった。
■急速に現代化した「初代ニューMINI R50,R53(2001~2006)」
1994年にBMW資本となったあとも、しばらくは継続生産されていたクラシックMINIだが、MINIを次世代に引き継ぐため、2001年、新世代のMINIを発表。日本市場へは2002年に上陸した。
基準となる3ドアハッチバック(R50)のボディサイズは、3650×1690×1445(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース2465mm。クラシックMINIに対し、全長は、575mm伸び、全幅は160mm広がり、全高は115mmも高くなり、ホイールベースは230mmも伸びている。とはいえ、同世代でいうとトヨタの初代ヴィッツ(1999年デビュー、3610×1660×1500、WB=2370)よりも、ちょっとだけ大きい程度で、まだまだコンパクトカーの中でも小さい部類ではあった。

世界中のあらゆる顧客が、車内で快適に過ごせるようにするため、そして、1990年代に急速に求められるようになった衝突安全性能向上のため、車両前後のクラッシャブルゾーン(正面衝突時に潰れてショックをいなすスペースのこと)の確保、および、側突対策としての拡幅が必要になったことも、MINIが拡大した要因だろう。ちなみに、幌製ルーフが開くコンバーチブル(R52)もあったが、ボディサイズには違いはなかった。
■キープコンセプトながら派生車も登場「2代目ニューMINI R56(2006~2013)」
初代ニューMINIの登場から6年後の2006年、欧州にて2代目へとモデルチェンジをした。見分けがつかないほど、先代MINIのデザインを踏襲しているが、ボディサイズは全長3740(+90)×全幅1685(-5)×全高1430(-15)mm、ホイールベース2465(±0)mmと、僅かに全長が伸びている(カッコ内数字は先代比の変化代)。同世代では、2代目スイフトスポーツ(2005年デビュー、3765×1690×1510、ホイールベース2390)と同じくらいの大きさだった。

2代目では、様々な派生車が誕生した。ルーフが開くコンバーチブル(R57)に加えて、後席シート需要に応えるため観音開きのサイドドアを用意したワゴンのクラブマン(R55)、ルーフ高さを下げてスタイリッシュにした2人乗りのクーペ(R58)、そのオープンルーフのロードスター(R59)、コンパクトSUV需要に応えたクロスオーバー(R60)(※海外ではカントリーマン)、そしてクロスオーバーをベースとした2ドアクーペ版のペースマン(R61)などだ。

なかでもクロスオーバーは、4105×1790×1550(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース2595mmと大きく、MINIの顔が付いてはいたが、全く別物のSUVのようになった。それでも、ヤリスクロス(2020年~、4180×1765×1590、WB=2560)よりは短く、小さめのコンパクトSUVであった。
■さらに大きく成長した「3代目ニューMINI F56(2013年~)」
続く3代目として、2013年に登場した3ドアハッチバック(F56)のボディサイズは、3865(+125)×1725(+40)×1430(±0)(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース2495(+30)mmと、ここで一気に拡大。とはいえ、トヨタの現行ヤリス(3940×1695×1500、WB=2550)よりは全長が短く、まだまだ小さい部類ではある。

派生車のボディサイズもさらに拡大。新たに登場したヒンジドアタイプの5ドアハッチバック(F55)は、全長4025mmと4メートル超えを記録(2代目アクアが全長4050mm)。ワゴンタイプのクラブマン(F54)も全長4275mm、そしてSUVのクロスオーバーも全長4315mm(2代目ヴェゼルが全長4330mm)と、もはやBセグメントを越え、Cセグメントのサイズへと突入している。
MINI共通のスタイリングをしてはいるが、もはや、「MINI=小さい」とはいえないサイズへと成長。とはいえ、べーシックな3ドアハッチバック(F56)は、まだ「MINI」といえるサイズであろう。
■次期モデルでは「小さく」なる!?
最後に、クラシックMINIから、ニューMINI3世代の3ドアハッチバックの寸法を重ねてみた(以下参照)。クラシックMINIに対して、徐々に巨大化していることがお分かりいただけるだろう。

現行モデルの登場は2013年、すでに8年目へと突入しているが、この2021年5月にはマイナーチェンジで内外装のブラッシュアップと運転支援システムの強化などを行っており、このことから、フルモデルチェンジについては、あと1~2年はない、と思われる。

ではその先の4世代目はどうなるのか。筆者は、デザインコンセプトは、もちろん大きく変わることはなく、3Dハッチバックのボディサイズは、これまでの流れに反して「小さくなる」と予想している。

派生車を大きく用意する戦略によって、顧客それぞれの好みに応じたラインアップが提供できるようになったため、「やっぱりコンパクトなMINIが欲しい」というユーザーにミートするように、今度は小さなMINIが必要になるのでは、という予測だ。また、「クロスオーバーのサイズは更に拡大される」という予測も付け加えておこう。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:BMW、MINI
Edit:Takashi Ogiyama