「ハイソカー」という言葉を知っていますか?? 「ハイソカー」とは、「High society car(上流階級向けのクルマ)」を略した造語で1980年代の日本で流行した、国産の高級乗用車の俗称です。ソアラを筆頭に、クレスタ、チェイサー、マーク IIなど、トヨタの4ドア車のことを指していました。
バブルに向かってまっしぐらだったイケイケの1980年代に流行した「ハイソカー現象」について振り返っていきます。
■ハイソカーに乗っていることが「モテる」条件だった
「ハイソカー」と聞いてピンとくるのは、現在50代以上の方でしょう。「ハイソカー」は、そのほとんどが4ドアハードトップのボディで、インテリアにはワインレッドやブルーのモケット張りが施されており、ルーズクッションのシートを合わせた豪華な装備を持っていました。まるで、キャバレーやスナックのような雰囲気のインテリアが、当時の若者たちを魅了していたのです。
なかでも人気が高かったのが、10~20系「ソアラ」です。高級車であったソアラに、若者たちは憧れ、30代、40代は頑張ってローンで手に入れていました。他にも、60~80系のマークⅡ、クレスタ、チェイサーの3兄弟や、S120~S130系のクラウン、日産ならばスカイラインやローレル、といったクルマが「ハイソカー」として人気でした。
ボディ色は、トヨタのスーパーホワイトの人気が高く、ワインレッドのインテリアとの組み合わせが好まれていました。「ツインカム24」というエンブレムも必須のアイテムでした。
また、デジタル表示のスピードメーターのような、先進的な装備が備わっていたことも、人気の理由でした。
スマホやパソコン、ゲーム機など、今ほど豊富に娯楽がなかった当時、有り余る元気を持った若者たちの憧れは、誰よりもカッコよいハイソカーを持つこと。また、ハイソカーに乗っていることは「モテる」ための前提条件でもあったのです。
■ハイソカーの終わりの始まりは「バブル崩壊」
そんなハイソカーブームですが、1991年ごろから人気に陰りが見え始めます。その理由は「バブル景気の崩壊」。また、このころから、ラリー競技で日本車や日本人選手が活躍するようになったことで、人々の興味がハイソカーからクロカンやスポーツカーへと移行し始め、ハイソカー人気は影をひそめるようになりました。
■ハイソカーのど真ん中!!「ソアラ」が登場したシャコタン☆ブギ
ソアラと言えば、『シャコタン☆ブギ』を思い出すクルマ好きの方は多いでしょう。漫画家楠みちはる先生による作品で、1986年より連載開始したクルマの公道バトルを描いた作品です。マンガのテーマは「ケンカとナンパ」。今でいう「マイルドヤンキー」な主人公と友人たちによる公道レースやラブコメが描かれた、伝説の作品です。
主人公「ハジメ」が乗るのが、トヨタの初代「ソアラ」。シャコタンで、ボディサイドからマフラーを生やし、派手なエアロパーツを装着。友人のコージと一緒に、日々ナンパに精を出します(成功率は低い)。作中で登場したソアラは、2トーンのボディカラーと、ボンネットやドアにゼッケンを描くなどした「グラチャン仕様」のカスタムマシンでした。
また、ハコスカに乗っていたジュンちゃん(実家が整備工場で職業は整備士)も特徴的なキャラクタでした。クルマに精通しており、走りも上手く、さらにはケンカにも強い。クルマ好きの少年たちの兄貴的な存在として描かれています。彼のカリスマ性に惹かれた方も多いのでは。
■まとめ
『シャコタン☆ブギ』は、ハイソカー文化の一遍を理解するには、もってこいの漫画です。今でも、昭和レトロなラーメン屋や床屋に行くと、本棚に並んでいるのを見かけることがあります。いま考えると、なかなか無茶な設定やストーリーですが、今の時代にはない「勢い」を感じられる漫画です。もしどこかで見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:TOYOTA,TOYOTA AUTOMOBILE MUSEUM
Edit:Takashi Ogiyama