自動車保険に特約をトッピングして万全の備えを!
『損害保険料率算出機構』(損害保険料率算出団体に関する法律に基づく料率算出団体)が発表した『自動車保険の概況2020年度版』(2021年4月発行)によれば、『任意自動車保険』の普及率(自家用乗用車)は全国平均79.3%というデータに。都道府県別ではトップが大阪の88.2%で、もっとも低いのは沖縄の57.0%でした。
ちなみに東京の普及率は85.0%で上位にランクされますが、全国的には80%台を切り70%台前半という地域も多く、感覚的には世の中の30%は無保険車と考えた方がよさそう。つまり加害者として十分な賠償責任を負えないドライバーが世の中に3割いると考えるべきです。しかもこのデータは発表こそ最近ですが、普及率のデータそのものは2017年度の統計です。不景気の風が吹けば普及率は当然下がります。
無保険車と事故にあっても最低限度の賠償を行うための『自賠責保険』がありますが、この保険を利用するには加入者から保険会社への申請が必要となります。意識低い系のドライバーがサクサクその手続きを進められるのか? そう考えると危険度は増すばかり。そんなときに役立つのが『無保険車障害特約』です。
この『無保険車障害特約』は、自動車保険未加入車のみならず、相手の自動車保険でまかなえない部分をフォローしてくれるもの。保険会社によっては自動車保険とセットでメニュー化されている場合もありますので、ご自身の契約書で確認しておくといいでしょう。
もうひとつ契約しておきたいのが『弁護士費用特約』です。人命はお金で買えるものではありませんが、残された家族は相応の賠償を受けるべきです。しかし、一般的に保険会社が提示する賠償金額は、他の事件・事故での判例を見れば低い傾向になりがちなのです。
この『弁護士費用特約』を利用し弁護を依頼する場合、保険会社経由でお願いすることもできますが、ご自身で弁護士を選ぶこともできます。業界内での“手打ち”とならぬようしっかり見定めて活用したいところです。
自動車保険に限らず、保険という商品の類は、いざ行動を起こした時のみ、その成果が表れます。例えば生命保険ひとつとっても、手続きや審査、保険会社により入金までの時間に大きな差があります。単純に掛け金だけを比較するのは早計です。
『弁護士費用特約』を進めるもう一つの理由は、自動車保険は自分の過失がゼロだった場合、保険会社は基本的にその事故に介入できず、示談交渉が行えない点にあります。つまり、加害者本人もしくは相手の加入保険会社とご自身が直接交渉に応じなければならないのです。
ここで実例をひとつ。私はかつて信号待ちで停車中、後続車に追突されたことがあります。私が乗っていたのは新車で購入した納車2カ月目のフェアレディZ。怒髪天を衝くとはまさにこのこと。早々に警察に連絡し現場検証となりました。
翌日、修理工場で診断してもらったところ、バンパー傷の他に、内部のメンバーが衝撃を吸収しへこんでいることが判明。シャシーにダメージはありませんでしたが、塗装だけでは済まない事故となりました。
この事故、私の過失はゼロなので私の契約する保険会社は未介入。しかし、担当さんがアタリだったのでしょう。「まだ新車なので修理費にプラスして、車両代金の30%、もしくは、修理費の30%、どちらか安い方の金額を”格落ち”として請求できます」とアドバイスをくれました。
この聞き慣れぬ格落ちとは、「評価損」、「査定落ち」とも呼ばれます。たとえばクルマを手放すとき、「修復歴」とならない事故でも、実際の査定では買取り(もしくは下取り)金額が安くなるケースもあるのです。よって、知らなければ請求できない正当な権利なのです。
私のケースでは無事この格落ちが認められたのですが、通常、保険会社から先にこの格落ちを申し出ることはありません。また、近年の傾向として、この評価損を認めない方向にあると聞きます。そんなときは迷わず『弁護士費用特約』を使いましょう。
今回取り上げた『無保険車障害特約』、『弁護士費用特約』の2つを『自動車保険』にセットしても、月々の掛け金(保険料)の上昇は1000円前後と見込まれます。無論、基本となる保険の契約内容と保険会社により金額は変わりますが、いざという時に効力を発揮します。
これら以外に特約には様々なメニューがあります。皆さんも今一度、自動車保険の契約内容を再考されてはいかがでしょうか。
Photo:GettyImages
Text:Seiichi Norishige