◆ロンドンのアフターヌーンティーで食べた絶品サンドウイッチを思い出す◆
ロンドンに住んでいた頃、観光がてら私に会いに来てくれた日本の友人がアフタヌーンティーを所望するので、ロンドンの著名なホテルの席を予約しました。
アフタヌーンティーの評価が非常に高いことは知っていて、味とサービス、雰囲気すべてにおいて素晴らしかったのですが、私とその友人が最も驚いたのは、アフタヌーンティーの三段トレイの下段に佇んでいたシンプルなきゅうりとスモークサーモンのサンドウイッチでした。
思わず目を見合わせるほどの美味しさで、「まさかサンドウイッチに感動する日が来ようとは」と帰りに2人で話したものです。
紅茶は強めのブレンドから軽めのものまで基本的には何でも合うが、濃いブレクファーストティー好きの私もやや軽めのものを選ぶことが多い。ホテルのハウス・ブレンドは飲みやすく食事にもよく合うので種類が多くて困った時はおすすめ。
「サンドウイッチ」という名称は英国貴族の第4代サンドウイッチ伯爵ジョン・モンタギューに由来していますが、英国では昔も今も変わらず、昼食や軽食として不動の人気を得ており、お昼時になるとスーパーはサンドウイッチを手にした会社員や学生たちで溢れます。
私もロンドン在住時はお昼はサンドウイッチで済ませることが多かったのですが、具も色々と用意されていて選ぶのが楽しかった記憶があります。
きゅうり、スモークサーモン、ローストビーフ、チェダーチーズ、コロネーション・チキン(蒸し鶏とカレー味のクリームを合わせたもの)など英国伝統の具材はとても人気です。これらはアフタヌーンティーでも供されますが、その際は食べやすいように小さくカットされ、フィンガー・サンドウイッチと呼ばれます。
◆バターを使わずクリームチーズで◆
私がアフターヌーンティーで食べたサンドウイッチの美味しさの秘密は謎のままですが、バターの代わりにクリームチーズを使っていて印象的でした。クリームチーズをサンドウイッチに使用するのはアメリカで始まったようですが、英国でも大変人気です。クリームチーズの優しい酸味とクリーミーさが食材を引き立てくれます。
今回はこの絶品サンドウイッチを思い出しながら、きゅうりとスモークサーモンのフィンガー・サンドウイッチを作りたいと思います。
きゅうりはアフターヌーンティーの文化が花ひらいた19世紀ヴィクトリア朝期には大変貴重な食材でした。その貴重な野菜を使ったサンドウイッチでゲストをもてなすことは一種のステータスだったともいえます。
同じくスモークサーモンも英国を代表する食材。これら王道中の王道の具材をクリームチーズとハーブでしっとり、香り豊かなサンドウイッチに仕上げます。もちろんクリームチーズをバターに置き換えることやハーブが手に入らない場合は省くことも可能です。
◆ハーブの香りが食材を引き立てる、フィンガー・サンドウイッチ2種の作り方◆
①スモークサーモン・サンドウイッチを作る。クリームチーズは混ぜたり塗ったりしやすくするため、室温に戻しておく。ハーブ(ディル)は細く刻む。スモークサーモンはキッチンペーパーなどで水気を取っておく。
②ヘラなどでクリームチーズを混ぜ、滑らかになったらディルとレモン果汁、塩胡椒を加えてさらに混ぜ合わせる。
③食パンの片面に②を塗る
④スモークサーモンを載せて胡椒をふり、同じようにクリームチーズを塗った食パンを載せる。
⑤キューカンバー・サンドウイッチを作る。①と同じくクリームチーズは室温に戻し、ミントは葉をみじん切りにする。きゅうりは2〜3mmほどの厚さに斜め切りにし、水気を取っておく。
⑥クリームチーズ、ミント、塩胡椒、マスタードを混ぜ合わせて、食パンに塗る。きゅうりを並べてクリームを塗ったパンで挟む。
⑦耳を落として対角線上に切る。切る前にラップをして冷蔵庫で15〜30分寝かせると食パンがしっとりし、クリームチーズも硬くなってカットしやすくなるメリットがある。
MINTON(ミントン)のハドンホールの食器に盛り付けて、ミルクティーと共に頂く。ハドンホールは1948年に発表されて以来、ミントンのシンボル的デザインとなっておりご存知の方も多いはず。サンドウイッチやビスケットなど、何気ない料理も華やかな印象に。
《材料》各12個分
<スモークサーモン・サンドウイッチ>
10枚切 or サンドウイッチ用食パン 6枚
スモークサーモン 6切れ
クリームチーズ 100g
ディル 5〜6本
レモン果汁 大さじ1
塩・胡椒 適量
<キューカンバー・サンドウイッチ>
10枚切 or サンドウイッチ用食パン 6枚
きゅうり 1本
クリームチーズ 100g
ペパーミント 1本
マスタード 小さじ2
塩・胡椒 適量
photos&text: Kohki Watanabe
◆渡邉耕希(わたなべ・こうき)◆
愛媛県出身の1992年生まれ。ロンドンの大学でクラシック音楽を学ぶ。現地でヴィンテージ・アイテムの魅力に取りつかれ、服や靴を中心にアイテムの歴史的背景まで探求するようになる。無類のスイーツ好きが高じて開設したYouTubeチャンネル「The Vintage Salon」にて料理や英国菓子作りを通して日本で実践できる英国的生活を発信している。