ちょっとマニアックな袖のボタンの知識。ご存知?
男性のオシャレ化が進む昨今、サラリーマンの戦闘服であるスーツにもこだわりを見せるメンズが増えていますよね。
タイの色、結び方、シャツの選び方、ジャケットの柄など、自分らしさを見せる要素はたくさんありますが、ジャケットの袖のボタンまで気にかけているダンナはどれくらいいらっしゃるでしょうか。
気にかけるどころか「袖のボタンって何? 全部同じじゃないの?」と思っていたりしませんか? 確かにこのディテールはスーツにおいて少しマニアックな知識です。
今回はジャケットにおける袖のボタン仕様の名称とその特徴について、基礎知識を確認して参りましょう!
Q1.「本切羽」とは?
ジャケット袖のボタンにはいくつか種類がありますが、その中でもこれはフォルツァ読者のダンナ方には当然知っていていただきたいモノ。一体どういう仕様のことを指すのでしょうか。
正解は、袖口に対となるボタンとボタンホールが付いており、開閉可能な仕様のことです。
「本切羽(ほんせっぱ)」で、ボタンホールの穴が開いてるものを「本開き(ほんあき)」と言い、英語では「surgeon's cuff(外科医の袖口)」と言います。
この本切羽が生まれた理由に関しては様々な説がありますが、急ぎの用の際に医者がジャケットを脱がずに袖をまくり作業できるよう、袖口に開閉機能がついたというエピソードが有名です。
●本切羽のメリット
ナポリの職人がイギリスのスーツとの違いをアピールするために考案したと言われ、イタリアならではのディテールとして人気があり、かつてはオーダースーツのみの特別オプションでした。
今でこそ既製スーツにも本切羽デザインのものは多くありますが、高級イメージはまだ根強いため、そういったアピールをしたい人にも人気があります。
また、ボタンを開けることで袖口に抜け感を演出できるため、こなれたファッションを味わいたい人にはうってつけのデザインなのです。ボタンを開け袖をまくることで、カッチリしたスーツをカジュアルに着こなすこともできます。イタリアっぽさをさりげなく出したり、ボタンを開ける数や位置により上級テクニックを楽しむことも。
●本切羽のデメリット
まず、本切羽はオーダーにしろ有料オプションであることが多く、コストがかかります。費用をあまりかけずにスーツを揃えたいと思っている方には若干ハードルが高め。
更にこれが一番重要なのですが、ボタンホールがお飾りでなくちゃんと穴が空いているため、直しが非常に困難となります。袖丈の大幅な調整をするとなると、アームホールから直すしかなく、非常に大掛かりかつ全体のデザインが崩れてしまう可能性を帯びることになるんです。
オーダースーツであれば慎重に相談を重ねるべきですし、既製スーツであれば直しの必要がないジャストサイズを選ぶ必要があります。購入の際はよく気をつけて選んでくださいね。
Q2.「開き見せ」とは?
では、本切羽に対し、開き見せとは一体どんなデザインなのでしょうか。
これは、袖にフェイクのボタンホールとボタンが付いている仕様のことを指します。要するに飾りボタンですね。
ボタンホールは かがり縫いが施されているだけであるため当然閉じており、実際に袖口を開閉することはできません。既製スーツに多く見られるデザインとなります。
Q3.「キスボタン」とは?
それでは最後にこの名称は聞いたことがありますか?
こちらは、袖のボタンが少し触れるくらいに重ねられている仕様のことを指します。またの名を「重ねボタン」といい、こちらの名称の方が一般的です。
通常のボタンは隙間なくつけられていますが、このデザインでは重ね付けで装着されており、手元に立体感を持たせることができます。
かつては時間と手間がかかる手づけでしかできない仕様だったため、オーダースーツのこだわり要素として人気の箇所でしたが、現在は機械でも可能です。
ボタンの種類を変えることでお洒落度合いがグッと変わります。
袖のボタンもこだわった着こなしを
知識も増えたところで、どのデザインをどう着こなすかを考えるのも大事なポイントです。
本切羽の場合、イタリアではいくつかボタンを外し、イギリスではボタンを外さないというスタイルが多く人気だそうです。ちなみにイタリアを愛する干場編集長は一つだけボタンを外すスタイルを好んでいますよ。
いかがでしたか? ぜひ袖のボタンデザインにもこだわりを持ってスーツを楽しんでくださいね。
Text:FORZA STYLE
Photo:GettyImages