日本の服飾業界の重鎮として活躍している、ファッションアドバイザー・赤峰幸生氏。
御年76歳でInstagramのフォロワーは3万3000人超、服飾のみならず、アートや歴史の分野にまで及ぶ博覧強記で、老若男女を問わずたくさんの方々に支持されています。
そんな赤峰氏が語る、誰も教えてくれなかった「紳士服の教科書」。第5回目は、ネクタイの基本中の基本、「プレーンノット」の結び方についてです。
結ぶ前にまずネクタイとシャツ選びから
さっそく結び方の説明……といきたいところですが、ネクタイを美しく見せるコツは結ぶ前から始まっています。「ネクタイとシャツとの関係性は芯の柔らかさ」と赤峰氏。
ネクタイもシャツも、芯の固いものは結びにくいです。芯の柔らかいネクタイと、芯がほとんど入っていないようなソフトなシャツがオススメ。
格好良いプレーンノットの結び方
芯の柔らかいネクタイとシャツを選んだら、いよいよネクタイを結んでいきましょう。
シャツの襟を完全に立てて結ぶ方もいますが、寝かせたまま襟にネクタイを入れて結んでいくのが赤峰流。
まずは第一ボタンを留め、ネクタイのポジションを決めます。
トラウザーズのウエストのあたりに小剣という短い方を合わせて長さを調節しているという赤峰氏。人によってポジションは多少異なるので、自分にぴったりな長さを見つけておくとよいでしょう。
大剣を上にして交差させたら、交差した部分を左手でしっかりと持って、そのまま大剣を一周ぐるりと回します。
回した先を内側から外側に出します。交差した部分の下をくぐらせて、一番上に持ってくるようなイメージです。
一周回した部分の中に、先ほど内側から外側に出した大剣を通します。ここまではプレーンノットでネクタイを結んだことがある方ならご存知の、基本の結び方ですね。
ここからが、ネクタイを格好良く結ぶポイントです。
ここで一度、結び目に通した部分をつまむように持ち、真っ直ぐになるように軽く引っ張ります。
ここから「ディンプル」と呼ばれるえくぼ、ノット(結び目)の下のくぼみをつけていくのが最大のポイント。
左手でディンプルを形作るようにノットの下あたりを持ち、右手で小剣を持ちます。左右を少しずつ交互に引っ張って、ノット(結び目)を固くしていくようにします。
大事なのは、急いでギューッと小剣を引っ張って締めずに、ゆっくりとディンプルがついているか確認しながら締めていくこと。
ノットの形はベタッと四角いのではなく、「江戸前のお寿司のように」少し反るようなイメージで、立体感を意識しましょう。
小剣が長めになってしまった……というときは、トラウザーズの中に小剣の先を仕舞い込めばOK。これであなたも格好良くプレーンノットが結べるようになったはず。
周りと差をつける上級者テクニック
ここからさらに格好良く見えるひと工夫を。誰でもすぐにできて、着こなしをぐっとアップグレードできますよ。
しっかりと首元まで締め上げたら、結んだ上を再度着物の御端折りのようにグッと上げると、ノットの上からシャツが覗かず、きちんと見えます。
レギュラーのシャツなど襟が開いてしまうことも多いですが、指を襟の下に入れて襟の先をグッと引っ張って、立体的になるように形を整えましょう。これだけで、ネクタイとの兼ね合いもよくなり美しいシルエットに。
さらに個性を出したいときは、小剣を少し引っ張って元に戻すと、ネクタイの太さが変わります。
また、左にポケットチーフが入るのを計算して、右に少し流し気味にしてもバランス良く決まります。
その日の気分や見せたいイメージによって、ほんの少しのニュアンスをチェンジしてみるとよいでしょう。
大人の男のネクタイの結び方、身に着けておいて損はありません。動画でも詳しく解説しているので、見ながら練習してみてくださいね。
Text:FORZA STYLE
プロフィール
赤峰幸生
イタリア語で「出会い」を意味する、インコントロ代表。大手百貨店やセレクトショップ、海外テキスタイルメーカーなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティングを行う。2007年から『真のドレスを求めたい男たちへ』をテーマにした自作ブランド「Akamine Royal Line」の服作りを通じて質実のある真の男のダンディズムを追及。(財)ファッション人材育成機構設立メンバー、繊研新聞や朝日新聞などへの執筆活動も行う。国際的な感覚を持ちながら、日本のトラディショナルが分かるディレクター兼デザイナーとして世界から注目を浴びる日本人のひとり。