日本の服飾業界の重鎮として活躍している、ファッションアドバイザー・赤峰幸生氏。
御年76歳でInstagramのフォロワーは3万3000人超、服飾のみならず、アートや歴史の分野にまで及ぶ博覧強記で、老若男女を問わずたくさんの方々に支持されています。

そんな赤峰氏が語る、誰も教えてくれなかった「紳士服の教科書」。第3回目は、前回のトラウザーズのアイロン掛けに続いて、シャツのアイロン掛けについてです。
クリーニングに「のり無し」で頼む
格別の仕上がりを生み出すためには、まずクリーニング屋さんに頼む場合、「のり無し」で預けます。

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クリーニング屋さんには一度出す赤峰氏。そこで特に大事なポイントは、のりを固く付けないこと。こうして、クリーニング屋さんに出したは良いものの、やはり折れジワが気になってしまいますよね。
そこで、クリーニングに出したことでほぼアイロンは当たっていますが、改めて折れジワをきっちり取ることが重要になります。また、自宅で洗濯をした後のアイロンがけにも、もちろん使えるテクニックですから、覚えておいてソンはありません。
アイロン掛けの手順
基本的にジャケットを常に着ることが多く、シャツ一枚になる機会はそうそう少ないでしょう。しかし、そうであったとしてもシャツのシワは綺麗にしておきたいもの。

さっそく、赤峰氏がこだわるシャツのアイロン掛けの手順について見ていきましょう。
霧吹きを使用する。
トラウザーズのアイロン掛けと同様に、赤峰流では霧吹きを使用します。スチームアイロンも悪くはありませんが、よりアイロンの熱を効果的に生地に伝えるためにも、面倒ですが霧吹きのほうが良いと言います。
ボタンを外してアイロンを掛けることもあるそうですが、基本的にはボタンをつけたまま、平たく置いてアイロンを掛けていきます。
引っ張りながら、全体を追い込んでいく。
霧を吹いたシャツに、アイロンの先を使用し、漁でいう「追い込み漁」のように全体を追い込んでいきます。左手でシャツを引っ張りながら追い込んでいくことで、シャツが非常にフラットになります。

アームホールの下も着るとすぐシワになってしまいますが、ここまで丁寧にアイロンを掛けることも注意です。
シャツのスリーブにもこだわりを。
シャツのスリーブもシワがつきやすくなっています。そこで、スリーブの下の縫っているところをアイロン台の上で指の先を使って追い込みながらフラットな状態にします。

スリーブにはプリーツがあるので、シワを取りきることはできませんが、霧を吹いてまっすぐに掛けていただきながら、追い込んでいきます。霧の湿り感がなくなるまで、アイロンを掛けて下さい。
また、カフスもクタクタとしてしまっているので、引っ張りながら、ずっと追い込んでいきます。

赤峰氏のシャツは接着芯という芯地を使用していないので、シワが出てきやすい作りになっています。
先程と同様にアイロンの先を使って、細かく押さえながらフラットにして下さい。

衿のゴワゴワとしたシワもグッと衿を引っ張っていただいくことで、綺麗な形にプレスすることができます。引っ張って追い込んでいくを意識してアイロン掛けをして下さい。
ポケットチーフについて
ヨーロッパではトラウザーズ、シャツに加えてトランクスからポケットチーフまでアイロンを掛けるそうです。
前日に折ったままではなく、アイロンを使用して綺麗なフラット状態にして下さい。そこからソフトに四角くたたんでいただいて、使用することがポイントです。

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ポケットチーフというのは、船の旅の時代に人を見送る際に「さようなら~」といって見送ったのが、ポケットチーフとハンカチーフの始まりだそうです。ぜひ豆知識として覚えて下さいね!
アイロン掛けでスーツをよりかっこよく着こなす
いかがでしたでしょうか?アイロン掛けをクリーニングに出しただけで満足している方も多いのではないでしょうか。

トラウザーズはクリースを、シャツは折れジワを意識してアイロンを掛けるだけで、より魅力的な印象をもたらすことができます。
ぜひ動画をご覧になって参考にしてみて下さいね。
Text:FORZA STYLE
プロフィール
赤峰幸生
イタリア語で「出会い」を意味する、インコントロ代表。大手百貨店やセレクトショップ、海外テキスタイルメーカーなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティングを行う。2007年から『真のドレスを求めたい男たちへ』をテーマにした自作ブランド「Akamine Royal Line」の服作りを通じて質実のある真の男のダンディズムを追及。(財)ファッション人材育成機構設立メンバー、繊研新聞や朝日新聞などへの執筆活動も行う。国際的な感覚を持ちながら、日本のトラディショナルが分かるディレクター兼デザイナーとして世界から注目を浴びる日本人のひとり。