日本の服飾業界の重鎮として活躍している、ファッションアドバイザー・赤峰幸生氏。
御年76歳でInstagramのフォロワーは3万3000人超、服飾のみならず、アートや歴史の分野にまで及ぶ博覧強記で、老若男女を問わずたくさんの方々に支持されています。
そんな赤峰氏が語る、誰も教えてくれなかった「紳士服の教科書」。第2回目は、トラウザーズのアイロン掛けについてです。
クリースが命
ズバリ、トラウザーズで一番大事な箇所は「クリース」。スラックスの中心の折れ目のことで、センタープレスという言い方もします。

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どんなに立派なスーツでも、トラウザーズにクリースがなくては台無しです。
「クリープを入れないコーヒーなんて」というテレビCMが大昔にありましたが、まさに「クリースのないトラウザーズなんて」と言えるでしょう。
「最近はクリースが全然ないビジネスマンの後ろ姿をエスカレーターでたくさん見る。非常に無様です」と嘆く赤峰氏。
スーツを着る前には、クリースを意識したアイロン掛けをするように心掛けましょう。
アイロン掛けの手順
早速、赤峰氏が30年、40年近くこだわり続けている「赤峰流」のアイロン掛けの手順を見ていきましょう。
霧吹きを使用!
赤峰流では当て布は一切使わず、霧吹きを用います。
アイロンも普通の家庭用アイロンでOK。
ダブルの裾上げであれば、カブラ幅もきっちりと
トラウザーズの裾部分がダブル仕上げである場合、カブラ幅と呼ばれる折り返しが存在します。

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カブラ幅は、手の力が入りやすいアイロンの下部分を利用してしっかり潰し、跡をつけましょう。あまり長いこと熱を加え続けると、当て布がない分焦げてしまうため、加減を注意するようにしてくださいね。
クリースはしっかり力を入れる
一番重要なクリース部分は、カブラ幅からそのまま上に向かってしっかり跡をつけていきます。

下部からぐっと力をかけ、真っ直ぐに引っ張りながらゆっくりアイロンをかけてください。
タック部分もお忘れなく
ワンタックのプリーツが入っている場合なども、やることは同じです。タック部分もクリースの上下を合わせて霧を吹きかけ、合わせたタックの中にアイロンの先が入り込むように熱をかけてください。

この時上に少し引っ張ることを忘れないように!
きちっとしたスーツ姿を
せっかく立派でサイズの合ったスーツを身につけていても、クリースが入っていなかったりシワだらけだとなんだか残念な印象になってしまいます。

ビジネスマンとして恥ずかしくないスーツ姿で過ごせるよう、ぜひ参考にしてくださいね。
Text:FORZA STYLE
プロフィール
赤峰幸生
イタリア語で「出会い」を意味する、インコントロ代表。大手百貨店やセレクトショップ、海外テキスタイルメーカーなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティングを行う。2007年から『真のドレスを求めたい男たちへ』をテーマにした自作ブランド「Akamine Royal Line」の服作りを通じて質実のある真の男のダンディズムを追及。(財)ファッション人材育成機構設立メンバー、繊研新聞や朝日新聞などへの執筆活動も行う。国際的な感覚を持ちながら、日本のトラディショナルが分かるディレクター兼デザイナーとして世界から注目を浴びる日本人のひとり。