側面のボタンを押すと 蓋が開きながら火がつくメカニカルな作りにヤラレました!
2020年に20周年を迎えたディストリクト ユナイテッドアローズのオープンから店頭に立ち続ける顔的な存在で、ブログやコラムにてマニアックで役に立つ、素敵な話題を提供してくれる森山真司さん。
基本的に服を捨てることはなく、自宅のクローゼットや収納には収まり切れないくらいの服を所有する森山さんが、なかでも思い入れが強くて捨てられない服をご紹介する企画の第4回目は、トーレンス(THORENS)のライターです。
僕が出身地である佐世保時代に通っていたアンティークのお店で、高校生の頃に出会って買いました。高校生になぜライターが必要だったかは別として(笑)。
側面のボタンを押すと 蓋が開きながら、自動的に爪がシリンダーをまわして火がつくプッシュ・ボタン式(セミ・オートマチック)という非常に珍しい構造。
ポケットの中で勝手に火がついてしまうのを避けるために、ボタンの部分はネジ式になっているなど、細かい部分も考えられていたり、このメカニカルな作りにヤラレてしまいました。
デジタル時計好きになったきっかけがタイメックス「アイアンマン」だったら、アンティーク好きになったきっかけが このトーレンスのライターでした。
知る限り、この構造はトーレンス社だけだと思うんですが、元々は蓄音機やオルゴールなどを製造していて、現在はターンテーブルの製造で有名。その技術が、このライターにも活かされているのではないでしょうか。
このライターの製造自体は、1913年から1964年の約50年の間だけでしたから、僕が買った当時でもアンティーク。高校生で買えたので、2万円くらいだったのかな。
雑に扱ってしまっていたので、オイルを入れるお尻の部分のネジをなくしてしまって使えなくなってしまったんですが…。ユナイテッドアローズに入社して、何度かソブリンハウスにヘルプで立つことがあったんですが、そこで売ってるのを発見して、「まだ売ってるんだ!」とノスタルジックな思いに駆られ、2代目として購入しました。
そのときは4万数千円くらいになっていましたけど。
このライターをきっかけに、イムコ(IMCO)の葉巻用ライターで火が斜めにつく「ヒット(HiT)」というモデルがあるんですが、それはカラフルなバージョンなど、たくさん集めることになりました。
自分でバラして改造できたので、『探偵物語』の工藤ちゃんみたいに、大きな火をつけることができたので(笑)。それも捨てずに残してあります。
外だと火がつきにくいので、2代目もほとんど使うことなく"モノ"として取ってある感じですが、どちらも捨てることはないと思います。
Photo:Shimpei Suzuki(Item)
Edit:Ryutaro Yanaka
「ディストリクト ユナイテッドアローズ」セールスマスター
森山 真司さん
ファッション業界で30年に及ぶキャリアを誇り、ディストリクト ユナイテッドアローズにおいては2000年の立ち上げ時より在籍する名物スタッフ。『スター・ウォーズ』をこよなく愛する、“自称ジェダイ”は、服・革靴など莫大な量を所有。1968年生まれ。