雨の日のドライブには必須の装備である、ワイパー。「サッ、サッ」と、雨水をきれいに拭ってくれると、視界良好、安心して運転できます。が、ときに、「ガガガッ」や「ビビビ」と、引っ掛かったようなビビリ音を発し、雨水をうまく拭えないことがあります。
このような「ワイパーの引っかかり」は、「ワイパーゴムを交換すれば治るでしょ」と思いがちですが、実は、他にも問題がある場合があります。
■ワイパー交換は「ワイパーブレードごと」
ワイパーは、モーターとリンクして動くワイパーブレードと、ウィンドウ表面を払拭するワイパーラバー(ゴム)で構成されています。
ビビリ音の原因のひとつは、ワイパーラバーの劣化や汚れです。紫外線や経年劣化によって、ゴム部分が硬くなっていたり、異物によって裂けやひび割れが生じてしまうのです。
また、ワイパーブレードも、雨や雪だけではなく、泥やほこり、時には虫を取り除くなど、過酷な環境下で働いています。ワイパーブレードは、ガラス表面に薄く均一な水の膜を作ることで、クリアな視界を確保しています。
が、この水の膜が均一でないと、光が屈折してしまい、視界不良となります。つまり、ワイパーブレードのガラス面に対して均等に圧力がかかることが、何よりも重要なのですが、ブレード本体にダメージが及ぶと、圧力を均一にかけることができなくなってしまいます。
ワイパーブレードとワイパーゴム、このどちらか一方でも劣化が進むと、フロントガラスの上を滑らず、引っかかるように動き、にじみやスジ状の線、そしてビビリ音が発生してしまいます。ワイパーゴムが切れるほど使っていたり、ゴム部分にヒビ割れが生じていたり、ブレードの弾力がなくなっていると分かりやすいのですが、見た目はいつも通りに見えても、劣化が進んでいる場合もあります。
国産車のワイパーシステムを多く作っているデンソーワイパーシステムは、ワイパーの寿命は約1年、ゴム部だけでなく、ブレードごと交換をするように、といいます。「安いからゴム交換だけで済まそう」、というのでは、またすぐ元の状態に戻ってしまいかねません。ちなみに、ワイパーラバーは30度から50度あたりが、最良の「倒れ角」だそう。常に絶妙な角度になるような設計がされています。
■フロントガラスに撥水コートをしている場合は、ワイパーも専用のものに
ビビリ音の原因は、ウィンドウガラスのほうに原因がある場合もあります。例えば、大気中にあるほこりや黄砂などの「汚れ」や、ボディのワックス等が油膜としてフロントガラスに付着すると、摩擦が大きくなり、ワイパーを動かした際、「ビビリ音」となってしまいます。
また、撥水コートをフロントウィンドウに施工している場合、ワイパーとガラス面の間にあるべき水分が除去されてしまうため、ワイパーゴムがガラスに引っかかりやすくなり(摩擦が増大)、引っかかりや、異音が起きる原因となってしまうほか、ワイパーによる摩擦によってコーティングの被膜も剥がれやすくなってしまいます。
この場合、撥水コート対応のブレード・ゴムに交換する必要があります。例えば、日産自動車が提供するウィンドウ撥水加工では、セットで、ワイパーも専用のものに交換することを勧めています。水分が少なくてもスムーズにワイパーが動くようコーティングがされており、ガラスとの摩擦抵抗を小さくすることで、滑らかな動きとなり、コーティング被膜の保護にもなります。
市販の撥水ワイパーには、ワイパーのゴムに撥水機能を持つシリコンゴムを採用したタイプがあります。フロントガラスをワイパーが往復するたびにコーティングして効果を発揮してくれます。また、標準装着されているグラファイトゴムに撥水コーティングガラス対応としたタイプも販売されています。
雨や雪など、日本はワイパーの使用頻度がとても多い国です。ビビリや拭き取り不良が発生したときには放置せず、すぐに対策をとるようにしましょう。
Text:Kenichi Yoshikawa
Edit:Takashi Ogiyama
Photo:Gettyimages