「THE AKAMINE CLASS SPORTS」1st Order Fair開催中
ドレスレーベル「AKAMINE Royal Line」同様、お客様のサイズに合わせて、上質な生地で心地良いフィッティングを日常で楽しめる新ブランド「THE AKAMINE CLASS SPORTS(アカミネクラススポーツ)」の初めてのオーダー会を、梶が谷のめだか荘で12月9日(水)まで開催中です。
ご予約 044-871-5330(※アポイント制/担当:高原、野里、鈴木)
新連載の一件目は、赤峰氏が「ここしかない!」と太鼓判を押す、東京・京橋にあるアンティーク・フランスの仕事着を扱う『Mindbenders&Classic(マインドベンダーズ アンド クラシックス)』。
年代モノの手動開閉式エレベーターに乗りこんで、お宝探しへレッツラゴー!
【ドクトル赤峰の、お店一句】
マインドベンダーズ アンド クラシックス
無二の巴里残像
ここに有り
翼よ! あれがパリの灯だ──という飛行家リンドバーグの名言は 1927年。
「その頃、パリでサルトルやカミュなどがたまり場にしていたカフェが、サンジェルマン・デ・プレにあったカフェ・ドゥ・マーゴ。30年代にはパリの文化の中心地となったサンジェルマン・デ・プレといえば、僕にとってはデッサンで、画家のキース・ヴァン・ドンゲンやラウル・デュフィなどは、桑沢デザイン研究所時代に熱心にならったものです」と赤峰氏。
学生時代にフランス文化と歴史を学んだ赤峰氏は、マインドベンダーズ アンド クラシックスでまず「BELLE JARDINIERE(ベル・ジャルディニエール)」のジャケットを手に取った。
「フランスのワークウェアは、アメリカやイギリスの労働着と根本的に違って、ある種エロティックなんだよね。着ると肩のラインがグッと入って、かま(アームホール)も高い。当時はほとんどがオーダーメイドで、縫い子がお裁縫感覚で丸縫い(一人の職人がすべての工程を手縫いで仕上げる)しているんだよ。だからちょっと女性的。そこもいい」。
赤峰氏が着た「ベル・ジャルディニエール」は 今はなきフランスの百貨店(1824年創業)で、「パリで最初に縫製工場を備えた百貨店として人気で、質の良い既製服は当時の中間層に広く愛されていました」と、マインドベンダーズ アンド クラシックス店主の横見浩士さんが説明してくれました。
「着るとね、ウエストの絞りやラペルの柔らかさ、肩ラインが本当に立体的でエレガントで、表情が違う。これは文化の違いなんだよね。
フランスのモノ作りのスタンダードがここにギュッと詰まっていますよ」(赤峰氏)
地下鉄銀座線の京橋駅から地上に出ると、真新しいビジネスビルが林立しているが、一本奥に入ると、日本の骨董を扱うギャラリーやアンティークショップが軒を連ねている。
その中にある古く小さな5階建てビルの6階にあるのがマインドベンダーズ アンド クラシックスで、いわゆるペントハウスに、お宝のようなフランスの労働着や普段着が並んでいる。
赤峰 一口でヴィンテージといえど、この店が扱っているものは“違うヴィンテージ”だからね。甘く見ると火傷しますよ。
──洋服の作り手から見ても すごいんですか?
赤峰 ヒントはたくさんあるけど、時代が違うからね。今の時代には逆立ちしても作れないものがある。無理に作ろうとしても、「職人がいないんですよ」と言われてしまう。
──そういう意味では、やっぱりヴィンテージは一期一会ですね。赤峰さんが始めるカジュアルのビスポーク「THE AKAMINE CLASS SPORTS」のコンセプトもそこにある。
赤峰 そう。こういう店で自分のサイズの服と出合うことは奇跡に近い。「気に入って欲しいけど、サイズは我慢するか」ってたくさんあるでしょ。そういう我慢をなくしたいから新レーベルを始めるんですよ。
──店主の横見さんは、なぜフランスの労働着に着目されたんですか?
横見 最初は服の質感やカタチから入っているんですが、当時住んでいたイギリスのマーケットでフランスの古着に出合って、自分が着るならこういう服が着たいと思ったことがきっかけでした。
──どういうところに魅力を感じていますか?
横見 自分が気に入って集めたものは、気がつけばフランスの100年ぐらい前の普段着ばかりでした。大量生産の匂いがしないものが好きで、店の品揃えは、30年代までぐらいのワークウェアが主体です。
同じようなものでも、30年代のものを着ると、ちょっとしたカッティングの違いで雰囲気が全然変わるんですよ。そういうのを大事にしています。
──第二次世界大戦中・戦後は扱わないんですか?
横見 そうですね。ヴィンテージブームで人気の「Le Mont Saint Michel(モンサンミッシェル)」の50年代のモールスキン素材のワークウェアなども扱っていますが、値段がものすごく高騰していて、今は高すぎますね。
古着の面白みがわかってくる入門編としてはいいアイテムなんですが……。
──なるほど。赤峰さんは熱心に試着していますが、自分が着るには小さいサイズの服が多いですね。
横見 そうですね。フランスの服は古ければ古いほど小さいので、日本人の体型に合うところも人気です。
赤峰 いつ来てもすごい品揃えですよね。
赤峰 1900年以前のものから30年代ぐらいまでが中心で、いわゆる「レザネフォール」(フランスの1920年代の時代を指す言葉)のパリが繁栄した時代の裏方にいた労働者が着ていた服だから、他のヴィンテージとは意味合いが違うし、歴史を生で学ばせてもらえるのはここしかない。
横見 このコートは年代が若くて、40~50年代ぐらいの「ロイヤルハンター」ブランドのアウトドア用で、ハンティングやフィッシングに着ていたものです。
赤峰 脇のベントが深いから馬にもこれで乗ったんでしょうね。
こういうコートを買ったら、くたくたになるまで着て、色ももっと落ちてきて、良い味になりますよ。
横見 ケープは着脱できるので、今の季節ならケープを外して着られます。
赤峰 ケープがあると雨は染みないし、肩は冷えないし、当時は重宝した外套だったでしょうね。
赤峰 このセットアップもすごいですね。ヘリンボーンリネンだ。
横見 これは19世紀の消防士のセットアップで、この色はメカニック用じゃないかなと思います。襟や袖口に仕事着らしからぬ装飾がついたジャケットですが、それがかなり使い込まれた様子は良いですね。
赤峰 素材の風合いが独特ですね。
横見 ヘリンボーンリネンに泥染めをしていて、こういう生地の服は数が少なくて貴重です。
赤峰 パンツは尾錠付きで、素晴らしい。
横見 これは、自分も2着ぐらいしか見たことがない、19世紀後期のナイトウェアです。
赤峰 これも素晴らしいですね。足先までソックスのように付いているのは、当時の冬は暖房が効かなかったからでしょうね。着ると寝袋状態だ。
横見 これを見つけたときうれしかったです。
赤峰 僕が選んだのは、アメリカのフライトジャケットとは全く違うボア付きブルゾン。
これは欲しいですよ。起毛がかかっている素材で、見た目にも着た感じも柔らかくて、色気がある。この手の込んだライナーが素晴らしいね。
横見 フランスで見つけたブルゾンですが、原産国は不明です。スペインかポルトガル、もしくは南米のものでしょうか。
赤峰 今日は“フランス”がテーマだから、めだか荘から本と雑誌をピックアップして持って来ました。
──真ん中の雑誌はフランスの雑誌『MONSIEUR』ですね。
赤峰 そう、JAPONAIS特集号で、僕と加藤和彦さんなどが取材されて載っています。15年ぐらい前のものかな。
赤峰 フランスの映画監督といえば、僕にはブレッソンで、彼が監督した映画のラインナップを手書きのメモで書き記しています。
『現代語訳 巴里籠城日誌』は、明治初期にパリに留学していた安芸藩藩士の渡正元(わたりまさもと)が、普仏戦争中にもパリ市中に留まって、戦時下で体験したことを記録した本で、生々しい記載がある。
──戦時下をくぐり抜けてきた服がここにあるということですね。
赤峰 まさにそう。フランスのリアルがここにあるから、学びの場所でもあるんだよね。
生きるのは大変だけど、時代に揉まれて残ってきたものにはリスペクトしかない。さて、次はどこの店へ行こうか。
マインドベンダーズ アンド クラシックス
東京都中央区京橋二丁目6-8 仲通りビル6F
03-3564-1270
14:00~17:00
定休日 火曜・水曜・買付時不定休
※現在は予約優先で営業
「THE AKAMINE CLASS SPORTS」1st Order Fair開催中
ドレスレーベル「AKAMINE Royal Line」同様、お客様のサイズに合わせて、上質な生地で心地良いフィッティングを日常で楽しめる新ブランド「THE AKAMINE CLASS SPORTS(アカミネクラススポーツ)」の初めてのオーダー会を、梶が谷のめだか荘で12月9日(水)まで開催中です。
ご予約 044-871-5330(※アポイント制/担当:高原、野里、鈴木)
Photo:Riki Kashiwabara
Text:Makoto Kajii