FASHION ― 百“靴”争鳴

【英国王室のロイヤルワラントを目指して】日本屈指の靴職人 福田洋平
次の10年に向けたレディ・トゥ・ウェアへの挑戦

2020.8.1 2020.8.1
2020.8.1

“最高の普通”をコンセプトに掲げたヨウヘイ フクダは、デザインでアイデンティティを表現しようとするシューメーカーが多いなかで、むしろその存在がくっきりと浮かび上がりました。一歩一歩信念をもって歩んできた福田さんが次に踏み出した一歩は、レディ・トゥ・ウェアでした。

日本チームを結成

ヨウヘイ フクダはパターンオーダーからのスタートでした。すでにビスポークは世界中にあるし、同じものをつくり続けることで腕が上がるだろうという職人としての欲もあった。そこからはじまって、お客さまの要望に応えるうちにビスポークへと発展しました。

トランクショーは香港のアーモリーをとっかかりに、現在はシンガポールのメイソン&スミス、上海のキリンテーラーズと北京のミスターダンディで行っています。中国の2店舗は広州のビスポークテーラーの名店、クラランス・ウォンが仕切ってくれました。

昨年10月にはパリのジョージ&ジョージーズが加わりました。国内では大阪のバルカナイズ・ロンドンと富山のザ・モーストザ・モーストで展開しており、2ヶ月に1回のペースで出張している計算になります。おかげさまで顧客の7割が外国人。アジアの方が多かった印象ですが、いまは欧米にも広がっています。

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ヨウヘイ フクダの暖簾を掲げて10年目の2018年、法人化し、レディ・トゥ・ウェアを発表しました。

レディ・トゥ・ウェアを視野に入れて、数年前から弟子を増やしてきました。9年一緒にやってきた五十嵐(晃)を筆頭に、藤田(晃広)、山口(周)、栗原(寿夫)という4人態勢に。磨き職人の中島(孝之)も週に1、2回、通ってくれています。

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手製靴職人を取り巻く環境は劣悪です。教室をやったり、修理をやったりでなんとかなっているなら まだいい。靴とはまったく関係のないアルバイトで生計を立てている職人もいます。

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彼らのスキルは、欧米の職人と比べても遜色ないどころか、よほど優れている。しかし手製靴のマーケットは驚くほど小さい。後進のチャンスになるなら、こんなに素晴らしいことはない。

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スタッフの拡充には納期短縮、という課題もありました。これまでビスポークの納期は2年でした。納期は人気の指標になっていますが、履き手にしてみれば何年も待たされるのはストレスにほかなりません。手ほどきをしながらですし、レディ・トゥ・ウェアもスタートさせていますから倍々ゲームというわけにはいきませんが、年間生産足数は70足から100足に、納期は半年ほど縮めることができました。

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昨年1年で200足つくり、180足がお客さまのもとへ旅立ちました。同時にスタートさせたMTO(メイド・トゥ・オーダー)を合わせた数字です。

5年かけて完成させた九分仕立て

レディ・トゥ・ウェアはビスポークで定番人気のロングヴァンプオックスフォード4型が皮切り。素材もビスポークと同じものを採用しています。製靴プロセスは履き心地を左右する釣り込み、すくい縫いまで手仕事で仕上げ、出し縫いのみマシンで行っています。

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底付けは浅草にあるアトリエに出しています。

構想が持ち上がったとき、名のある工場にサンプルをつくっていただいたこともありますが、断念しました。工場には工場の正解があります。わたしが考える正解とは大きく隔たっていて、その溝はちょっとやそっとじゃ埋められるものではないと判断したのです。

そもそも釣り込みの段階でこれは難しいぞ、ということがわかった。レディ・トゥ・ウェアに採用している木型は、ビスポークのマスターラストをベースに、これまでつくらせていただいたお客さまの足型のデータを反映させています。手釣りを前提とした木型を工場に持ち込むということ自体がナンセンスだったのです。

お願いしているのは2人でやっている本当にこじんまりとしたアトリエですが、信頼に足るシューメーカーです。信頼に足るとはいえ、ヨウヘイ フクダの刻印をして売る靴となればお任せというわけにはいきません。わたしは限りなくブレが生じないシステムを構築しました。

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ベベルドウエストに必要なウエストアイロンやエッジアイロンにはじまる工具やインクは まるっと支給しています。

加えて部材も9割方、こちらでつくりあげています。たとえばヒール。わたしどもは残り数ミリ削れば完成するところまで仕上げています。つまり、アウトワーカーにはグラインダーで整える工程のみお願いする、というかたちです。

ヨウヘイ フクダのヒールは卵のような柔らかなシルエットを描いています。接地面がアゴ(尖ったヒール先端のこと)にむかって すぼまっているのがおわかりになりますか。その角度は非常に感覚的なものだから、つくる人によってがらりと変わってしまう。ラストワンマイルまで走っておけば ばらつきは最小限にとどめられるし、材料のロスも防げます。

見初めたシューメーカーだから好き放題いえるわけですが(笑)、現場への注文もなかなかにシビアです。

出し縫いのピッチは1インチ10針を目安にしています。そして針は1ミリのブレもなく目付に収まっていなければなりません。

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それと、つま先。ヨウヘイフクダのレディ・トゥ・ウェアはビスポーク同様、アッパーがコバからすっと立ち上がっています。木型のツラに揃えてカットした中底の賜物ですが、なによりも木型を忠実に再現することのできる手釣りの技量が求められます。

そうそう、これはうちのアトリエで行うプロセスですが、レースステイをぐるりとおおうパーフォレーションもこだわりです。ヨウヘイ フクダでは子穴が羽根の付け根中央に来るよう設定しています。ヴィンテージシューズをみると、ここが親穴だと裂けていることが多かったんです。

納品されてもわたしが確認して納得がいかなければつくり直しをお願いしています。たとえばコバの出方が いまいちなら躊躇なく戻します。

レディ・トゥ・ウェアの青写真を描いてからお披露目まで、ゆうに5年はかかりました。それは既製靴の常識を覆すための試行錯誤の歳月でした。

オンラインもスタート
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5月1日にローンチしたオンラインではすべてのレディ・トゥ・ウェアが買えます。オックスフォード4型ではじまったコレクションは 2年目に素材やメダリオンといった意匠のバリエーションが、3年目にダービー、ホールカット、ブーツといったあらたな靴種がラインナップされました。お一人で3足購入していただいた方もおり、コレクションの拡充はお客さまの声に応えるためにも大事な一歩でした。

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オンラインをオープンするにあたって、欠かせなかったのがフィッティングシューズ。2万円のデポジットをお預かりした上で、サイズ違いで2足お送りし、1週間以内に送り返してもらうようにしています。室内限定ですが、じっくり履き込んでもらうことで相性を見極めてもらいたい。店頭ではできないサービスです。

フィッティングシューズはご来店されたお客さまにもお試しいただいています。試し履きした靴を売るのは忍びないと考えていたわたしにとって、フィッティングシューズはいずれにせよメニューに加えなければならないツールでした。

海外の取引先にもこのフィッティングシューズのシステムを導入しています。アーモリーの香港店とニューヨーク店には常設しており、そのほかのお店は3ヶ月のサイクルで巡回する仕組みを採っています。

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さらりとお伝えしましたが、ロイヤルワラントは喉から手が出るほどほしいものです。あと10年、50歳までに手に入れたい。そんなわたしが顔面蒼白になったニュースが昨年の暮れに飛び込んできました。なんと、チャールズ皇太子がガジアーノ&ガーリングで靴をつくられたというのです。ノーサンプトンの振興を目的としたもので、町を挙げてこれを応援したそうです。ロイヤルワラント獲得競争でトニーは先にゴールテープを切った。

わたしはいま、ジリジリしています。

Photo: Shimpei Suzuki
Text:Kei Takegawa
Edit:Ryutaro Yanaka

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福田洋平(ふくだ ようへい)
1980年、富山県生まれ。高校卒業後渡英、職業訓練校のトレシャムインスティテュート入校。在学中からジョン・ロブ・パリ、エドワード グリーン、チャーチ、ジョージ・コックスで研修を受け、ジョン・ロブ・ロンドンのシューメーカー、イアン・ウッドの薫陶を受ける。卒業後はジージ・クレバリーでリペア、エドワード グリーンとガジアーノ&ガーリングでボトムメイキングのアウトワーカーを務める。2008年、ヨウヘイ フクダを創業。
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【問い合わせ】
Yohei Fukuda
東京都港区北青山2-12-27 BAL 青山 2F
03-6804-6979
営業:11:00〜20:00
定休:日曜
https://yoheifukuda.com
※レディ・トゥ・ウェアでは、あらたにD、E、F、Gのウィズの展開もスタートしています。

Author profile

竹川 圭
竹川 圭
Takegawa Kei

エディター
ライフスタイル誌を経て独立。下町の人情と赤提灯に惹かれ、社会に出てからはイースト・トーキョーを転々とする。近著にノンフィクション『至高の靴職人』(小学館)がある。

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