現代のビジネスシーンをスマートに戦うために
昨年あたりから国内の地方にあるメーカーや工場の方々からの相談が増えておりまして……。日本のアパレル産業は、世界的に見ても素晴らしい技術をもっているのに、それを上手にアピールしたり、活用できているケースが少ないんですよね。
例えば、海外のビッグメゾンが認めた素材を自社で開発していたとしても、守秘義務の関係上、口外できないとか、技術力はあってもデザイン部門やPR部門が弱いとか……。
日本人らしい奥ゆかしさが邪魔をしているのかもしれませんが、これから少子高齢化が本格的に始まる日本では、国内マーケットだけを見ていたのでは先細りになってしまうのは 確実。OEM(相手先ブランド製造)頼りの、受け身体質に甘んじていては衰退してしまいます。持続可能な産業として成立させ、日本の優れた職人技を継承していくためには、世界に打って出る必要があるのです。
例えば、ピッティ・イマージネ・ウオモ。あそこで注目を集めているブランドのほとんどは、ビッグメゾンのOEMを手がけながら自ら発信もしているファクトリーブランドですよね。イタリアに多い業態ですが、これが秀逸なショーケースになっておりまして……。
自社が開発した新技術を発表するプレゼンテーションの場にもなっているんです。つまりB2Cだけでなく、B2Bの役割も担っていて、自社ブランドで販売利益を得るだけでなく、よそのメゾン担当者がその技術が欲しくてOEMの発注をするみたいな好サイクルで回っているわけです。
しかも、デザインは名だたるトップデザイナーやディレクターと契約していたりするので、クリエイティブ面も充実。これからは、工場もリスクをとって挑戦していかないといけない時代です。それに日本のアパレル産業の成長は、長らく百貨店に歩調を合わせてきましたが、百貨店の調子が奮わなければ共倒れになってしまいますし……。
そもそも繊維産業には産地と呼ばれる地域があり、いわゆる地域の雇用を守っている地場産業なんですよね。有名なところでは愛知県一宮市周辺の毛織物や、栃木県足利市周辺の絹織物、岡山県児島市周辺のデニムなど。いずれもその成り立ちは歴史と紐付いていて、地域固有の文化として、守っていく必要があります。
ただ、その構造において川上から川下までを手がける垂直統合型は稀で、各工程を小規模なメーカーや工場がそれぞれ担う水平分業型という場合がほとんど。そのせいもあって、一社だけでチャレンジするのが難しいという要因はありました。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。北陸三県は、古くから絹産業で栄えてきましたが、その後、レーヨンなどの化学繊維や、ナイロン、ポリエステルといった合成繊維の登場に伴い、これらの産地へと移り変わっていきました。
こうした合繊の発展を長年リードし、ビッグメゾンに認められるレベルにまで押し上げたのが、今回、僕が「K-3B」でご一緒させていただいた石川県金沢市を拠点にするカジグループです。
カジグループは、糸づくりから製品まで一貫して手がける体制があるうえ、機械設計の部門もあるという珍しい企業体。髪の毛の3分1程度である極細の加工糸や、切りっぱなしでもほつれない生地などは世界的にも有名です。
すでに自社ブランドの展開もしていますが、昨年、グループを率いる梶政隆社長にお会いする機会があり、「繊維業界の夢を実現する」というビジョンにいたく共感いたしまして……。一緒に世界に通用するブランドをつくりましょう、となりました。
そこからは早かった! というのも、僕は以前からスーツは上下決まった組み合わせなので便利だと思っていたのですが、トークショーなどで消費者の方々と接するたびに合繊のセットアップ需要が高いのも感じていたんです。で、すぐに思い浮かんだのが、業界トップレベルのカジグループの技術力を背景にして、もっとスーツを便利にしたらどうだろう、というアイデア。
だって、ファッション好きならあれこれコーディネイトに悩む時間も楽しいかもしれませんが、毎日のことですし、できるだけ時短したいと思うのがフツーですよね。かくいう自分も、毎朝のコーディネイトに時間をかけるのが好きじゃなくて……。
そこで生地は、動きやすく快適な伸縮性、雨にも強い撥水性などを兼ね備えたグループの合繊生地ブランド「KAJIF(カジフ)」の4WAYストレッチ生地を使い、色はその機能性を際立たせるため、黒に限定。さらに、デザインを極力シンプルにするように心がけました。
K-3Bが目指すのは「SUPER RATIONAL」。現代のスーツに、“超”のつく合理性を付加することブランドコンセプトにしています。
そのため、K-3Bでは、TTPO(Time、Place、Person、Occasion)に合わせて、誰でも簡単に素早くセットアップが組めることを重視しました。アイテムごとにナンバリングされたコレクションは、数字が小さいほうがカジュアル、大きいほうがドレッシーとなり、それを目安にコーディネイトすれば、シチュエーションにそぐわない格好になり相手の信頼感を失するなんてことはありません。
また、今は働き方改革でビジネスのスタイルも多様化が進み、ジャケットにパンツの人もいれば、シャツにショートパンツという人もいますよね。そういった人のために、コレクションのなかであれば、どれをどう組み合わせても統一感がとれるように考えました。それも素材と色を限定しているからなんですよね。
現代のビジネスマンの服装にとって最も大切なのは、相手に与える「信頼感」と 使いやすい「機能性」、そしてそのふたつを兼ね備える「合理性」です。K-3Bの「スーパーマルチセットアップ」は、そんな日常のビジネスシーンをスマートに戦うためのユニホームだと思うんですよ。このブランドに刺激されて、地方から世界に挑戦するファクトリーブランドがどんどん出てきて欲しい、そして日本の繊維産業をもう一度活性化させる起爆剤になってくれれば本望かなと。
僕の夢も、どんどん膨らみます。
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