歌舞伎町2丁目に「（自称）日本で一番遅い夜8時に開店するテーラー」がオープンしたというウワサを聞きつけて、「新宿は伊勢丹がある新宿3丁目までしか行かないと決めているんです！」と渋るマルちゃん（丸山尚弓）を連れ出しました。
「このへんって夜になると雰囲気が一変するんですね」と緊張気味のマルちゃんと、オーダースーツ専門店「SHINJYUKU TAILOR」に到着しました！
歌舞伎町2丁目にビスポーク店をオープンさせた理由
出迎えてくれたのは、2019年12月3日にオープンしたばかりの「SHINJYUKU TAILOR」代表の稲葉透さん、29歳。仕立て上がったばかりのスリーピースは、見るからにビジネススーツとは一線を画すデザインと雰囲気で、夜の香りがふんわりしてきます。
マコ 歌舞伎町2丁目といえば、ホストクラブの激戦地ですが、マルちゃんは“ホスト”にはどんなイメージがありますか？
マル ホストクラブはシャンパンタワーのイメージですね。ホストはヘアスタイルから足の先までスキがない着こなしって感じです。実際にホストに会ったことはありませんけど……。
マコ 稲葉さんはホストじゃないけど、すごくカッコイイですよね。ビスポークのスタイル見本としても大いに参考になるでしょう。
マル 稲葉さんは「着こなしの引き算」が上手な感じ。どうして歌舞伎町に店を作ったんですか？
稲葉 うちはホスト専用テーラーではありませんが、現役バリバリの売れっ子ホストをオフィシャルモデルに起用してスタートしたので、彼らの紹介でホストのお客様が自然と多くなっています。自分は以前、ホストが着るスーツの営業をしていたので縁があるんです。
マル なるほど。「いいところに目をつけたね」と言われませんか？
稲葉 そういう声もいただいていますが、新人ホストにもスーツを着てほしいと、オーダープライスを4段階に設定していて、国産生地で3万9800円（税別）から作れます。
マル お！ 思ったより手が届きそうな価格からあるんですね。それは稲葉さんが若い男の子を応援したいということですか？
稲葉 今のホスト業界は圧倒的に私服が主流です。スーツを着用するホストが少ないので着てほしいんです。
ドーメル「アマデウス」の生地で仕立てたスリーピースは、「赤が好きなホスト」のオーダー。カタチは正統だが、既製品では絶対ないスーツで、オーダー価格は15万円ほど。
ホスト創生期のイメージは、ビシッとスリーピースでしたが……
マコ 確かに、ホスト創生期の人気店「愛本店」とか、ホストの本流はスリーピースというイメージがありますよね。
マル 今日のマコちゃんはどうしてTシャツにタキシードなんですか？
マコ あ、これはローランドの真似です（笑）。彼はサンローランのタキシードにユニクロのTシャツだと聞いて、今日はこれだなと（笑）。
マル 私も着てくるものをすっごい迷いましたが、稲葉さんともマッチしてよかったです。
マコ 今のホストクラブはお客さんが若くて、「スーツよりラグジュアリーブランドを着ているホストが好き」という女性が多いらしいです。でも、バレンシアガとかバーバリーとか着て店に出ると、印象が強すぎて2度と着られないとか。
マル なるほど。でもスーツはVゾーンを変えればいいから、コスパで考えるとお得ですね。
稲葉 そういう点でもスーツはまた見直されています。
マル 女性から見ると、男性のスーツ姿は3割増し、5割増しなんですよ。武装じゃないですけど、ピシッとスーツを着ていることでの神通力って絶対あるので、男性がスーツを着てエスコートするのを嫌いな女性はいません！
マコ カジュアル化の流れになっているサラリーマンにそうやって説教してください！（笑）
第3次ホストバブルといわれる今、ホストが着たがるスーツとは？
マル 稲葉さんが着ているスーツも、もちろんこちらの仕立てですよね。
稲葉 はい、自分の片腕のような50代のベテランテーラーがいて、全幅の信頼をおいています。
マコ どういう点で腕を認めているんですか？
稲葉 お客様と話をしていて理解が早いんですね。たとえば、今のホストは着丈が短いジャケットに、膝が折れないほど細く、くるぶしが見えるぐらいの丈のパンツが圧倒的に人気ですが、ここに店を構えてその好みをすぐキャッチしました。
マル 稲葉さんのスーツのパンツも細いですもんね。ホームページで「ハウススタイルを導入」というのを見ました。
稲葉 そういう優秀なテーラーがいるので、あまりスーツに詳しくない方向けに、生地は選んでもらいますが、ボタンや裏地などのオプションはテーラーにお任せの“クイックオーダー”的なものも始めました。
マコ そのベテランテーラーが、“歌舞伎町のモテスーツ”のキーパーソンなんですね。
稲葉 この街の好みはもう理解したのですが、せっかくオーダースーツを作っているのですから、もっと正統派の着方もアピールしたいですね。
歌舞伎町ホストクラブACQUA GROUP（アクアグループ）の本店社長用のタキシード。ボタン3つと決めての完全オリジナルデザインで、前合わせがアシンメトリーなのが渋い！
マコ 歌舞伎町は、今、第3次ホストバブルだと聞いていますか、実際どうですか？
稲葉 何年か前より景気は良いと思います。最近のホストクラブは初回来店無料とか500円という店まであります。
マル なるほど、敷居を低くしているんですね。
稲葉 ホスト志望の男の子も入店しやすくなっていますが、まず着こなしがダメなんです。
マコ 特にスーツ、ジャケットは着慣れてないでしょうね。
稲葉 なので、着方がわからない若いホストにコーディネートから教えていきたいと思い、コーディネート一式のパッケージを導入しようかなと思っています。
マル こちらのSNSを見て「売れっ子ホストと同じモノを着たい」という男性もいるでしょうね。
マコ 成人式に出るハタチの男の子たちは、「ホストっぽい！」というのが褒め言葉になってますから（笑）。
稲葉 そういう問い合わせも多いです。あ、うちのオフィシャルモデルの楓（かえで）さんが来ました。
ライティングによってゴールドに輝くように見えるチェック柄のスリーピースで登場したのは、ホストクラブ「ACQUA-Drive-」の支配人に昇格したばかりの楓さん。1000万プレーヤー（月間売り上げ1000万円以上）のトップキャストです！
後編も乞うご期待！
東京都新宿区歌舞伎町2-24-7 MRT Bld 4F
03-6457-6327
営業時間：（月～金）20時～、（土）16時～
丸山尚弓（まるやま なおみ）
「美人すぎるメンズファッションライター」として活動中。メンズファッションを題材とした自身のFacebookは、コメントが女性目線で分かりやすいと好評で、紹介した商品には問い合わせが殺到する。ファッション初心者を「素敵な男性」へと優しく導くことが信条。またファッションだけでなく「人生を豊かにするライフスタイル」をテーマに、男性としてトータルの魅力アップが目指せる記事を発信している。ライター以外の活動として、メンズブランドの企画やブランディングも行う。特技はコミュニケーション力を活かして外国人ともすぐに友人になれること。趣味はタウンウォッチと英語での映画鑑賞。
Photo：Shimpei Suzuki
Text：Makoto Kajii
