言葉だけ知っていても意味がないんです!!
「ファシリテーション」という言葉をご存知でしょうか? 「ビジネス書やSNSで見たことがあるけど、ちゃんと意味を説明するのは難しいな……」という方がほとんどなのではないでしょうか。
また、「ファシリテーションが必要なのはわかるけどどうやって身に着けたらいいんだろう」とお悩みのアナタも、この記事は必見です!!
目次
●ファシリテーションとは
・意味
・歴史
・背景
●なぜ必要なのか
●メリット
・納得
・時間
・結論
●応用分野
・ビジネス
①日常業務
②非日常業務
・地方創生や教育現場
●ファシリテーションのプロセス
●テクニック
1.傾聴するためのテクニック
2.質問するためのテクニック
3.議論の着地点を見つけるためのテクニック
4.合意を形成するためのテクニック
●学んでも実践できないのはなぜ!?
・セミナーとの意識の違い
・上下関係
・周囲の非協力
●まとめ
●ファシリテーションとは
・意味
ファシリテーションとは、「facilitation」の直訳である「簡易化」から派生して、「会議やプロジェクトなどの集団活動が円滑に、かつ成果が上がるように支援すること」を指す言葉です。
・歴史
1970年代のアメリカでファシリテーションがビジネス分野に取り入れられ始めました。
日本では昔から集団合議による合意の形成などが行われてきましたが、90年代後半から「ファシリテーション」として再度注目されるようになりました。
・背景
この背景には、
・議論の価値が再考されたこと
・多様性の尊重 があります。
具体的には、問題解決などのために相互コミュニケーションが重視され始めたこと、多様性が求められる中で、異なる立場や価値観を持つ人々を上手くまとめ業務を遂行する必要が生まれたことです。
●なぜ必要なのか
では、なぜファシリテーションの必要があるのでしょうか。
まず多種多様な人々が議論を行うと、色々な問題意識や視点から発言がなされるため、場が混乱してしまいます。そこで、中立な立場で交通整理をするファシリテーターが必要なのです。
またすべての意見やアイデアが公平に扱われるだけでなく、情報や参加者の思想などがきちんと共有できるよう場をコントロールする必要もあります。
●メリット
ファシリテーションのメリットはズバリ「効率」です。ですがそれではあまりにもざっくりとしすぎていますので、少し細分化して「納得」「時間」「結論」の3方向から注目してみたいと思います。
・納得
「ざっくりとした多数決は嫌だ」「上司の鶴の一声で全てが決まってしまう」という悩みに対してファシリテーションは非常に有効です。
全員の意見を聞き、その中から合意できるところ・できないところを切り分けて一つ一つ確認することで、参加者全員が納得した落としどころをみつけることができます。
・時間
ファシリテーターはスムーズに議論が進むようあらかじめ段取りを組み立て、話し合いが行き詰まったらそれまでの意見を整理します。その結果、1つの議題に関する所要時間が短くなり、毎回の会議がより効率的になるのです。
・結論
短時間でみんなが納得できる折衷案を見つけたが、当たり障りのない結論で問題の抜本的な解決に至らない。こんなことになってしまっては本末転倒ですよね。
ファシリテーションは偏りや不足は無いかをたくさんの視点からチェックすることで、より実効的な案にブラッシュアップすることができます。
●応用分野
「概要やメリットは理解できたけど、実際どんなフィールドで活かされているの??」というアナタの疑問にお答えしましょう。
ファシリテーションが活きる状況の特徴は、
①チームで取り組む
②チームで統一された答えを求めている
というものです。
・ビジネス
①日常業務
会議においてファシリテーションは、「対話の促進」と「合意の確立を短時間で行う」という目的で活用できます。迅速に生産的な会議を行えることが、ビジネスの場には必要不可欠ですよね。
②非日常業務
ワークショップ形式の研修や普段は話しにくいことを議論する場などの非日常業務でも、ファシリテーションが効果を上げています。
・地方創生や教育現場
ファシリテーションは、特に地方創生や教育現場などで活用されています。
「対話を促進する」という効果や、多くの人を巻き込んで意見を引き出すというファシリテーションの技法はこういった活動と好相性です。2020年から始まる入試改革では、このようなディスカッション能力も試されますので、大人子ども問わずまさにこれから必要な力と言えるでしょう。
●ファシリテーションのプロセス
ファシリテーターが関与するプロセスは、大きく2つに分けられます。それは「外面的プロセス」「内面的プロセス」です。
「外面的プロセス」とは、段取りや進行といった活動の目的を達成するためのフレームのことです。こちらを上手く操ることでミーティングが円滑に進みます。
いっぽう「内面的プロセス」とは、メンバー個々の頭の中にある考え方や筋道などの思考的プロセスと、感情やメンバー同士の関係性などの心理的プロセスを合わせたものです。ファシリテーターがこちらに作用すると、成果や満足感が高いものとなります。
●テクニック
ファシリテーションと一口に言っても、そこで用いられるテクニックは多種多様です。今回はそんなテクニックを、それを活かす場面ごとにご紹介します。
1.傾聴するためのテクニック
傾聴はファシリテーターに必要不可欠な要素です。
・発言の意図や目的を確認する
・発言の裏側にある本音や気持ちを引き出す
・口調&表情&態度から相手の真意を汲み取る
以上のような姿勢がファシリテーターには求められますが、時には発言せずじっと耳を傾けることも必要です。
なぜならば、相手が考えているときにファシリテーターが時間を気にして、勝手な解釈をしたり発言を促し過ぎると、相手が混乱しファシリテーターの解釈に従ってしまうことがあるからです。
そのため、
・相手の沈黙に従ってみる
・相手の発言を繰り返す・言い換える
・頷きながら聴く
という単純なテクニックが効果を発揮するのです。
2.質問するためのテクニック
みなさんもご存知のように、質問は本当に大切です。
適切な質問を投げかけることで、発言者に安心感を与えることができます。また、質問をすることで発言者が気づいてない点を発見させることができるなどの副次的な効果もあります。
ここでのテクニックは
・簡潔な質問にまとめる
・視点を変えてみる
・柔らかい物言いをする
・1人に集中的に質問しないこと
など、質問された側の答えやすさを高めることです。
3.議論の着地点を見つけるためのテクニック
意見が出尽くしたら、着地点を探っていきます。
ファシリテーターが意識すべきことは、唯一絶対の「正解」を探すのではなく、「落としどころ」を探す姿勢で取り組むことです。
ここでの「落としどころ」とは、全員が納得できなくても積極的な反対意見がない状態を指します。テクニックは
・会議の目的を再共有すること
・全意見の要約とリスト化をすること
・図解イメージを用いること
と、活字や図によって「見える化」することでメンバー間での状況把握を統一することです。
4.合意を形成するためのテクニック
様々な価値観を持った人間が集まって意見を言い合う会議では、 合意形成のさいに意見の対立などが生まれることがあります。そこがファシリテーターの腕の見せ所ですよね。
ここでのテクニックは
・意見の対立に積極的に介入し折衷案を探ること
・目先の解決策ではなく、本質的な解決策であるか検討すること
・参加者の納得が得られるまで意見を聴きだすこと
と、徹底して合意の獲得に注力することです。
●学んでも実践できないのはなぜ!?
ファシリテーションを身につけ、いざ即戦力!! と意気込んでも、なぜか実際の会議では上手くいかない……。このような悩みを抱えるファシリテーション学習者は多いようです。
なぜファシリテーションが活かされないのか。その原因は、ファシリテーションの特性にありました。
ファシリテーションはチームワークの生産性を高めるスキルです。つまりファシリテーター1人が頑張っても、生産的な会議はできません。場にいるみんなが乗ってくれないと上手くいかないのです。以下で具体的に見てみましょう。
・上下関係
まず、上下関係が阻害要因になっているケース。一般的な日本企業では、会議に上下関係が持ち込まれているのが普通ですよね。
ファシリテーションは議論を導く先導役的な能力です。そのため意欲的な若手~中堅社員がファシリテーションを学んでも、日々の業務では上役が会議を仕切っていると出る幕がないというわけです。
・周囲の非協力
上記のようにファシリテーションには周囲の協力が不可欠ですが、それこそが難しいと言われています。
研修などの次の日に、「ノウハウを学んだので、ファシリテーターやります!!」と宣言し、突然会議を効率的に仕切るというのは非常にハードルが高いですよね。
しかも、「この人に会議の進行を預けたら、上手く仕切ってくれるから、その分自分たちは中身の議論に集中すれば良い」という期待感の下に協力してもらえなければ、ファシリテーションを活かした議論にするのは難しいです。
そのため周囲の不安感から経験が積めず、いつまで経ってもスキルが向上しない→周囲もファシリテーションに慣れることができずいつまでも導入ができない……。こんな悪循環が起きてしまうのです。
・セミナーとの意識の違い
「セミナーや講習会では大成功だったファシリテーションが、自分の会社では失敗ばかり」という声をよく耳にします。この原因は、参加メンバーの意識の違いです。
セミナー参加者は皆ファシリテーションに期待し意欲が高いだけでなく、実行のノウハウを持っています。そのため、その場では議論が成功しがちなのです。
●まとめ
いかがでしたか?? 議論を円滑かつ有意義にすることができるファシリテーション、身に着けばさらなるスキルアップ間違いなしですよね。
議論のフレームを作り、様々な視点から物事を分析検討して結論を出すという思考法は、個人の仕事でも役立ちそうです。
もちろんそのスキルは一朝一夕で身につくものではありませんが、臆せずに経験を積むことが一番の近道です。次の会議から心がけてみませんか??
Photo:Getty Images
Text:K.S