後編は、議員の着こなしと、色の話
国会議員のTPOからサラリーマンの着こなしを考える
連載の今月のゲストは、参議院議員の江崎（えさき）孝さんです。江崎さんは選挙期間中もスーツにポケットチーフをTVフォールドで挿して活動するほど、「議員の中では異色な感じ」ですが、おしゃれが昔から大好きで、「茶色の靴を履いて出かけた時、黒のベルトを着けているのに気づいて、茶のベルトを買いに行った」というほど着こなしにも目が行き届いている方です。対談後編では「国会議員のTPO」を中心にお話を聞きました。
江崎さんから議員バッヂを付けてもらいご満悦のドクトル赤峰
赤峰さんに会ってから、スーツのありようが変わった
赤峰 このFORZA STYLEは40代のバリバリ働くビジネスマンがターゲットですが、江崎さんはサラリーマンの経験もありますよね。
江崎 もちろんです。公務員として40歳までは地元の福岡県柳川市（旧三橋町）で働いていて、福岡に通勤するようになって福岡・天神にある『HAGANE TAILOR』でスーツを誂えるようになりました。
赤峰 2010年に初当選されてスーツの着こなしは変わりましたか？
江崎 議員になってというより、赤峰さんに出会ってから、スーツのありようが変わりましたね。若い頃は肩が大きくて丈が長くて、だぶだぶのソフトスーツが流行っていましたが、赤峰さんのスーツを初めて着たときに、「袖がこんなに短くていいのか!?」と思ったのは今でも覚えています（笑）。
赤峰 この参議院議員会館には全国からたくさんの陳情団が来ていますが、みんな「殿中でござる」のようにだらだらと長い袖のジャケットと長い裾のスラックスを穿いていて、まず決まっている人がいない。ああいう光景を目の当たりにすると、「日本を何とかせんといかん」と強く思います。
江崎 そんなにダメですか？
赤峰 まず姿勢が悪すぎます。姿勢が悪いから、スーツの生地はそこそこでも良くは映えない。海外のVIPの歩き方を見てください。姿勢が良いからスキッと見える。着こなしは、日々の暮らしからですよ。
初出馬した2010年の第22回参議院議員選挙のときに、ポスター撮りのスタッフが、「特別に表紙だけダミーで作ってくれた」という雑誌ビジュアル
「黒っぽいスーツはほとんど着ない」という理由
――国会議員としての活動のときに、TPOにあわせて着こなしを考えたりしますか？
江崎 今日はこういうネクタイをしていますが、実はソリッドタイが一番好きです。ブルーや白のシャツと無地が一番合わせやすい。
赤峰 トランプ大統領は赤のネクタイを強調していますよね。
江崎 僕は好みではありません。トランプさんは「ネクタイで勝負する」政治家で、赤のネクタイで通すのは支援者に対するアピールです。あと、TPOといえば、僕は黒っぽいスーツはほとんど着ないですね。
赤峰 ヨーロッパでは黒のスーツを着ている政治家はほぼいません。黒はあくまでフォーマルな色なので、日本の政治家や就活生の黒のスーツは奇異に感じます。だいたい、「黒は目立たない」という言い方は大きく間違っています。
江崎 議員も秘書も、公務員も黒っぽいスーツが多いですよね。黒は、「主張しない色」とか、「軽く見られない」というのがあるのかもしれません。国会では茶色を着ている人もほとんど見ませんね。
赤峰 そういえば、「AKAMINE Royal Line」のブルーのスーツを着て国会に出席されたと言ってましたよね。
江崎 このジャケットですよ。僕は大好きなんだけど、1回だけ国会に着て行きました。
赤峰 これは6～7年前に作った「スペンス・ブライソン」のアイリッシュリネンのジャケットですが、リネンならではの“てろつき感”が良い味になってきていますね。
江崎 これを着てイタリアに行ったことがあって、夏にヴェニスの空港で、おじさんがじろじろ見てきて、「良いスーツを着てるね」と誉めてくれましたよ。
赤峰 うれしいねえ。イタリア人はやっぱり分かってるねえ。
「黒をきちんと決めて着てくれ」と言われたら悩みますよ
――また「黒」の話に戻りますが、議員だと冠婚葬祭の場に出られることが多いですよね。
江崎 そうですね。どちらかといえば葬儀が多いですね。着こなしは特別なことはなくて、市販の黒の礼服を着て出ます。
赤峰 日本人は昔から、「黒紋付き＝フォーマル」というのをメンタル的に引きずっているから、特殊なシーンでの「黒」を特別扱いしがち。日本人だけですよ、黒のスーツがあれば普段から葬祭まで乗り切れると考えるのは。
江崎 さらに、就職活動もそうですよね。
赤峰 今度、就職活動のルールが変わりますが、いいことですよ。横一列ではなく、自分のパーソナルなモノを前に出していく時代になるから歓迎です。
江崎 そうやって考えると、「黒は無難」な色なんでしょうね。
赤峰 いやいや、自分でも「黒をきちんと決めて着てくれ」と言われたら悩みますよ。それぐらい黒は扱いが難しい。
江崎 自分も天皇陛下をお迎えして行われる国会の開会式や園遊会用にモーニングは持っています。
赤峰 今度、タキシードを作りましょうか。
江崎 それいいですね。「普通に着られるタキシード」を作ってください。
赤峰 タキシードは胸元の素材の拝絹（はいけん）のシルクのクオリティで決まります。今度、自分がサヴィルロウで作ったショールカラーのタキシードをお見せしますよ。
江崎 あと、そろそろ息子を赤峰さんのアトリエへ連れて行こうと思っています。
赤峰 ぜひ親子で来てください。息子さんは20代ですよね。
江崎 息子には、「早く気に入った服を作って着たほうがいい」と言っています。息子も素人なので赤峰さんにお任せしないと。
赤峰 まさに「服育」ですね。任せてください！
趣味は「サッカー」、好きな言葉は「深い川は静かに流れる」という江崎さん
江崎 孝（えさき たかし）
参議院議員 立憲民主党・比例代表選出／平成22年、28年当選 2 回
1956年8月11日、福岡県大川市に生まれる。79年3月法政大学社会学部卒業。79年三橋町役場入職（現柳川市）。三橋町役場において、広報、社会教育、同和教育、企画などを担当する。2003年9月、三橋町役場を退職し、専従組合役員となる。旧三橋町役場退職後、04年自治労福岡県本部書記長となる。07年自治労中央本部労働局長となり、地方公務員の賃金労働条件問題に関わるとともに、公務員制度改革を担当する。09年、公務員制度改革を担当する特別中央執行委員となる。10年、第22回参議院議員選挙初当選、16年再選。現在2期目（平成30年11月1日現在）
http://esakitakashi.net/
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ジャパン・ジャントルマンズ・ラウンジ
http://j-gentlemanslounge.com
Photo：Shimpei Suzuki
Writer：Makoto Kajii
