トイカメラからプロ用カメラまでの幅広さと、そこに広がる奥深さとは?
ファッション業界の賢人が編集長・干場に強烈にリコメンドする逸品を、価格帯別に紹介する連載連載の第16回。今回ご登場いただくのは、ファッション誌『PLEASE』編集長の北原 徹さんです。お題はカメラ。服飾アイテムでなく、北原氏が大好きなカメラをお持ちいただいた今回、干場を唸らせる逸品は果たして登場するのでしょうか?
干場編集長(以下敬称略):今日はよろしくお願いします。北原さんはマガジンハウスから独立して、現在は雑誌『PLEASE』の編集長を務めていらっしゃいます。『PLEASE』は現在何号目でしょうか?
北原:9月9日に7号目が出ます。
干場:『PLEASE』は北原さんがすべて撮影、スタイリングをされていると聞きました。
北原:全部ではなくて、スタイリストさんにもお願いしています。馬場 圭介さんをはじめ何人かの方にお願いしています。1号目は野口強さんにもお願いしました。同じタイトルの雑誌でメンズ号とレディース号を交互に出しているんですよ。
北原:自分だけで一冊丸ごと作ってみたいという気持ちは、23年間勤めたマガジンハウスで、最初に配属された『an an』編集部時代から暖めていたんです。ファッションと漫画と文章が一緒になったようなものがやりたいな、と思っていました。
今回、いろいろ模索して、スポンサーなど探したりもしたんですが、結局作ったモノを見せないとスポンサーってつかない。ならば自分で作ってしまおう、と。そこで自分のお財布を見たら、1号2号くらいなら作れるかな……となって今に至るわけなんです。
干場:人の手が加われば加わるほど、自分が思い描いている世界から、どんどん離れていく。だから一冊をまるまる自分を作って、それもお金のかかるファッション誌っていうところが凄いなぁと思います。ところで、なんでこの雑誌のタイトル、なぜ『PLEASE』なんでしょう。
北原:中学1年生の英語の教科書に出てくる言葉がいいと思っていたんです。
干場:その心は?
北原:誰もが知っている言葉だから。僕の基本の考え方なんだけれど、なるべく小・中学生がわかる言葉でやりたい、っていうのがあるんです。二番目に、プリーズって可愛い言葉だな、と思う機会があったんですね。PLEASEは、毎回コンセプトを決めて編集しているわけではなく、自分の興味のあるもの、好きなものを集めて構成しています。ファッションというのはパッションに近いわけで、感覚的なものだと思うんです。今の気分ってこうじゃないかなぁという気分が読めればいい。
干場:じゃあ、どうぞ気分を読んでください、っていう。
北原:Please read you feeling みたいな。
干場:その気分を捉えているのが写真であり、文章であり。さて、そんな北原さんに今回、僕へのおすすめ松竹梅としてお持ちいただいたのがカメラという。まずは、一番価格がお求めやすい、梅からお願いいたします。どんなものをお持ちいただいたのでしょうか?
北原:『POPEYE』に在籍時、4×5のビューファインダーのカメラでぱかぱか撮っていたことがあり、それがデビューだったんです。写真って、カメラそのものが写真術だったりすると思うんです。いろいろな手法が欲しくて、当時手に入れたのがホルガというこのカメラなんです。
干場:どこの国のものなんですか?
北原:ロシアじゃなかったかな? 所謂トイカメラですね。でも、実は、巨匠パオロ・ロベルシもこれを使って聞いたことがあります。
干場:それは凄い!これ、めちゃめちゃシンプルでいいですね。
北原:昔のホルガは電池を入れなくても使えたんですが、今のものは電池を入れるんですね。う〜ん、軽い。これはデジタルですね。以前ホルガはフィルムのブローニーのものがあって、それで僕は撮影していたんです。これ、僕買おうかな(この対談の後買いました(笑))。
干場:それミイラ取りが、のパターンじゃないですか(笑)。
北原:レンズがプラスティックなので、とても味のある写真が撮れるんです。歪むんですよ。あと暗かったり明るかったりするのが極端に出る。
干場:それが味! なんですね。
北原:これであなたもパオロ・ロベルシになれます!みたい写真が撮れるはず。
干場:あの幻想的な、ね。面白い!
北原:絞りが2つですね。800万画素もあるので、見開きくらいの写真は撮れてしまう。
干場:北原さんは、どんな写真家が好きなんですか?
【アンリ・カルティエ=ブレッソン】
【ピーター・リンドバーグ】
【アヴェドン】
【アンドレ・ケルテス】
北原:パオロ・ロベルシ、ピーター・リンドバーグ、アンドレ・ケルテス、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ヨゼフ・スデック、リチャード・アヴェドン、アーヴィング・ペン、スティーブン・マイゼル、ニック・ナイト、ジュリア・マーガレット・キャメロン、ホルスト、ジャック=アンリ・ラルティーグ……。というか枚挙に隙ないんですよね。新しい作家も好きですが、とにかく僕、古典主義なんですよ。
干場:なるほど!なんとなくわかります、その感じ。では、続いて竹のカメラをお願いいたします。