ゲーセンの熟女はゲーム中のぼくにずっと話しかけてきた。うるさいなあと思ったが、ゲームをし終えた頃になると慣れてしまい、こんな女性も悪くないと思うようになっていた。
もしかすると、ぼくにはマゾっ気があったのかもしれない。アパートから徒歩1分ということもあり、たびたびゲーセンに顔を出すようになった。
彼女は毎日「タダ」でやらせてくれた
彼女は毎日「タダ」でやらせてくれた。
もちろんゲームの話である。
ぼくが行くと「お疲れぇ~」と、アンニュイな声で迎えてくれ、グラディウスの蓋を開け、タダでクレジットを入れてくれた。小遣い的にはありがたいが、ぼくは不安になった。
「こんなことして違法じゃないの?」
「大丈夫よ。私の店だもん」
「でも、お店、潰れないの?」
「他の人がたくさん使うから平気よ」
本当に大丈夫なのかと思ったが、店長がそう言うのだからそうなのだろう。
ぼくが行くと、彼女はいつも隣にきて話しかけてきた。ぼくがゲームをしている間、ずっと話していた。話しかけられると集中できず、失敗してしまうこともあるのだが、何しろタダでやらせてもらっているのだから文句は言えない。
「彼女できた?」
「まだできない」
「何よ、モテないのね~。好きな人はいないの?」
「いない」
まさか、ペット売場の多岐川裕美が好きだなんて言えない。もしかして知り合いかもしれないのだ。
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