今更だけど、トランプはなぜ選ばれたのか?
東京で生まれ、気づけばアメリカ在住歴二桁のライターGigiが、カフェで聞いた噂話やよもやま話を現地からそのままお届けします。
ここはアメリカのカントリーサイドにある、とあるカフェ。たまには気分転換に朝から外飲み?しようと、ご来店。さぁ! お店いっぱいに広がる香りに癒されてしまおう、そのうち今日のやる気スイッチも入るでしょ、と淡い期待もしっかり胸に。
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私が今住んでいるところは、自動車産業地域。まぁ~、保守を絵にかいたような片田舎。海外旅行はおろか州外引越しもせず、一生を代々この辺で過ごす白人家庭がとっても多いんです。軍に入る人も多く、これも家系なんていうあんばいですから。
田舎は何でもドライブスルーが基本なので、朝から店内で優雅な時を過ごしているのは大抵ご老人。奥の席でドーナッツをコーヒーに浸しながら食べるお爺ちゃん二人の話題は、やっぱりトランプ大統領。思い切ってお爺ちゃんに率直な気持ちをドギマギしながら聞いてみると…あら、意外。もっとエキサイトしちゃうんじゃないかと思ったら、かなりクールなんですよ。
「僕がトランプに票を入れたのには、ハッキリとした理由があるんだよね」。
うんうん、そこが聞きたいの。
「前大統領も含め、政治家に対してことごとく失望したんだ。“change”と掲げた割に、何が変わった? どれだけの人が、今も生活保護だけで暮らしている? 失業率も、税金負担も、増えているんだよ。リタイヤしている僕たちはまだいい。でも生活保護受給者が増えれば、税金で賄うしかないだろ? それを負担するのは市民だよ」。
クリントン、オバマと長い間に渡って、工場や関連企業も芋づる式に米国外へ流出したのは、大企業から景気回復の波を作っていこうとした政策だったけど、結局働く場所が消えてしまったところでは、生活苦になるのは当然だという話。この町のメインストリートも空店舗が増えているしね…。
「だから、全く違う視点を持つ彼を選んだんだ。彼はビジネスマンだから、政治家と同じにはならないだろうってね」。
そうですね、かなり世の中が困惑していますが、これが怪我の功名? 雨降って地固まる、になっていくのかしら? ひとしきり語ってくれた締めに、お爺ちゃんは斜に構え
「僕の希望を彼に預けた。チャンスをあげたんだ。まぁ、もしダメなら、また次を考えればいい」。
…なんだろう? 身体に風がすうっと通った感覚と一緒に、人の純粋さと、アメリカ人の失敗を恐れない精神みたいな…ニヤっとしているお爺ちゃんがイケてる翁に見えたのは、カフェインが足りなかったせいでしょうか?
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毎日ニュースの顔となっているトランプ大統領。TVつければまた何かやらかしているご様子で、メディアはお忙しそうですね。世界中のプロテスト(抗議)活動が何度も画面に出てきますが、田舎は平和なものです。活動している人は皆無。だってそんなことしたら撃たれるかもしれません。いや、大げさではなくて。
Text: Gigi
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Madam Gigi (ジジ)
あまりにも忙しいNY生活から解放されたくて田舎へ移ったジャパニーズ。ヒールがブーツに変わっても、物書愛は継続中。得意技は、抜き手と手抜き。