ジャパニーズジェントルマンに捧ぐ極上コスパコート
ファッション業界の賢人が編集長・干場に買わせたい逸品を価格帯別に紹介する連載第7回。今回、ご登場いただくのは赤峰幸生さんです。今回のお題は、コート。干場が若かりし頃、こんなカッコイイ大人がいるんだ!と感動した赤峰氏が勧めてくださるコートとは!?
干場:赤峰さん、ご無沙汰しております。さて、いきなり本題なんですが、松竹梅をお願いしたいと思いまして……。実は前回、『オーシャンズ』編集長の太田さんが、「ホッシーに持ってきても着ないでしょ? 茶番だ!」なんて言われた企画なんです。今回はコートというテーマでお願いしたのですが、また恐れ多くて……。

赤峰:実は今回お持ちしたのは、すべて五大陸のものなんです。他のものも見たのですが、ぜひおすすめしたいのがこちらのものになりました。五大陸は26年前に僕が参加して東京発世界服というコンセプトのもと、立ち上げたブランドなんです。一時は離れていたのですが……。ここ数年、再生させるということで改めて手掛けることになったんです。オンワード樫山という日本で一番大きなアパレルのブランドなのですが、日本の145店あるほぼすべての百貨店と取引をしている会社なんです。
干場:赤峰さんが手掛けられていたんですね。
赤峰:はい。当初は当時のミラネーゼスタイルを打ち出していました。ネイビーブレザーやレジメンタルタイ、キャンディストライプのシャツなどを展開して、日本の方にも着て貰いたいという思いでスタートしました。当時のミラネーゼの間では、“ラテンブレンド・ブリティッシュスタイル”が流行っていましたね。
干場:イギリスにラテン風味をミックスさせているんですね。
赤峰:そうです。イタリア人は僕の格好を見ると、「ケ モルト イングレーゼ(che molte inglese)」って言います。「なんてお前イギリスっぽいんだ! 」って意味です。服好きのイタリア人にとって、最上級の誉め言葉なんですね。ブリティッシュスタイルが好きなんですよ、イタリア人は。ただ、現在のブリティッシュスタイルと、イタリア人の好きなブリティッシュスタイルは微妙に異なるんです。
干場:確かに、本場のブリティッシュスタイルはもう少し違いますよね。

赤峰:日本も漱石の時代からブリティッシュスタイルを踏襲していたんですが、第二次世界大戦の後、アメリカ文化が沢山入ってきたんです。で、そんな今、ジャパニーズ ジェントルマンを多く誕生させようということで、五大陸に再度携わったんです。まずは、梅のコートなんですが、こちらはドーメルの生地を使用しています。
干場:こちらは、おいくらですか?
赤峰:9万9000円です。世界的な一流生地メーカーであるドーメルは、それまで五大陸と取引がなかったんですが、交渉して、デザイナーがヨークシャーの工場まで出かけていき、オリジナルの生地を制作したのです。湿度の多い日本の気候に合わせた生地を作っています。
干場:凄い! オリジナル生地なんですね。
赤峰:ある程度、量産することで価格も抑えているんです。生地は綾織りになっており、トップグレーの色味やグラム数はデザイナーが指定したもので、形はベーシックなチェスターフィールドです。

干場:3つボタンのシングルで、フルライニングですね。
赤峰:これが仕事に着ていくコートとして、15年20年と着ていただける一番基本的なデザインかなと思います。クオリティが良く、10万円以内でという点もおすすめです。
干場:後ろはセンターベントで、本当にベーシックなデザインですね。着てみていいですか? シンプルで着やすいです。チャコールとミディアムの中間くらいの色合いですね。