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FASHION 僕が捨てなかった服

“隠居系”山田恒太郎 第8回 「ラム」「ルッフォ」のレザーブルゾン

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人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。

真の“一生モノ”を見つける

人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるのではないでしょうか。この連載では、本当に良い服、永く愛用できる服とは何かについての、僕なりの考えをお伝えしていきます。そして同時に、皆さんがワードローブを充実させ、各々のスタイルを構築するうえで、少しでもお役に立つことができれば嬉しい限りです。

前回、「グッチ」のレザーブルゾンを紹介しましたが、今回も引き続きレザーブルゾンを2点紹介します。雑誌などで“一生モノ”という表現を目にしたことがある方も多いと思いますが、実際に一生愛用できるアイテムはそんなに多くはありません。でもレザーアイテムは文字通り、一生モノになりうる可能性の高いアイテムです。秋冬シーズンのアウターとして、もっともお勧めしたいアイテムです。今回はこれまでとは少し趣向を変えて、“良いレザーアイテムの見つけ方”に焦点を当ててみようと思います。

これは「ラム」のものです。2000年にデビューしたトータルブランドで、スーツ、ジャケットではクラシック系高級ブランド並みに仕立てにこだわり、同時にデザインや素材使いに先進的な取り組みを見せる、とてもユニークなブランドでした。購入したのは2002年か2003年ですので、13年か14年着続けていることになります。「グッチ」のものより全体にタイトなシルエットですが、袖付けを除いては、デザインはほぼ同じです。肝心の素材ですが、牛ではないんですが、何の革だったのか失念しました。表面にはキメの細かいシワが入っていて、とてもソフトです。裏地は大部分が薄手のウールで、袖と裾付近はナイロン。秋口から着られる、かなり使い勝手の良い一着です。

次は「ルッフォ」のものです。20年ほど前にジャンニ・ヴェルサーチ、プラダ、ドルチェ&ガッバーナといったモード系トップブランドにレザーアイテムを供給していたファクトリーブランドで、品質の高さは折り紙つきでした。ナッパ素材の素晴らしさを知るきっかけになったブランドで、メンズ・コレクションの取材などでイタリア、ミラノを訪れるたびに店に立ち寄って、何かしら購入していた大好きなブランドでした。

このブルゾンは1996年か1997年1月のメンズ・コレクション取材時に購入したもので、ほぼ20年着続けています。素材は「グッチ」のものと同じナッパで、すごくしなやかでソフトです。革、裏地とも厚手で、スタンドカラーのうえに首にはリブ編みのニットまで付いているので、真冬でもまったく寒さを感じません。これを着始めてからは、それまで着ていた硬い素材のレザーブルゾンやダウンジャケットは、まったく着なくなりました。

他にもレザーアイテムは素材違い、デザイン違いでいろいろなものを着てきました。レザーアイテムを購入する際には、何より素材選びにもっとも注意を払います。ただ素材を含め、品質というのはなかなか分かりづらいものです。とくにレザーアイテムのような高価なものを選ぶ際には、まずブランドで絞り込むのも有効な手段と考えて良いと思います。モードやクラシック系のトップブランドなら品質は間違いありません。これ以外で良いブランドを選ぶポイントをいくつか挙げてみます。

まずトータルアイテムを展開しているブランドなら、テーラードジャケットの仕立てがしっかりしていれば、他のアイテムもほぼ間違いなく良い物を作っていると考えられます。ジャケットの仕立ての良し悪しはいろいろな媒体の評価を参考にしたり、この連載の第6回「『サルトリア・アットリーニ』のカシミアコート」なども参照して下さい。

次に先述の「ルッフォ」のような、トップブランドに製品を供給しているファクトリーブランド。表に名前が出てくるものは数は多くないですが、こんなブランドを見つけたら、品質については心配無用です。

あとは、レザーアイテムの専業メーカー、ブランドです。専業といっても、当然ピンからキリまであります。1冊の雑誌や1店舗から入手した話だけではなく、ネットなどでできるだけ情報収集をして判断して下さい。

好みの問題かもしれませんが、僕は硬い革よりソフトな革の、着心地の良いものを選ぶのをお勧めします。デザインはこれまでこの連載で書いてきたのと同じように、流行にとらわれず自分のスタイルに合うものを選ぶことです。10年、20年と愛用できる、しっかりとした良いものを見つけてください。

Photo:Tatsuya Hamamura
Text:Kotaro Yamada

山田恒太郎(改め“隠居系”)
1990年代後半から『BRUTUS』、『Esquire日本版』、『LEON』、『GQ Japan』などで、ファッションエディターとしてそこそこ頑張る。スタイリストとしては、元内閣総理大臣などを担当。本厄をとっくに過ぎた2012年以降、次々病魔に冒され、ついに転地療養のため神戸に転居。快方に向かうかと思われた今年(2016年)4月、内服薬の副作用で「鬱血性心不全」を発症。三途の川に片足突っ込むも、なんとかこっちの世界に生還。「人生楽ありゃ苦もあるさ~♪」を痛感する、“隠居系”な日々。1964年生まれ。神戸市出身。



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