変化を楽しむ余裕(ゆとりのココロ)
こんにちは。ナチュラルビューティーハンター品田ゆいです。
お酒とじっくり向き合える季節になってきましたね。そして、連載もちょうど10回目となり、節目を自発的に“お祝い”させて頂きたく、ここ最近注目している自然派ワインの企画を企てさせて頂きました。自然派ワインとは有機のぶどう栽培だけでなく、醸造まで自然に造られたワインのこと。今回お時間をともにしたのは編集者でありながら、講師や飲食店舗開発などコンサルティングと各方面でご活躍されてきた松尾大さん。グラスを片手にした対談の中で、なぜ自然派ワインなのか。ごく自然な会話の中でその魅力に迫ってみました。前編はこちら。

松尾:そもそも何故自然派ワインを選ぶのかという理由は、僕自身はどちらかというと酸化防止剤の部分ではないですね。
品田:どんな部分に魅力を感じたのでしょうか。
松尾:自然派ワインの面白さはぶどうが自由に育った子か、しつけされた子か。自由だからこそ全てが良いと限らず、予測がつかない、瓶ごとにも個体差がある、生産量も少ない。それを含めて楽しんでいるんです。「何年の何々はこうでなければいけない」という、ワイン通と逆の考え方です。
品田:ワインにも個性があっていい。それはオトナになると出てくる、幅というか心のゆとりの様にも感じます。
松尾:そうですね、個性を楽しむことです。
品田:自然派ワインはエチケット(ラベル)も型にはまらない自由なものが多いという印象です。やはり若い作り手が多いのですか?

松尾:様々ですね。エチケット(ラベル)はA.O.Cで決められていることもありますが。地域を名乗るには、機関の官能検査をクリアしないと認められない。最終的には審査員の感覚や体調などに左右されてしまったりするのですよ。曖昧でしょ。
品田:どんな人物が審査しているのか、想像つきませんが…。
松尾:極端な言い方かもしれませんが、農家は儲かっている訳ではないので権力もないし、裏金も渡せない(笑)。なにがその土地らしさかって、でしょ。
品田:自分で飲んで確かめろ、ということですね。

松尾:これ美味しい、これは嫌でいい。誰かに「メドック1級じゃないからダメ」って言われる筋合いはない。
品田:映画でもなんでも自分の目で観に行かないとですね。五感で感じないと。特にワインなんかは、スーパーに並んでいる文面で先入観から入りがちですが。
松尾:みんな答えを欲しがるけど、別に答えは要らないんじゃないかと思います。ワインの味なんて言ったもの勝ちのところがありますから。
品田:確かに“メロンの風味が”なんて書いてあると、そうだと思い込んで飲んでしまいます。でも、大概想像を超えることはありませんね。

松尾:“これはこうじゃなきゃいけない“という思い込みは、もったいない。
品田:今までのワインとは完全逆転の発想ですね(笑)
松尾:品種云々を言う人もいるでしょ。特に今の時代、農薬を使って育てられた木のぶどうなんて周りの酵母が死んでしまっているので、培養酵母与えてお酒を造る。品種にあった酵母がそれぞれあって、たとえばソーヴィニヨン・ブランかと思っていた味や香りが、実は培養酵母由来のものだったりする。
品田:実はみんな騙されていた!?
松尾:そう言うと大げさかもしれませんが、素直に「この醸造家はこういう味で造るんだ」「この地域のぶどうはこういう味がするんだ」という想いを素直に馳せて飲むのが良いですね。と言うと一般のワイン通と同じ言い方になりますが。
品田:旅をする様に楽しむ、とよく言われますよね。
松尾:今、世界的レストラン『ノーマ』のワインリストのほぼすべてが自然派ワインなのは、やはりその土地らしさを大切にしているところがポイントですね。
品田:『ノーマ』行ってみたい…!
【女性に気に入られるのは親近感、でも実は…】

品田:今年の6月パリに行きましたが、その時もパリの自然派ワインが楽しめる「クラウンバー」は人気があり過ぎて、予約が取れませんでした。日本でも自然派ワインのお店が増えてきていますね。女性を中心に人気が高まってきている気もしますが。
松尾:そうですね、自然派ワインのお店はかなりカジュアル。ワインだって出されたグラスを大げさに回しもしなかったし、香りもかがなかったでしょ。
品田:そうでしたね! そう言えばグラスのサイズも変わっていない…。お店の雰囲気も仕事帰りとか気軽に立寄れる感じですよね。
松尾:飲んでいる時は素っ気なくして、でも実は気にして選んでいる。というのが良いんじゃないかと思いますよ。

品田:人にもよるかと思いますが、女性はそう言う姿勢が好きだと思います。ファッションでもそうですよね。あからさまに見せつけられるより。
松尾:どういうものを選ぶのかは、その人自身を表す。どこに行くにも“自分らしさ“があった方がいい。
品田:思想が滲み出ていると、より素敵に見えますよね。
松尾:(グラスが空いて)そろそろ違うものを頼みますか?
品田:お酒弱くなってきたかもです(笑)。ですが折角なので、今回お店と松尾さんのおすすめの白・赤をお願いします!

松尾&店:アルザスのリエッシュという造り手のゲベルツ100%(グラス 1100円)。
品田:色がキレイですよね〜、これが白ですか?
松尾:これは今“オレンジ”と言って世界的にも流行っています。白ワインにカテゴライズされるのですが、赤ワインを造るのと同じようにブドウの皮を一緒に漬けているので、果皮の色素がワインの液体に溶け込んでいるんです。
品田:本当ですね。とても白ぶどうの味がする上に、豊かな果実感があります。
松尾&店:赤はロワールのニコラ・レオのグロロ100%です(グラス 900円)。これにはお店のこだわりがあるようなので、どうぞ。
店:はい。日本のインポーターが手を付けてなかったため、赤は今年に入ってやっと日本に輸入されたのですが、頑固で職人気質な醸造家が造るワインです。ニコラ・レオという造り手のものですが、今年日本に入ってきた自然派ワインの中でも一番の当たりかもしれません。ファッションで例えるなら“モード“ですね。味は田舎臭いですけど(笑)。
品田:自然がつくり出した繊細な味。これなら欧州の人達が水の様にワインを飲むのもわかる気がします。それにしても飲みやすくて、ついつい飲んでしまいますね…。最後に選ぶ時のポイントを教えてください!
松尾:何にしてもカッコ良いと思われたいというよりは、面白いと思ったものを素直に選んでいるだけですね。
お酒も入り、長々と与太話に近い質問を繰り返した結果、「自然派ワインの魅力も然ることながら本質を見失わず、良い部分も悪い部分も受け止めて楽しめる心の“ゆとり”を持て」ということだったのではないのかなと思います。…そう、ルールなんてないのです。自由に楽しんで、己のセンスを磨いていく。そこで、今一度おさらい!
1、 心底楽しんでこそ“お酒”、会話を楽しむこと
2、 センスとは自分で感じているか、他人の意見に惑わされない
3、 常識に捉われない自由な飲み物=自然派ワイン
さぁ、皆さんもこの秋自由なココロで自然派ワインを楽しんでみてください!


お話しを伺った店舗
ヴェール ヴォレ ア トーキョー (le verre vole a Tokyo)
東京都目黒区目黒4-10-7
03-3713-7505
18:00〜翌1:00(L.O 23:00) 月、祝休み
200種類ワイン全て自然派ワイン。
グラス 850円〜ボトル 4000円代〜。
松尾さんおすすめの購入出来る場所(都内)
伊勢丹B2「フェスティヴァン」、恵比寿「ワインマーケットPARTY」、銀座「カーヴフジキ」、中目黒「THE WINE STORE」、下馬「野崎商店」、梅丘「リカーランドなかます」、大森「酒肆はしごや」、雑色「森田屋酒店」、千駄木「リカーズのだや」など
松尾様プロフィール
大学卒業後「Meets Regional」副編集長、「ENGINE」編集ほか、雑誌、ウェブメディアでの編集を経て2015年9月より、ぐるなびが手掛ける食通のためのグルメメディア「dressing」編集長。グルメ、クルマなど趣味性の高い分野を得意とする。特に自然派ワインにおいてはイベント開催や講師も。http://www.gnavi.co.jp/dressing/
Text:Yui Shinada
Photo:Tatsuya Hamamura
hair協力:L&Co. https://l-and-co.amebaownd.com

nu-natural:http://nu-natural.com/blog/yuishinada/
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