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変革大陸!
ロボットは人を幸せにする? 〜ロボットデザイナー松井龍哉氏

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一家に一台! ロボットのある社会をつくる

「世界を変えよう、社会を変革せよ!」。次世代ビジネスリーダーたちの本音とプライベートに迫る本連載。仕事も、OFFも、柔軟に楽しむ感性こそ、世の中を変える原動力かもしれません。彼らの仕事と遊びの哲学から“変えるヒント”を学んでみよう。

「歴史に残る仕事をしているか」
かわいいヒト型ロボットのかたわらで、そうつぶやくロボットデザイナーの松井龍哉さん。これまで数々のロボット開発や、航空会社スターフライヤーのトータルデザインなど、社会にインパクトを与える仕事を手がけてきた。ドイツで行われたロボットの国際的な競技会「ロボカップ2016」では、松井さんの会社、フラワー・ロボティクス社はグローバルパートナー企業として参加している。そんな松井さんの仕事の原動力は何なのか? 

「歴史を作ってきた過去のデザインを振り返ると、その時代の技術と産業が生み出すライフスタイルに密接に関わっていることがわかります。産業革命後の20世紀デザインではモダニズム建築や自動車、飛行機やコンピュータなど、新たな技術や社会から生まれたデザインを思い出します。じゃあ21世紀の特徴的なものは何か? 100年後、22世紀に“あぁ、あれが今に通じている”と納得できるようなものを作りたいのです」

丹下健三が描いた未来の東京はいま

50年、100年という長い目でものを考える思考力は、かつて建築家の丹下健三事務所で働いていた時から培われた。

「丹下先生は伸縮する未来の都市計画“東京計画1960”を掲げられていましたが、それは50年後の東京のイメージがあります。やがてひとり一人が小さな端末となり、情報にアクセスすることでネットワークが広がっていくということを予見するものでした。インターネットもない時代に、コンピュータも見たことのない人に“21世紀には小型の端末機が様々な情報を取り出し社会のうねりになり、生活の中で情報の価値が物質を超える”という趣旨を伝えて います。当時は理解するのが難しい思考だったかもしれませんが、それが都市計画を作るキーコンセプトになっていました」

90年代の丹下事務所にいた頃は、主に情報ネットワークと都市の関わりに関心を持っていたという松井さん。その後「ミイラとりがミイラになった」ように、情報科学にのめり込み、IBMや科学技術振興事業団ERATO北野共生システムプロジェクトなどで実社会と情報デザインの研究をする。それがロボットデザインのベーシックな構想になっていった。

「21世紀はモノ+情報をつなぐインターフェースが重要なデザイン」というのが自身の問いに対する答えだった。

 

誰もが幸福を感じるデザインって?

ロボットデザイナーとして、松井さんの考え方をよく示したヒト型ロボット、Posy(2001年開発)がある。ロボットが無機質なものと考えられていた時代に、小さなフラワーガールという胸キュン♡なデザインで、ルイ・ヴィトンはじめ世界中からオファーが殺到した。(トップ画像で松井さんの隣にいるのがPosy)

「ロボットは技術を追求するだけじゃなく、人間に寄り添う存在でないといけないと思ったんです。そこで人の感情に訴える、笑顔になるというのは、どんな状況かリサーチしたんですね。すると結婚式で3歳くらいのフラワーガールが現れた瞬間が、みんな笑顔になることがわかって。みんなを幸せな気分にさせるには、コレだ! と3歳のフラワーガールをイメージしたPosyを造ったんです」

家庭用ロボットPatin



 

そして今、松井さんが開発に心血を注いでいるのが、家庭用ロボットPatin (パタン) 。フランス語でスケートを意味する人工知能をもった台車型ロボット。この台車に照明器具や空気清浄機などを載せると、家電機能が移動しながら機能するロボットになるという発想。家庭における人型ロボットの限界点をデザインの手法で解決した家庭用ロボットの新機軸である。
「一家に一台、人を助けることができる家庭の必需品」になるかもしれないと未来を描く。

未来を感じる、BMW i3に乗って

そんな松井さんがプライベートで楽しんでいるのが、電気自動車。
「昔からクルマが好きで、これまでもいろいろ乗ってきました。BMW i3はデザイン的にも優れたEVですよね。これに乗っていると、カラダで未来がわかるようになるんです。実感として、環境とテクノロジーの融合が見えてきます。とくに今、クルマのモノづくりにおいては、環境というキーワードが重要です。クルマは20世紀のデザインだけれども、21世紀はどんな形になるのか? そう考えると世界の変化、科学の無常観を感じます。科学は無常なり。常に進化し続ける革新力って、大事ですね」

 

松井龍哉氏の「変革力」

1. 100年後に残る本質を考える。
2. 人が幸せになる瞬間を見つけ出す。
3. 世界の変化を常にカラダで感じる。

【プロフィール】
松井龍哉 まついたつや
ロボットデザイナー、フラワー・ロボティクス株式会社代表取締役。2001年の創業以来“ロボットを日常の風景にする”というビジョンのもと、数々のロボットを手がけてきた。ヒト型ロボット以外に、現在は家庭用Patinを開発中。また「2050年までにサッカーの世界チャンピオンに勝てる自律型ロボットチームを造る」という、ロボットの国際競技会ロボカップでは、グローバルパートナーとして参加している。

Text:Michiyo Azuma
Photo:Tatsuya Hamamura

TOP画像:松井龍哉氏とフラワーガール型ロボット Posy

東ミチヨ

ライフスタイルジャーナリスト。ソーシャルオーガナイザー。大手アパレルの企画、コピーライターを経て独立。雑誌、広告等では、ブランド哲学×モノづくりを得意テーマとしてきたが、もの書きだけじゃ飽き足らず、2011年からはリアルな場でのソーシャル活動も開始。地域の人々や行政などいろんな主体を巻き込んで、小さな変革!の波を広げようと奮闘。H27年度グッドライフアワードにて環境大臣賞受賞。一般社団法人スマート・ウィメンズ・コミュニティ代表理事として、各種ワークショップなども主催。趣味は山登り、自転車、スローフード。神奈川県出身。



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