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LIFESTYLE ネット・SNS危機管理マニュアル

インボイスで殴り合う人々と、そこに群がる「怪しい活動家」たち

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

10月から始まるインボイス制度。この1年、SNSは反対派・賛成派が入り混じった殴り合いの日々でした。でも「ん、インボイスって何?」という人たちも実は結構いるんですよね。

正直、ほとんどの勤め人には(経理や一部業界を除いて)あまり関係のない話。請求書の書式が変わるくらいで影響も少なく、関心も低い。これは仕方のないことです。インボイス制度の影響を大きく受けるのは、年間の課税売上(利益ではなく)が1,000万円以下の「免税事業者」と呼ばれる小さな事業者や個人です。そんなインボイス制度をメッチャ簡単に、超乱暴に説明しますと……

免税事業者が、10万円の仕事に対して消費税を上乗せした「11万円」を請求した場合、その消費税は国に納められず事業者の利益(益税)になります。実はこれ法律上は合法であり、10月以降もやっぱり合法です。

この消費税を「今まで通り国に納めず利益とする」か、「10月からは国に消費税を納める」か、どっちか選べ、というのがインボイス制度(の超乱暴な説明)です。え、そんなの「今まで通り払わねぇ」に決まってるだろ!?だって合法なんでしょ? って普通思いますよね、ところが!

インボイス制度が始まると、これまで国に納めてこなかった消費税を、「他の誰かが代わりに納めなきゃダメ、絶対」という仕組みに変わります。「国に納めない」事業者が得た消費税は、それを支払った取引先が肩代わりして国に納めなければならない、これがインボイス制度(の超乱暴な説明)なのです。

取引先は肩代わりなんかしたくないから、当然「消費税を国に納めている事業者」=課税事業者に乗り換える可能性があり、そういった危機感から「売上は少ないけど、10月からは消費税を納める課税事業者に変更します」という事業者、個人が増えているのです(直近の累積申請数は100万件ほど)。

さあ殴り合え!インボイスで!

一方でそんなインボイス制度に強烈に反対、課税事業者になんか登録しねえぞ! インボイスなんて廃止だ!廃止!と鼻息荒い方々もおります。SNSにおける彼らの主張をまとめると、

「免税事業者制度は売上の少ない事業者を守る為のもの!これから企業による免税事業者への不当な値下げ要求が多発するぞ!零細事業者が激減するかもしれない。あと請求や経理が死ぬほど面倒なんだよ!インボイス制度は巨悪!日本を潰す気か!」

だいたいこんな感じですね。これに対し「インボイス推進派」の反論は、

「免税事業者制度の目的は事業者救済ではなく、納税・徴税コストの軽減です。あと企業の不当要求はすでに下請法で禁じられているし、そもそも預かった消費税を払ったくらいでアウトって、事業として成り立ってないのでは。事業主なら経理作業はやって当然。逆に確定申告とか今までどうしてたの??」

まあその通りですね、としか言えない無慈悲な内容となっており、税負担の公平性という観点から考えても、インボイス制度導入は避けられないのでは、と思います。面倒くさいけどね。

貧困ビジネス??

1つ気になったのが、一連の反対運動にシュパパパパと集まってきた特定の党派性を持った方々、日頃から労働者の味方を標榜する活動家の皆さんです。この人達いずれも「インボイス反対」を叫ぶばかりで、誰も

「インボイスに便乗した企業の不当要求は許さない」

的な話をする人がいないんですよね。実はそっちの方が現実に起こりうる話だし、すでに起きている兆候も見られるんですが……そういうのはどうでもいいんでしょうか??

必要な人たちに戦い方を教えず、助けもせず、酷いね、可哀そうだね、と自分たちの活動に呼び寄せる手法は、貧困ビジネスや脱法NPOと同じやり口です。申し訳ないけど、反対運動にかこつけて支持者を増やしたいだけでは、と勘繰ってしまう。私の勘違いでしょうけど。

個人的には、今回のインボイス騒動で「え、インボイス制度をきっかけに同業他社が減るの? じゃあ頑張って生き残れば市場総取りじゃん!!」みたいなしぶとい発想を、特に若い人たちには持って欲しく、きっとそういう人たちはすでにアップを始めているんでしょうね。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。

※文中の「1000万円未満」表記を「1000万円以下」に修正しました。

 



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