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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

甲子園では連日、球児たちの暑い熱い戦いが繰り広げられています。そしてこのネット上でも、先週末から「女子と甲子園」をめぐる暑く苦しい騒動が展開されておりました。

川之江高校(愛媛)の選手3名と、同校応援団を率いる女子団長。実はこの4人、少年野球団で一緒に戦っていた小学校からの野球仲間であり、女の子が「甲子園を目指す幼馴染を応援したい」と自ら応援団長を買って出たそうな。惜しくも一回戦で敗退しましたが、幼馴染の男女4人で目指す甲子園なんてもう「野球マンガかな」っていうエピソードですよ、エモい。ところが!

この話がネットで話題になるや否や、シュパパパパと駆けつけてきた人たちが、

「甲子園に行けない女の子の気持ちを考えろ」

「女性差別だ、夢をあきらめて仕方なく応戦団に」

「女が男のために犠牲になるなんて」

と騒ぎ始めたのです……えっ? えっ!?

つまりは男子選手に交じって野球をやらせろ、というご意見みたいなんですが、体格差・体力差を考えてもちょっとあり得ない話であり、しかもよく知らない他人の人生に対して、頼まれもしないのに「あきらめて」とか「犠牲」とか評するの、控えめに言っても凄く失礼で、何より大きなお世話です。

2016年の夏、同じ甲子園で大分高校の女子マネが、ちゃんとユニフォームを着て「試合前の守備練習」にサポート参加していたら、「グラウンドに入るな」と追い出されてしまった事件(現在はOKになった)なんかは、逆にまったく理解・共感できないし、どんどんやれば良いと思います。

でも「男女一緒に競技」の話をするなら、トランス女性が参加している一部の海外女子スポーツの試合で、いま何が起きているのか……その点もちゃんと見て欲しいんですよね。公平性や安全性の観点から、性別で適切にカテゴライズするのは当然の話でしょう。

ちなみに現在は「女子の甲子園」もあります。全国高等学校女子硬式野球選手権大会という全国大会。今年は各地から50チーム以上が参加し、決勝戦会場は2年前から甲子園球場です。もし「注目度が違うだろ」という話なら、そこで戦っている女子選手たちに対してメチャクチャ失礼ですからね。

それって自己紹介ですか?

注目度といえば、奇しくも本騒動と同じタイミングで、ある著名な女性新聞記者(色んな意味でとても有名)が

「日本のメディアは女子サッカーをあまり取り上げない。盛り上がらないのはジェンダーギャップのせいでは」

という主旨のSNS投稿をして、強烈な笑いを誘っておりました。

記者さんが何を以て「盛り上がっていない」と判断したのかは謎ですが、先日の女子サッカーW杯は、スウェーデン戦ほかNHKの地上波がしっかり生中継していたし、逆に男子より女子の方が注目されているスポーツなんて幾らでもあります。卓球やカーリング、バレーボールなんて特にそうでしょう。

スポーツへの注目度は、男女云々なんて単純な話ではなく、無論ジェンダーギャップなんて関係なく、各スポーツの特性や競技レベル、スター選手の有無などによって変わってくる話です。またコンテンツを作る際に「注目されるか」「数字が取れるか」を重視することは、マスメディアもビジネスである以上、ある程度は仕方のないこと。

しかもその記者さん、そもそもご自身がそのマスメディアに所属しているワケですから、投稿の内容以前に「え、あなたサイドの都合ですよね?」と返されて秒で終わってしまう話なんですよね。非常に残念。なぜこれを投稿した?

この手の話題って、条件反射でよく考えずに飛びついてしまう方が多いんですが、そういった軽率な行動が、結果的にジェンダーギャップの解消に真面目に取り組んでいる方々の足を、強烈に引っ張っているという側面も、いま一度ちゃんと認識された方が良いと思います。

ホントなぜ投稿した??

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。

 



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