タグの裏にはマジックで名前が書かれています(笑)
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。中村達也さんに続いて登場するのは、株式会社スピラーレの代表取締役社長、神藤光太郎さん。
神藤さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画の第9回目は、「フィルソン」のダブルマッキノージャケットです。
これは、中学2年くらいから着ています。当時、寒かったときに親父が「寒くない服がある」的に教えてくれて、買って貰ったんです。
親父はそこまで服好きという感じではなかったんですが、いま72歳なのでアメリカ製のデニムとかが入って来た時代をリアルに体験していた世代。なので、学生の頃はVANとかも着ていたようですし、デニムはリーバイス®をリジットで買って穿き込んでいくっていうのが根付いていましたね。親父が穿き込んだデニムを譲り受けたりもしました。
そんな親父が「アレはいいから」と説明してくれたので、カタログの写真を見せて貰って、通販で購入したんだと思います。
当時は既にゴールドウィンが正規輸入代理店だったはずです。
これを着て塾に通っていた名残なんですが、タグをめくると「神藤」って名前が書かれています(笑)。
その頃は、フィッティングの感覚は全くなく…。この質実剛健なアウトドアな雰囲気がすごく好きでしたし、赤のバッファローチェックも派手でしたが気にならずに、寒いときに下に色々着込めるからくらいの理由でオーバーサイズを選んで着ていました。
でも、サイズを確認したら38なので、いま着るとそこまで大きくは感じませんね。中学生の頃は結構大きく感じたのに…。
赤のバファローチェックは派手なので、そこまで頻繁には袖を通しませんが、前回のラルフローレンのジャケット同様、親父との思い出も刻まれていますし、14歳くらいから持っている服なので、今後も捨てることはないですね。
Photo:Naoto Otsubo
Edit:Ryutaro Yanaka
株式会社スピラーレ 代表取締役社長
クリエイティブディレクターとしてインポーター会社のメンズ部門を統括した実績をもとに、現在は新たなビジネスの準備に取り掛かる。イタリアのニットブランドを皮切りに、日本に魅力的なブランドを持ち込むべく、日夜奔走中。