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「セッション」で嫉妬の持つ痛みを感じたワケ
美人コンシェルジュのこじらせ映画評

2016.11.8
2016.11.8

嫉妬とは「妬み」のこと

FORZA STYLE読者のみなさま、こんにちわ。すっかり秋のにおいが街中を包み込む季節となりましたが・・・皆さまはいかがお過ごしですか? 秋というと、食欲の秋・スポーツの秋などいろいろな楽しみ方があると思いますが、今回は芸術の秋をテーマにお届けしたいと思います。

こじらせ女の私がご紹介する、芸術の秋にぴったりの恋人は「セッション」です。音楽がテーマのこの映画ですが、今まで見てきたどんな芸術作品よりもこじらせ女の私の心に深く刺さりました。なぜなら・・・。この映画、そんじょそこらのスリラー映画やホラー映画より怖くて、スプラッター映画より痛いんです。いや、痛すぎる。マジで血みどろです。全編を通して息をする余裕もないほどの緊張感が漂っていますが、キャッチコピーの「ラスト9分19秒 映画史が塗り替えられる」という言葉通り、ラストシーンが衝撃的過ぎて・・・。息をするのも忘れてのめりこんでしまいました。

ちなみに、原題は「WHIPLASH」というそうですが日本語に訳すと、“鞭打ち”。ジャズの名曲のタイトルなのですが、この映画を見て感じた痛みは、まさに鞭で打たれた時と同じ感覚だということでしょう。

今回紹介する恋人は「セッション」
©2013 WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

主人公は、念願の名門音楽学校に入学し、偉大なジャズドラマーになることを目指すニーマン。そんな彼を待ち受けていたのは、鬼教師として有名なフレッチャーでした。彼の指導は常軌を逸していて、ひたすら罵声を浴びせ暴力も厭わない。しかし、彼に才能を見出されたが故の指導だと信じていたニーマンは必死にフレッチャーに食らいつきます。そんなフレッチャーの指導は徐々に狂気じみたものになっていき、彼の罠にはまるように肉体的にも精神的にも蝕まれていくニーマン。家族や恋人、自分の人生さえも全てを捧げ、フレッチャーの目指す〝完璧”へと這い上がろうとするが・・・。というストーリーです。

全編に渡って二人の才能と狂気がぶつかり合う、まさに血みどろの闘いが描かれている作品です。(どう血みどろなのかは、是非映画をごらんください。)この映画は、私に「嫉妬の持つ痛み」を教えてくれました。最初、フレッチャーはニーマンに類まれなる才能や可能性を見出して、それを花開かせるために血みどろのスパルタ教育をしているんだろうと思っていましたが、途中からとてつもない違和感を感じ始め・・・。

©2013 WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

それは、フレッチャーの行動がすべて、ニーマンの持つ才能や若さへの嫉妬からくるものなのではないか? と思ってしまったから。開花させるのではなく、逆に、その芽を潰したかった故の行動なのではないかと気づいた瞬間、体中が震え上がってしまいました。偉大なフレッチャーがなぜただの学生に嫉妬なんてするのか? とも思いました。でも、気づいてしまったんです。誰にだって嫉妬という感情は存在するもので、それはとてつもない負のエネルギーを放つこと。そして、知らないうちに蝕まれてしまうものだと。

しかし、そんな嫉妬には必ず痛みが伴うと思います。誰かを羨むということは、それと同時に自分がその人よりも劣っていると実感すること。それによって、どんどん自分を追いつめてしまいます。フレッチャーは、自分の嫉妬から来る劣等感や嫌悪感みたいなものを、ニーマンにぶつけていたのでしょう。だからこそ、偉大なはずの先生の姿が徐々に痛々しく見えてしまったというか・・・。それが私の感じた違和感の原因なのかもしれません。嫉妬を人にぶつければぶつけるほど、フレッチャーの中にある痛みも同じように大きくなる。その痛みが伴うことで、彼の行動はどんどんエスカレートしていったのではないでしょうか。

私は学生時代、部活でダンスをしていました。ちょっとチャラそうに見られがちなダンスの世界、実はかなり実力主義でシビア。大人数で踊る群舞の時の立ち位置で、自分が今、どれくらいの実力があるのか、更に、その集団の中で自分がどんな立ち位置であるのかまでも如実にわかってしまういます。ある時、どうしても苦手なジャンルのダンスがありました。もともとのセンスが無かったのもありますが、何度やってもうまくいかない。そんな葛藤の中で、決まった私の立ち位置は、案の定一番後ろ。

しかも、センターはまだ入部して間もない後輩でした。発表直後、私はあまりの苛立ちでいてもたってもいられなくなり、お手洗いに駆け込みました。なんであの後輩に負けたんだ? なんで私だけこんな想いをしなくちゃいけないんだ? とうずくまって歯を食いしばりながら涙をこらえていました。

そして、ふと顔を上げた瞬間、私はあまりの驚きに立ちすくんでしまったんです。それは、目の前の鏡に映った自分の顔が、あまりにも恐ろしかったから。そう、嫉妬に狂った私の顔は、今までに見たことがないほど酷い顔だったんです。その顔を見て、まさにWHIPLASH=鞭に打たれたような衝撃に襲われました。

今思うと、この映画を見て感じた痛みと同じものを、この時の私は感じていたのでしょう。そして、気付きました。嫉妬は、自分を狂わせるということを。それだけでなく、どんどん自分の痛みになって蝕ばまれていってしまうものだと。そう、あの時の私の顔は、「セッション」で見たフレッチャーの顔に限りなく近かったのです。

FORZA STYLE読者のみなさんも、普段はスマートにふるまっているからこそ、嫉妬という感情が生まれた時に上手くコントロール出来なくなり、取り乱してしまうことがあるかもしれません。そんな時は、鏡の中にいる自分と向き合ってみてください。きっと、そこにいる自分は信じられないほどに酷い表情をしているはずだから。私は、いつもスマートで紳士な皆さんの表情が好きだから、そんな顔じゃなくて素敵なイケフォー・スマイルを見ていたい。

みなさんも自分の顔に驚き、二度とこんな表情をしたくないと思うはず。そして、さっきまで心の中にあった自分の嫉妬という感情の恐ろしさに気付くのではないでしょうか。そう、どんな時も自分の感情に気付いて、そこから自分を助け出すことが出来るのは、他でもない自分しかいないのだということも、この作品を通じて知りました。

それは、ニーマンの表情を見ていて感じたこと。映画全編を通してニーマンの表情は厳しかったり苦しかったりしますが、どんなに血みどろになろうともフレッチャーのように恐ろしい顔をすることはありませんでした。これは、ニーマンがフレッチャーに対して嫉妬のような感情を持つことが無かったから。

実は、彼が戦っていたのはフレッチャーではなく、その向こう側にいる自分だったのかもしれません。自分の中にある限界や弱さに打ち勝つことでフレッチャーに認めてもらおうと自分自身と戦い続けていたから。だからこそ、フレッチャーの嫉妬の持つ強いパワーに屈することなく、立ち向うことが出来たのかもしれません。

©2013 WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

さらにニーマンはフレッチャーからの厳しい仕打ちだけでなく、家庭関係や彼女とのすれ違いなどさまざまの問題も抱えていますが、そんな悩みや葛藤を打ち消すかのように、ドラムの練習に打ち込み狂っていきます。そんな彼の姿を見ても思ったのですが、何かに狂ったように挑んでいる人ってとてつもないエネルギーを放っていて、実はとても魅力的だったりしますよね。

さらに、自分には出来ないこと、自分には無いものを持っているような気がして、惹きつけられてしまうのかもしれません。だからこそ、往年の芸術家ってみんな、驚くくらいモテる人が多かったような。奥さんが何人も変わったり、さらに愛人までいたり。ただでさえ芸術でパワーを使い果たしてしまいそうなのにまだ残っているのか・・・。と尊敬しちゃいますが、その強いパワーが人を惹きつけて止まないのかもしれませんね。

私もそれくらい何かに狂ってみたいものですが、まぁ、こじらせ女の私には無縁なこと・・・。いや、違った。私、映画に狂ってるってよく言われるんだった笑。ちなみに、監督のデイミアン・チャゼルは新進気鋭の期待の星として今、世界中を騒がせています。なんと29歳でこの作品を撮ったとのこと! 実際に自分がドラマーだった経験を活かしたそうで、その時に感じた音楽へのフラストレーションや苦しさをぶつけたであろうこの作品を撮って、音楽と対峙することにもう疲れたんじゃないかと思っていましたが・・・。

彼の次回作は、なんミュージカル映画。またしても、果敢に音楽に挑んでいます。「La La Land」(原題・17年日本公開予定)というタイトルで王道のラブストーリーを描くミュージカル映画の今作では、音楽への愛や幸せを真っ向から描いているそうです。すでに9月に開催されたトロント映画祭で観客賞を受賞するなど絶賛されているらしい。(私、実はミュージカル映画が一番好きなのでこの映画が公開されるまで、今まで以上に映画に狂うことが決定的となりました。)

それにしても、この人の才能って本当にすごい。音楽というものを、苦しさと幸せ、そして嫉妬と愛という両極端な面から描いてしまうことが出来るのですから。彼こそ、往年の名監督たちからフレッチャーのような嫉妬をぶつけられて血みどろになっちゃうんじゃないか!? と勝手に心配になってしまいました・・・。

それではみなさま、今日も素敵な1日をお過ごしください♪

Photo:Riki Kashiwabara
Text:Natsuko Hidaka

Edit:栗原P

「セッション コレクターズ・エディション」
http://session.gaga.ne.jp/
価格:3800円(税抜)
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
販売元:ギャガ
http://www.gaga.co.jp/cinema_items/detail/1300/lineup

【撮影協力】
ユーロスペース
渋谷区円山町1‐5 KINOHAUS 3F
03-3461-0211
http://www.eurospace.co.jp/

【ひだか・なつこ】
小学校から大学までの16年間を附属の女子校で過ごした“こじらせ女”。(幼稚園もほぼ女子校だったので、それもカウントすると約20年間)幼い頃に家族の影響でエンターテイメントに目覚る。中学・高校をミュージカルに、大学生活を映画館でのアルバイトに捧げ、海外ドラマ廃人も経験する。映画やエンターテイメントとより多くの人を結びつけたいという想いから、放送局に入社。今でも毎週末は映画館で過ごし、これまで見た作品は約4000本。そんな映画への愛をこじらせ、コンシェルジュとして今回の連載を担当する。なつこのインスタグラムはこちら

 

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