当時、日本では誰もバリ島なんて知らなかったから、一瞬キョトンとしたんですけど、スティーブンが「あそこはヒッピーの聖地であり、癒されるところだから、そこに1年くらいいて癒されて来い」って。要は「鬱の状態で旅してる場合じゃない」ってことだったんでしょうね。
それでそこから貨物船に乗って、かなり大変な目にあって(そこは省きますが笑)、ジャカルタからはオールナイトの冷房が効きすぎて異様に寒いバスに乗って。バスに乗ってるのが全部ヒッピーで(笑)。
しかも運転手の好きなインドネシアの歌謡曲をすごいうるさい大音響で聞かされながら一晩中ジャングルの中を走る。
途中で1回ジャングルの中にある飯屋に寄って、そこでわけのわからないもの食べて、それで今度はフェリーに乗って、それでもまだ周囲は暗くて。
しばらくしたら向こうの方に島の輪郭が見えてきて、それがバリ島でした。
上陸してからバスでちょっと行くと、バリ特有のヒンドゥー教の門があるんです。
そこでバスが停まってみんな降ろされる。夜中の3時か4時くらいだったかな。
そうすると白装束の僧侶と美しく着飾った舞踊ダンサー(みんな綺麗でしたね)が4人くらい来て旅人1人1人に祝福の聖水をかけてくれて、耳にフランジパニの花を付けてくれる。お坊さんは僕らのコメカミに米をつけて祈ってくれる。
「これで金取られるんだろうな」と思って聞いたら「No, no. welcome to Bali」って言って笑顔でどこかへ行ってしまいました。
今はこういうウェルカムはやってないと思いますけど、これを体験して「ここは本当に素晴らしいところだな」って感激しましたね。
バリでは最初クタに行きました。今のクタとは全然違って、まだ泥道でレストランが5軒くらいあって、あとはロスメンっていうゲストハウスっていうか民宿みたいなのがあってね。
歩いてるのは全員ヒッピーなんです。通りすがりに「ピース」「ピース」みたいな感じですぐに友達になれて。そういうところだったんですよ。
バリ島に1年いて家も建てて。ウブドに小さい家をね。でも、ビザが切れちゃって、再発行は出来ないって言われて。どうせまたバリに帰ってくるからバリから近いオーストラリアへ行こうかなって。オーストラリアに行きました。ちょっとバイトしてお金貯めるつもりが、気が付いたら16年経ってたんですよ(笑)。
干場:オーストラリアの方が居心地が良かったんですか。
ロバート:ベースとしては良かったですね。もちろんそこからバリに通うのもすごい楽ですし、バリにも年に3、4回は行ってましたし。
干場:それはいくつの時ですか。
ロバート:それが大学卒業してすぐですから、23、24歳ですね。
干場:23、24歳でそういう放浪の旅に出てたんですね。
ロバート:はい。その前に高校卒業までに日本を随分旅して回りました。休みをうまく利用して。
最初は中3の時ですね。僕はインターナショナル・スクールへ行っていて、9月から新学年なので夏休みってパラダイスで、宿題もないし、2〜3ヶ月と長いんですよね。初めて友達と遠出しようってなって、北海道にヒッチハイクに行くことにしたんです。