瑠璃花さんは息子の泣き声を合図に寝室へ舞い戻り、イチから寝かしつけのやり直しをした。
「夫は笑って『また呼ばれちゃったね~』と言うくらい。たまにはあなたが行ってよ!と怒ってもムダなんです。不慣れな夫が行っても逆効果で余計にひどく泣かれてしまうんです」
8時睡眠の7時起床、といった教科書どおりの睡眠など、瑠璃花さんの息子はしたことがない。自分が睡眠不足になるつらさだけでなく、気分的にいつも何かに追い立てられているようで苦しかった、と瑠璃花さん。
「かかりつけ医に相談すると、決まって『お散歩していますか? 朝から適度にお日様を浴びさせて、児童館で遊ばせるのもいいですよ。日中に活動させないと寝ないのは当たり前ですよ』と言われました。
そんなことは知っているし、言われなくても片っ端から全部やっているのに…」
医師や保健師などから子供が寝ないことへの助言をもらうたびに「私のやり方が悪いんだ」と瑠璃花さんは自分を責めた。
「私の育児のやり方がいけないんだし、私がサボっているんだと思い始めました。それで、何かに取りつかれたように息子を遊ばせたり、お散歩に連れていったり、刺激になりそうなことをしなくちゃ!と頑張ってしまったんです」
ところが、何をしても「息子が寝ない」という状況は変わらなく、周囲は言い方を変えてきた。
「『あんまりお母さんが頑張り過ぎると、その圧みたいなものが赤ちゃんに伝わって余計に寝なくなっているのかも。もっとゆったり構えていなさい』と、今度はそう言われるんです。もうどうすれば息子は寝てくれるのか...」
誰からも本当に参考になる助言や励ましをもらえず、追い詰められた瑠璃花さん。しかし、次に瑠璃花さんを苦しめたのは、夫の母親からの心ない言葉だった。
周囲のアドバイスによる瑠璃子さんのストレスと「寝ない」息子のその後については、後編にて詳報する。
取材/文 中小林亜紀
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