ここ数年、コロナの影に潜んでいた手足口病が猛威を振るっている。感染状況は春先からずっと高止まりを続けており、1医療機関あたり全国平均7名以上。NHKの専用サイトで確認すると前週比アップしている地域が多い。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「手足口病の診断は検査キットがなく、医師が見た目の症状で判断するもの。ですから、医師によって診断がまちまちという問題があるようです。熱などの症状が落ち着けば、登園できる保育園や幼稚園もあり、その分広がりやすいのも特徴です」。
厚生労働省のHPによると、手足口病の感染経路は①飛沫感染、②接触感染、③糞口感染の3種類。集団生活をしている子どもたちの間で感染が広がりやすいのもうなずける。
「症状も人によって差が大きく、高熱を出すケースから、症状なしでケロッとしているケースまでさまざま。だからこそ、親のモラルや価値観が問われるのだと思います」。
実際に手足口病にお子さんが感染し、症状が重く、大変だったという女性から話を聞いた。
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石浦保奈美さん(仮名・38歳)は、2歳10カ月の子どもを持つワーママだ。夫婦ともどもフルタイム。子どもを保育園に預けている時間は、朝8時から18時までの約10時間と比較的長い。
「保育園の掲示板に『2歳児クラスで手足口病が出ました』って張り紙が貼ってあったんです。ついにうちの保育園にも来たか!と思って、やっぱり身構えました」。
手足口病はヘルパンギーナ、プール熱と並び、夏風邪として知られている。平塚氏はこう話す。
「手足口病は手のひらや足の裏、口の中など、痛みを伴う発疹が出るのが特徴。ひどいと食事を摂るのもままならないこともあるそう。高熱が出ることもある上、ウイルスが数種類あるので、何度も感染します。大人が罹患するとひどくなるとの説もありますね」。
その時点で保奈美さんのお子さんには症状が一切なく、元気に過ごしていたという。
「お休みの子もさほど多くなかったですし、そこまで感染が広がってないのかなと楽観視していました。でも翌日の迎えの時だったかな。娘と仲良しのお友達A子ちゃんが一緒に迎えてくれたのですが…」。
A子ちゃんの手には、明らかに発疹があったと話す。
「背筋が凍りつきました。手足口病じゃん!って」。
保奈美さんは、すぐさま保育士に声をかけたという。
ーA子ちゃんは手足口病だったんですか?
「先生はにっこり笑顔で笑うだけ。やんわりお茶を濁されてしまいました。でも曖昧にしておけなくて、あんなに発疹が出ているのに、登園していいんですか?と前のめりに聞いてしまいました。私の圧に先生もびっくりしていましたが、熱がなくて、全身状態が良ければお預かりできるんですよと教えてくれました。ちょっとびっくりしましたね」。
園によっても異なるが、手足口病は発疹が治まること=登園可能という明確な判断基準はない。便からのウイルスは、2~4週間排出されるといわれており、その間ずっと登園禁止は非現実的だ。
「慌ててネットでいろいろ調べました。やっぱり触ってもうつるって書いてあったから、家に帰ってすぐにシャワーを浴びさせて、全身をくまなく洗って…とできる限りのことをしたつもりでしたが、案の定、翌々日の朝、発熱。うっすらと発疹が出てきてしまったんです」。
保奈美さんのお子さんは、40℃近くまで発熱し、発疹が手足だけでなく、口にまで広がり、食事をするのも嫌がるほどになってしまったという。