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あなたも使っている?「なるほどですね」という気持ちの悪い「丁寧語」はなぜ生み出されたのか?

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

先日、SNSでこんな投稿が話題となっていました。

「採用面接で『うん』と返事する人は100%採用しない。『なるほど』を使う人も基本的に採用しない(要旨)」

40万件以上閲覧されたこの投稿には、1800以上の「いいね」と「その通りだ」とか「わかる!」みたいなコメントが大量に寄せられていたんですが……

あ、確かに「うん」はダメですよね。「オマエは俺の友達かよ」としか思わないし、年齢差とか関係なく、対外ビジネスの場で使える相槌ではありません。

ましてや面接中のやり取りで「うん」なんて論外でしょう。この人、周囲に注意してくれる友人がいないのかな、指摘してもらえない人物なのかな、じゃあナシで。短時間で判断せざるを得ない面接では、こうジャッジされても仕方がないのですが……あれ、ちょっと待って。

「なるほど」は別に失礼な言葉じゃないですよね。恐る恐る検索してみたんですが、あろうことか、ビジネス用語を解説する記事にも「失礼に当たる」なんてシレっと書かれていました。勝手なルールをクリエイトしないで欲しい。

確かに敬語ではないし、使い方が難しい言葉ではあります。例えば、

「ほう、なるほど」(ふんぞり返って)

「……なるほど」(アゴに手を添えて)

みたいに使われたら、私だって「なんか凄いな、この人。不採用」になります。でもちゃんと相手への敬意を滲ませ、はっと息を吸い、独り言のような温度感を滲ませながら納得顔でつぶやく

「なるほど……勉強になります」

は、全然失礼じゃないですよ。むしろ伝達力や文脈の読み取り、豊かな表現が求められるテクニカルな言葉である「なるほど」を、相手に不快感を与えずに使いこなせる人物なんだと、がぜん興味がわきます。使い手を選ぶワードなんですよ。

なるほどデスネー、確かにデスネー

万人が使いこなせるフレーズではない、でも決して失礼な言葉ではないのに「失礼に当たる」なんて言われてしまうと、やがて本当に失礼な表現に認定されかねません。せめて「失礼な言葉遣いではありませんが、使い方が難しい言葉でもあるで、自信のない人は使用を避けましょう」くらいにして欲しいのです。

や、オマエはなぜこんな些細なネタに噛みつくのか、と疑問に思われるかもしれませんが、こういうのって広義の「言葉狩り」なんですね。そもそも

「確かにあなたの言う通りで、納得しました」

をたった四文字で伝えられる「なるほど」は、非常に高性能な日本語表現であり、その人のコミュニケーション能力を垣間見られる貴重な語彙です。そう簡単に見殺しにはできません。

また、これも日本人の多くが誤解しがちなんですが、言葉は文字数が多い方が丁寧なんだ、簡潔な言い回しは失礼なんだ、という誤った気遣いから、電話オペレータの恐ろしく長いトークマニュアルが生みだされたりします。そんな「短い表現への恐れ」が行き過ぎた結果、

「なるほどデスネ」

なんていう謎の丁寧語(?)が生み出されたりするのです。若いビジネスマンとかよく使っていますよね。せっかくのコミュニケーション能力を低下させかねない言葉使いなので、やめた方が良いのでは。

とは言え、言葉は生き物、常に変化していくものですから、いつの日か「なるほどデスネ」が正しい日本語になってしまうかもしれません。言葉は使う人が変えていく道具から、その時は諦めますけど……。

冒頭のSNS投稿に寄せられた賛同コメントの一つに「『うん』『なるほど』だけじゃなく『確かに』も失礼な相槌に追加したい」なんてのもありましたが、流石にそれは勘弁して欲しいです。ただでさえ長い日本語を、これ以上長くしないでおくれ。そのうち

「確かにデスネー」

とか言い出しかねない、ホント勘弁して欲しい。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。

 



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