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「もうフツーの部活では絶対に勝てない」コーチの外注進む他校に惨敗。公立校教師の心が「生徒より早く、とっくに折れている理由」

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夏休みも猛暑の影響で部活動がままならない、という学生も多いようだ。中学生の部活動については、教員の働き方改革が急がれており、その一環として休日の部活動の運営拠点を地域のクラブチームなどに移行する動きが活発化している。

達成時期は令和7年とされるこの課題について、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう指摘する。

「部活動の地域移行は、自治体ごとに進捗が異なるのが現状です。中には積極的にクラブチームに移行し、地域の複数の中学校から志・実力のある子を集めて精鋭化しているケースも。

地域移行が進んだ地域では、休日の練習時間が確保できるほか専門家から指導を受けられる可能性が高まり、単なる『部活動チーム』は大会やコンクールで大きな実力差をつけられることも考えられます。

また、サポートや費用面など保護者の負担増のほか、部活動のみ参加する子のモチベーション低下、クラブチームの勝利至上主義に繋がるのでは、といった懸念もありますよね」

部活の地域移行問題に直面している中学生の保護者の方にお話を伺うべく取材を進めていると、「吹奏楽部で夏の大会を終えたばかりの息子がいる」という女性から話を聞く機会を得た。

・・・・・・・・・・・・・・・

「うちの息子は小学5年の頃から、ある金管楽器を習っています。中学は地元の公立に入りました。今、1年生です。この春、はりきって吹奏楽部に入部しました」

こう話し始めたのは49歳の近野里奈子さん(仮名)。大学2年 高校3年、中学1年の3人の子を持つ自営業者だ。

「音楽好きの夫の影響で、子どもたちは3人とも吹奏楽部。現在中1の息子が通う中学はお兄ちゃんたちの母校ですが、かつては吹奏楽部が強いことで有名な中学だったんです」

地区のコンテストで常勝校だったというこの中学校。しかし、はりきって入部した三男の期待は、ほどなく木っ端みじんとなった。

「お兄ちゃんたちを指導してくれた顧問の先生はとっくに変わっていました。でも、顧問の先生が変わったことだけが弱くなった理由ではなさそうでした」

上の子たちと年の離れた三男が今年中学に入った里奈子さんは、中学校の部活動が縮小されつつある経緯をあまり理解していなかったという。

「部活の地域移行というのはニュースなどで目にしたことはあるのですが、詳しくは知りませんでした。日曜日や朝の練習がなくなったことも入学するまで知らなかったんですよね」

同県内ながら、同じ地区大会で競合する近隣の市では、行政が積極的に部活動の地域移行を促しているそうだ。一方、自治体の規模は近隣市より大きいながら、里奈子さんが住む地域ではなかなか地域移行が進まない。

「顧問の先生曰く、来年度からは土曜日の練習もいっさいできなくなるといいます。すでに朝練や日曜練習は禁止ですが、土曜日もダメとなれば、さらに弱体化するのはあたりまえですよね」

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楽器経験者の息子は、1年生にして顧問のお眼鏡に適い、先ごろ行われた地区の大会に出場した。

「入部したときから『うちの部、ヘタかも。やる気ねーし』と息子は言っていましたが、息子の見立てどおり、先日の大会の結果は銅賞でした」

銅賞と聞き、オリンピックの銅メダルを連想した記者は、3番手レベルで「ヘタ」とは、いささか謙遜が過ぎるのではないか、と思わず疑問を呈した。

「吹奏楽の大会では、銅賞は『参加賞』です。参加したすべてのチームは金か銀か銅に振り分けられます。金賞でも、次の県大会に行ける金と行けない金の2種類があり、行けない金は『ダメ金』という屈辱的な通称で呼ばれているんですよ」

里奈子さんの長男がこの部に所属していた頃は、「ダメ金」を獲るとみんなで悔し泣きしたという。

「今や、ダメ金でさえ高嶺の花だというんですから、変われば変わるものです」

息子は銅賞という結果があまりに悔しく、帰宅して報告したとたんむせび泣いたそうだ。以前はエリア内の中学校だけが参加していた大会にクラブチームも出場できるようになったため、練習量が限られる「部活」はこうしたチームに太刀打ちできない。

「金賞は軒並み隣市の中学とクラブチームが獲っていったそうです。なんでも、専門の講師が指導するクラブチームに参加する子が増えたせいで部活動のレベルまで引き上げられているようで、地域移行していない地域の中学校との実力差がはっきりしてしまったようです」

大会の結果が発表されたあと、部活の顧問教諭から保護者に「相談したいことがある」旨の招集メールが届いた。

里奈子さんがそのミーティングに参加してみると、顧問からの呼びかけや保護者間の意見の食い違いで場は大混乱したという。部活動の地域移行の課題が浮き彫りとなったこのミーティングの内容に、部活格差が存在していた。次回では深く探っていく。

取材/文:中小林亜紀

PHOTO:Getty Images



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