「息子も嫁も『ちょっとだけだよ』と言って結局見せるんです。孫とおしゃべりしたい私や夫は、動画を何とか会話に繋げられないかと思い、『なに見てんの?』と声をかけたりして……」
しかし、返ってきた返事は悲しいほどそっけないものだった。
「ばあばも観れば?と。それで私が上の4歳の孫が手にしたスマホの画面を覗き込もうとすると『ばあばは自分のやつで観なさい』とぴしゃり」
4歳の孫は、一体どんな動画を観ているのか。
「自分も持っているという人形の遊び方っていうか、他の子供がその人形で着せ替えやおままごとをして遊んでいる様子を観てるっていうんです。ちょっと意味がわからなかったですけど」
この動画に対し、次男は「こんな遊び方があるんだっていう発見があるらしいよ」と言い訳するように話した。
「でも、肝心の人形はずっとボストンバッグの中です。その動画を参考に、自分のおままごとを楽しむならわかるのですが、他人がままごとするのを観て何が楽しいんでしょう」
郁美さんには理解できないことばかりだ。
「下の孫は2歳なんですけど、こちらは『知育動画』っていうんですか?そういうのを観てると嫁が言っていましたね。昆虫が好きらしいのですが、虫の名前をいつのまにか覚えたりして、動画の凄さを実感してる、と嫁は動画を正当化してました」
ところがこちらの孫も、昆虫に興味があると言いつつ、郁美さんの家の庭にたくさんいる昆虫には目もくれなかった。
「虫が好きでも触るのは好きじゃないって人はいるかもしれないのでわかりませんが、私が『動画で観た虫がいるかどうか、朝の涼しい時間に外で探検してごらん?』と言うと孫は首を左右に振りました、私の方を一瞥もせずに」
魂を吸い取られたかのようにスマホとイヤホンに夢中の孫たち。そんな彼らが起こした昨年の盆帰省中の驚きの行動は、後編でお伝えする。
取材・文:中小林亜紀