「宝くじやスポーツくじというのでしょうか。一時期ああいうものにもハマっていました。
私が妊娠中のことです。うちの両親と食事をしている時、母が『最近やたらと2のゾロ目ばかり見るから、宝くじでも買うと良いかも』などと冗談を言ったことがあったのですが…」
その話を聞いた夫は、ちょうど誕生日が近かった愛美さんの母に数字を選んで買うタイプの宝くじをプレゼントしたという。
「私はその時母に服か何かを買ってあげたんですが、夫が『これは俺からだから一緒に渡してよ、ドキドキがあっていいだろ?』と言って」
義母のために買ったそのくじは大外れしたものの、実はこの時に夫は運試しで自分用にもくじを買っていたのだそうだ。
そして、そこから転がり落ちるように数字を選んで買うくじがやめられなくなってしまった。
「夫の口から再び『負けた分を取り返したくなる』というギャンブルが好きだった頃に聞いたことのあるセリフを聞いた時はゾッとしました」
一度でも買いそびれると、万が一自分が買っている数字パターンが抽選会で出た時にあまりに悔しい、と夫は言った。
買いそびれたときに自分の数字が当たる可能性を考えると悔しくてやめられないという夫。
ひと口200円をたった2口、週に2回買ってるだけじゃないかと唇を尖らせる夫に対し、愛美さんは危機感を隠さなかった。
「私は恐ろしくなりました。もし夫の言うとおりであれば、月に使う金額は確かに3000円ちょっとです。小遣いの範囲内で遊ぶくらいで目くじら立てるなんて、と思われるかもしれません。
でも、私は昔の彼を知っているので、早めに手を打ったんです」
妊娠中だった愛美さんは、もうすぐ生まれてくる子供の良いお父さんになってほしいから、依存的な行動はやめてほしいと懇願した。
「夫は不服そうでした。病人みたいに言うなよ、とむくれていましたね。でも、小声で『まあ、昔の俺は病気みたいなもんだったけどな』と呟いたので、自覚があるんですよね、きっと」
「夫はそこからはギャンブルにも宝くじにも近寄らなかったようです。会社で昇進があって忙しかったのも良かったのかなと思います。
やらない期間が長くなってきたので、このまま行ってほしいと心から祈ってました」
宝くじに溺れつつあった夫をすんでの所で救った愛美さん。ところが、次に夫のハートに火をつけてしまったのがクレーンゲームだったのである。