明治安田生命が昨年実施した健康に関するアンケートによると、「健康づくり」に「物価高の影響がある」と回答した人は全体の約6割に上り、影響があることの内容については、「栄養バランスを考慮した食材・食品を買えない (68.7%)」 「サプリメント等の購入にお金をかけられない(31.7%)」との回答が目立った。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、「物価高で健康増進活動にお金をかけづらい世の中になったとはいえ、医薬品やサプリメントにお金をかける人が多い実態に変わりはない」と指摘する。
「この調査で興味深い点は、物価高でサプリメント等の購入にお金をかけられなくなったと答えている人が多い一方で、健康増進のために何にお金をかけている?との問いに対しての最多回答がサプリメントだったこと。
健康志向の強い方のサプリメントやダイエット商品に対するニーズは相変わらず高い模様。ただ、これらはやみくもに使用するのではなく、医師や薬剤師、そしてお財布ともしっかりと相談しながら賢く使うことをおすすめしますよ」
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内臓脂肪減少薬は生活習慣病予備軍の救世主となるのか。発売以来、テレビコマーシャルやSNSで話題となっている日本唯一の内臓脂肪減少薬のユーザーに、そのメリット・デメリットなどを取材をしていくと、夫がこの商品のユーザーであるという女性から話を聞くことができた。
「うちの夫は今注目されている内臓脂肪薬をいち早く購入しました。ネットで効果を報告している人もいるし、周りに迷惑をかけずに継続できる人には良い薬なのかもしれません。
でも、うちの夫はというと、4月から始めてすでに飽きている感じ。1日3回飲むところをサボるようになっているため、購入周期が狂ってきています。これまでにも続かないダイエットにさんざん散財してきて、いろいろ迷惑も被って、私はもううんざりですね」
こう語るのは48歳のパート従業員交野真里子さん(仮名)。夫は公的機関に勤務する54歳である。
「この薬はドラッグストアで購入できるのですが、専門の薬剤師がいるお店でしか買えません。しかも、購入条件を満たしているかどうか確認してからようやく買うことができます」
真里子さんの夫は以前からお腹まわりに贅肉がつきやすく、常にズボンがきつい状態だという。
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「腕や足は年々筋肉が落ちてきているので、お腹に合わせてズボンを買うと腿のあたりがダボつく感じ。血糖値や中性脂肪も高めなので、生活習慣病が出てくるのも時間の問題だと本人は言っています」
太りがちな体質・生活習慣を続けてきた夫は、これまでさまざまなダイエットに励んできた。しかし、一つ一つのダイエットがなかなか長続きしない。
「〇〇ダイエット法にすぐ飛びついても、勝手にブームを終わらせるだけなら別に文句はないんです。私や家計まで巻き込むので迷惑してるんですよ」
夫は10年ほど前から駅近のジムに会員登録して毎月の会費を払っているが、月に一度ほどしか行かないこともあるという。会費だけでも、10年で浪費したのはざっと130万円。
「行かないなら解約してと言っているのですが、今忙しいの知ってるだろ?とか言い訳ばかり。いつか行く、と言って10年ですよ…行く行く詐欺じゃないですか、これ」
また日常の食生活においても、真里子さんはこれまで夫がハマった数々のダイエットブームに翻弄されてきた。たとえば「寒天ダイエット」。
「ご飯を炊く時でもコーヒーを飲む時でも、寒天を必ず入れるというもので、夫は寒天寒天と大騒ぎしていました。でも、夫みたいなミーハーダイエッターは世の中にごまんといるようで、テレビでその情報が流れるやいなや、スーパーから寒天が消えたんです。ネットでも価格が高騰しました」
夫は値段が高騰した寒天など買えないといい、こまめにスーパーを覗くよう真里子さんに協力を要請。
「なかったと報告するとがっかりするので、用事もないのにスーパーの前を通りかかると覗いたりして面倒でしたが、その頃はまだダイエットにハマり出したばかりだったので、夫が頑張るなら応援しようという気持ちでした」
ところが、メーカーが寒天の製造量を増やし価格と供給量が安定した頃には、寒天ダイエットブームも収束。折悪く、夫はこの時期に寒天をネットで箱買いした。
「大人買い直後に夫の中で寒天ダイエットブームは去りました。大量に残った寒天を無理やり使ったので、私はすっかり寒天嫌いになってしまいましたね」
その後も、効果を実感する前にさまざまなダイエットに手を出してはやめる、をくり返してきた夫。お腹の脂肪は蓄積する一方だ。
「地下鉄で、会社のある駅の3区間くらい前で降りてウォーキングをしていた時期もありましたが、すぐに飽きてしまうし、運動頑張った!と言ってその分たくさん食べるので、一向にダイエットは成功しません」
地道な努力を継続できない夫は、次から次に新手のダイエットに手を出した。朝バナナ、ホットトマトジュース、もちろんサプリメントや健康食品も覚えていないほどあれこれ買って試してきた。
「うちの食品庫は夫が挫折した健康食品やサプリのストックで溢れています。これ総額いくらなんだろうと思うと情けなくて。もしかすると、そのお金で家族旅行の回数を増やせたかもしれません」
このように夫のダイエットブーム遍歴にほとほと嫌気が差している妻の気持ちとは裏腹に、夫が満を持して導入したのが内臓脂肪減少薬である。
「夫が買ってきた時は『またか、懲りない奴だな』と思った程度ですが、この薬については、私がこれまでに味わったことのないタイプの迷惑を被っています」
「この薬、ちゃんと実証実験で一定の効果が証明されているようなので、自分で自分の面倒が見られる人には凄くいいのかもしれません」
腹囲やBMI(体格指数)値も基準の範囲内だった真里子さんの夫は、条件をクリアし薬を購入することができた。
「お腹が太っているけど、まだ高血圧症や糖尿病の診断は受けていないという、夫のような人のための薬みたいです」
夫は購入の条件として指示されていた直近1か月の生活習慣改善のための記録も丁寧に作成し、やる気満々だった。いつも最初のうちだけ情熱が凄い夫。このくらいは真里子さんの想定の範囲内だった。
「もう何ダイエットを始めても、長続きするとは思っていないんです。最初だけだから」
妻は夫のダイエットに飽き飽きしているようだが、肝心の内臓脂肪減少薬の効果はいかに?
「夫の場合、今のところお腹周りにあまり変化はありません。体重も少しずつは減っていますが、劇的ということはないですね。運動などの対策を並行して行いつつ、使用方法を守って長く継続していかなければ本当の効果はわからないといったところなんじゃないでしょうか」
そんなことより…と真里子さんは急に思い立ったように話題を変えた。
「ただ、お尻から油が漏れたり、下痢になったり、ガスのつもりで発したらお漏らし、こともあるようです。個人差が大きいと言いますが、そのデメリットが怖くてこの薬に手を出さない人もいるらしいですね」
真里子さんの夫は、てきめんにこのデメリットが現われてしまったのだそう。
「少し漏れるかもしれないということで、下着に貼り付ける生理用品みたいなパッドをネットで買ったんですよ、あの人」