好きな人の心をつかむにはまず胃袋から。そんな考え方があるほど、食は人と人を強く結びつける重要なもの。しかし、世の夫婦・カップルの中には、お互いに食の好みが全く違うという方々も多数おられることだろう。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、食の嗜好の違いが家庭生活で生み出し得るストレスについてこう指摘する。
「嗜好の違う相手との食事の献立決めや支度にストレスを感じる人は少なくありません。こうした相手と外食する時、店を決めるのに一苦労した経験がある人も多いのではないでしょうか。
これが毎日の生活になってくると、いつしか大きな不満となりかねませんから、取り返しがつかなくなる前に、自分が嫌いであっても相手の好きなものを食べられる機会を増やすなど、工夫や努力をしてみることも必要かもしれませんね」
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今回話を伺ったのは、向坂あゆなさん(仮名)。33歳の会社員である。この女性の不倫の顛末と現況までをレポートする。
「夫とは食の好みが全く違いましたが、大学1年から7年つき合った人なので、それにも慣れているつもりでした。結婚前は、好物は自分の家族や友達と食べれば済みましたし、それ以上に『長年付き合ったこの人と結婚するんだ』という思いを貫くことが大事だった気がします」
しかし、結婚した2人は食の価値観が違うせいで、しばしば衝突するようになる。
「夫は嫌いなものが多いんです。まず生ものが食べられませんし、エスニック料理も大嫌いで、お店の前を通ってココナッツやナンプラーの香りなんかがしてくると顔をしかめていましたね。
それに、食にお金をかけることを嫌がりました。高いお肉など買おうものなら、しつこくネチネチ責められて……」
あゆなさんはストレスを感じると食への欲求が高まるタイプ。疲れ果てた週末に大好きなお寿司を食べに行きたいが、結婚後は夫の食べられるものが少ない寿司屋にはなかなか足が向かなかった。
「遠慮しないで食べればいいじゃんと言われるのですが、夫は酢飯が無理なので、回転寿司に行っても麺類とかポテトばかり食べているんです。そんな人の前で、自分だけがつがつ食べられないですよ」
二人は、つき合うきっかけにもなったという「音楽」だけが唯一共通の趣味で、それ以外は価値観や好みがかなり異なるらしい。