30代の夫にテレビのリモコンを投げつけられた20代の妻が「足が腫れた」という理由で警察を呼び、夫がその場で逮捕された―北海道札幌市で起きたこの事件をご存じだろうか。
過去にもトラブルがあったというこの夫婦。はたしてこれは単なる夫婦喧嘩なのか、それともDVなのか、真相はいかに……。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、今回の逮捕劇とカップル・夫婦間のDVの実態についてこう指摘する。
「DVが社会問題化して久しいですが、今回の逮捕報道に対するネットの反応を見ると、夫婦喧嘩とDVの線引きの難しさや、夫婦喧嘩でさえパトカーを呼びつける【不要不急の110番問題】などについて論じる人が多い印象です。
今回の事件の真相はまだ不明ですが、深刻なDVに悩んでいる人の中には、相手に心を支配され、警察はおろか身内にさえ悩みを告白できないケースも。
身の危険を感じたら迷わず警察へ連絡すべきだと思いますが、緊急性はないもののDVについて相談したいという人は、110番ではなく全国共通のDV相談ナビ(#8008)を利用してみてはいかがでしょうか」
さて今回、身近なDVについて取材している中で、DV被害を受けている可能性が高いママ友への思いを話してくれた女性がいた。
「虐待されていても他人に言えない子供は多いと思うんですが、やっぱりDV被害者の心理もそれに似ているのでしょうか」
このように問いかけるのは、45歳のパート事務員・尾上美由さん(仮名)。
「私自身、子供の頃に母からよく叩かれていました。でもそれが暴力とか虐待なんて思っていなかったし、今でもあれが虐待だったとは思いたくない。
現在はつかず離れずの親子関係ということもありますが、昔は親が叩いたくらいでは誰も騒ぎませんでしたしね」
美由さんが心配しているのは、小学6年生の長女の幼馴染であるAちゃんの母親についてである。
美由さんとママ友は町内も同じであるうえ、子供たちが保育園生の頃からの仲。娘同士も気心が知れている。
「小学3年の時うちの娘がAちゃんと同じクラスになって、再び遊ぶ頻度が高くなったんですが、あるとき娘が私に、Aちゃんが『お父さんがお母さんを叩く。やめてって言うと私と妹も叩かれる』と言っていると訴えてきたんです」
ママ友は2人目を妊娠中に夫の浮気が原因で離婚しており、上の子が小学2年生の時に再婚したという。
「お相手とは私も行事で何度か会いましたが、普通に感じのいい人でした。でも、その話を聞いてから少し心配するようになって…。」
子供から聞いた話を鵜呑みにして本人に真偽を問うことは憚られた美由さんだが、どうしてもそのことが気になり、ママ友と会った際に世間話のふりをして夫婦仲を探ってみた。
「うちのダンナの愚痴っぽい話をした流れで『そっちはどう?』みたいに聞いてみたんですが、『仕事熱心で思ってたよりずっと真面目な人』と言うだけでした。
再婚する前はお喋りで、小さなことまで2人でよく喋ったのに、彼女は再婚してから口数も減った気がします」
それから2年ほどは、気にかかってはいたものの何もできずに時間が過ぎた。しかし、昨年の小学校の運動会で、ママ友の背後にDVの影を感じる小さな出来事があったという。