2022年1月に発表された日産のスポーツカー「フェアレディZ」。ベースグレードでも500万円以上と高価なモデルであるにもかかわらず、予約開始直後から注文が殺到するなど、大変人気のあるモデルです。日産のスポーツカーといえば、「GT-R」もまた、大変人気のあるモデル。同じメーカー、かつどちらもスポーツカーといわれるモデルのフェアレディZとGT-Rですが、実は、成り立ちや個性は全く異なります。
■あくまでも実用的な領域内、ただしっかりと特別感を味わえる存在の「フェアレディZ」
フェアレディZの初代モデルが誕生したのは1969年のこと。ポルシェやジャガーといったヨーロッパのスポーツカーに憧れを抱く北米の若者たちのニーズに応えるモデルとして、北米日産が「3万ドル以下で誰でも買えるスポーツカーをつくる」として企画・開発をスタートさせ、誕生したのがフェアレディZ(北米では「Nissan Z」)の始まりです。
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ヨーロッパのGTカーにも見劣りしない美しいファストバックのスタイリングと軽量モノコックボディを持ち、ポルシェやジャガーのように四輪独立懸架のストラットサスペンションを採用することでハンドリング性能を追求していました。
ただ、若者でも買える価格までコストを下げつつ、ヨーロッパのスポーツカーの性能に匹敵するモデルを開発するのは容易ではなく、初代フェアレディZに搭載された直列6気筒の「L型エンジン」も、スポーツカー用に開発されたものではなく、大量生産を意識して幅広い車種に対応できるよう設計された実用型のエンジンであり、高価なスポーツカーのように高回転まで軽快に回るようなものではありませんでした。
しかしながら、L型エンジンは頑丈な鋳鉄製ブロックとチェーンによるカムシャフト駆動など、耐久性を求めた設計になっているため、扱いやすさや壊れにくさ、チューンのしやすさといった、若者にとっては非常にありがたい素性を持つエンジン。日本では2Lエンジンが販売されましたが、北米では排気量を2.4Lに拡大したモデルを設定し、太いトルクで扱いやすい、かつ信頼性の高いエンジンとして高評価を得ることに成功しました。
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フェアレディZはその後モデルチェンジごとに進化し、スペシャルティカーとしての資質を磨いてきました。頑張れば手の届く価格であることと、あくまでも実用的な領域内でありながらしっかりと特別感を味わえる存在。それがフェアレディZの個性であり、歴代モデルに受け継がれてきたコンセプトであるといえます。