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「どっちも被害者?」新宿タワマンの刺殺事件。SNSや大手メディアのコメントに見た混迷と違和感

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

新宿のタワマンで、ガールズバーの経営者だった女性が殺害された事件。SNSでは非難・擁護の殴り合いが続いており、被害者に対して「あの若さで『自分の店』はおかしい」とか「あの男、いい年して色恋営業も知らないのか」とか、加害者から渡った金銭についても「警察が介入して民事で争えなくなった、神奈川県警の失態だろ」というもらい事故に発展するなど、まさにザ・インターネットといった光景が広がっています。

加害者が、所有していたスポーツカーや高級バイクを売り払って金を工面していたことも判明。売却時の詳細が自身のSNSに残っていたことから、クルマ・二輪クラスタまで巻き込んでの議論が、続いては、いるんですが……

こういうのを「まだわかっていない段階」で一般化して殴り合うのって、何も得られないと言うか、場合によっては世の中が変な方向に動き出しちゃうこともあって良くないんですよね。現時点で明確なのは、

・殺人事件が起きた

・高額な金銭の授受があった

・ストーカー認定されていた

せいぜいこの3点でしょう。

ちなみに「たかが1千万程度で人を殺すなんて、頭オカシイ」なんてコメントもありましたが、とは言え先日、100万、200万の「はした金」で殺人&死体損壊をやらかした大河ドラマ俳優がおりまして、逆に「1千万は大金だろ。事件は起きるべくして起こった」なんて投稿もありましたが、これ金額の大小で語り始めると法治国家じゃなくなりますからね、どんな金額だろうが人は殺しちゃダメです。

「商売女に騙された男が悪い」なんてコメントをしていた、その同じアカウントが、

「ホストに騙されて破滅した女性は、貧困社会の犠牲者です」

という謎のダブルスタンダードを炸裂させていたのは面白かったですが、とにかく今は「事情や背景もまだ分からないのに、みなさん鼻息あらいデスネー」と眺めるのが適切な距離感でしょう。

ところがある「大手メディア」が、この距離感をすっ飛ばすような記事をネットに掲載、SNSで話題となりました。

NW!

「親子ほど歳の離れた女性と付き合えると考える50代男性は、どうかしているし、社会常識や論理的思考力が欠落している」というその記事、まあ何を言いたいかは分かるんですが、他人様の恋愛に対して「どうかしてる」とか「ありえない」「おかしい」って、過去、同性愛を始めとする性的マイノリティーの人たちが、さんざんブン殴られてきたロジックですからね。マスメディアが一番言っちゃダメなやつなのです。

しかも勢い余って、騙される「おじさんは馬鹿」だけど、ホストに騙される女性は若くて社会経験も少ない、だからホストは取り締まるべき、なんてことまで書いてしまって、じゃあ若くない女性が騙されるのはOKなんですか? と突っ込まれていた翌日、奇跡のようなタイミングで

「64歳の女が、元交際相手の31歳男を包丁で刺して逮捕」

という事件が発生……うーん、持ってますね。ぜひこの事件の詳細も同じように取り上げてほしいです。

まじめな話、結婚詐欺や国際ロマンス詐欺の被害者を貶す内容でもあったので、大手メディアが書くような記事ではなかったと思います。

言うまでもなく、どんな事情があろうと人を傷付けるなんて論外。そして何か事件が起きた時には、年齢性別をフラットに捉えつつ、ジェンダーバイアスを笑いモノにしつつ、でも相手にはしない。そんな言論空間を作っていきたいものです、私たちで。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



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