連日、幼い命が虐待によって失われる事件が起きている。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「あまりにも残酷な現状に目を伏せたくなる、そんな人も多いことでしょう。ただ子育てと虐待はそう遠い場所にあるものではありません。自分は絶対に大丈夫、そう思う人も多いと思いますが、すぐ隣にある存在だと認識することも大事だと改めて感じます」。
特に過熱する中学受験戦争における、教育虐待は昨今、フィーチャーされることも多い。首都圏模試センターの発表によると2023年入試の受験者数は私立中学、国立中学を合わせて5万2600人と過去最多。今年もさらに増えると予測されている。
「高校受験のように内申点が加味されない中学受験は、多くの場合が当日のテスト一発勝負。小学3、4年生の頃からこのテストを目指して、勉強し続ける労力は並大抵のものではありません。学校選びも親がイニシアチブを取るケースが多いと聞きます。中学受験そのものを否定するつもりは毛頭ありませんが、同時にそれがすべてではありません。お子さんによって向き不向きもあるでしょうし、大きな目で見ていきたいものです」。
今回は、中学受験に成功し進学校に通っていた息子が突然、学校へ行かなくなってしまったという女性に話を聞くことができた。
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高宮典子さん(仮名・50歳)とひとり息子は、昨年中学受験に挑戦した。
「小学2年生から都内にある進学塾に通い、小学5年生からはそれに加えて家庭教師もつけて望みました。中学受験は、算数が要と言われているんですが、うちの息子は算数の成績があまり良くなくて…結局、最後までハラハラの連続でした」。
中学受験は典子さんのすすめによるものだったそう。
「私自身、中学受験の経験者です。すごくいい学校で楽しかったこともあり、息子にもすすめたという経緯です。それに息子は小さい頃からスポーツが得意とか、そろばんができるとか、秀でたものがまるでなくて…。せめて勉強くらいは、と決断しました」。
小学2年生で秀でたものがある子の方が少ない気もするが、典子さんはそうは考えていないらしい。
「不妊治療の末、ようやくできた子だったこともありますし、できる限りいい環境で育てたいと思ってきたんです。公立が悪いというわけではありませんが、やはり私立の方が足並みが揃うイメージだったんです。ほら、収入とかもある程度、ないと入れませんしね。古い考え方かもしれませんが、きちんとした一流大学に行き、大手企業に就職して欲しい、そう願っています」。
一昔前の考え方のようにも思えるがまだまだこういう考えの人もいるのが現実だろう。
「勉強にはとことん付き合ってきました。塾の宿題も一緒に取り組んできましたし、できる限りわからないものをわからないままにしないよう徹しましたね。中学受験の算数ってすごく難しいんですよ。私も勉強しなおした感じです」。
典子さんは受験が決まってから、仕事を辞めたという。
「塾のお弁当を作らなくてはならないってこともありましたし、並走したいという気持ちが強かったんです。息子が4年生になるとき、仕事を辞めました。以来、2人の時間がかなり増えましたね」。
文字通り、二人三脚で歩んだ受験戦争。結果は上場だった。