年々男女ともに上昇している生涯未婚率だが、一口に未婚といっても、好んで独身を続ける人もいればそうでない人もいる。
多様な生き方を受容することが求められる一方で、婚外出生が多数派ではない我が国では、未婚率の増加・晩婚化が少子化問題と直結しているのも事実だ。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう語る。
「親しき仲にも礼儀ありと言いますが、家から独立した方が、実家に残る未婚の兄妹に対し親の介護などの負担を押し付けることで家族間にトラブルが生じるケースは少なくありません。
介護は成り行きで誰かがやるのではなく、事前に話し合って役割を決めるとともに、お互いへの感謝を忘れないことが重要なのですが、そうも行かないのが親族という修羅ですね…」
今回お話を伺った石巻加奈子さん(仮名)は、未婚で実家暮らしの38歳女性。
結婚して家庭を持った姉に、やたらと両親や実家のことを押しつけられてしまう現状に不満を持っている。
「以前は1人暮らしをしていたんですが、3年前に母が体を壊してからは、両親と実家暮らしをしています。
3歳年上の姉は7年前に結婚。今は旦那さんの実家のある街で5歳と3歳の子供を育てています。
実家へは電車を使うと2時間ほどかかるので、コロナ収束後とはいえ、年に2度ほど遊びに来るのが精一杯といったところですかね」
加奈子さんの両親は孫たちをことのほか可愛がり、忌み嫌っていたテレビ電話も、孫が生まれるやいなや導入した。
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「コロナ禍で会えない時期が続いたので、両親はしょっちゅう孫と通話したりおもちゃや服を送ったりしていました。両親に新たな生き甲斐を与えてもらえたという意味では、姉夫婦には本当に感謝しています」
一方で、加奈子さんは姉に対し、他人にはうかがい知ることのできない複雑な感情を抱いている。
「両親にとって初孫に当る甥っ子が生まれたとき、私は姉にお祝いとメッセージを送りました。
『私にはできそうにない〈孫の顔を見せる偉業〉を成し遂げてくれて本当にありがとう』と。でもこの言葉は、むしろ送った私自身の胸を突き刺さしたような気がします」
そして姉は、出産を機に、徐々に加奈子さんに対して上から目線になっていった。
「姉に、『私は〈孫の顔見せる部門〉で頑張ったから、実家のことはあんたに任せたわよ』といつも言われます。
でも、それを愛想笑いで誤魔化してしまう自分はもっと嫌です。我が家に孫の顔見せる部門があったなんて、知りませんでしたし(苦笑)。
『それはそれ。親のことは2人で考えないと』と言い返したいのが本音です。でも私は孫を抱かせてあげていないし、親の心配の種にもなっているから立場が弱いんです」