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LIFESTYLE 女たちの事件簿

「うちの子(犬)は幼児なんかよりよっぽど優秀…」ペットにだけ優しい人は、なぜペットにだけ優しいのか?

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

日本ペットフード協会の調査によると犬の飼育頭数はおよそ705万3千頭、猫がそれを上回る883万7千頭で頭数としては、昨年と横ばいだ。

10年単位で見ても驚くほど大きな差は見受けられない。しかし、飼育にまつわるコストにフィーチャーしてみると、その金額は年々増加している。内訳はペットフードやお菓子などの食費、それに加えて医療費、保険などで、犬で5年前と比べて1.5倍近いコストがかかっているというのだ。

「食事はこだわりの純国産のものをあげています。それに加えて毎月のトリミング、医療費に、医療保険……合わせると月に2頭で8万円くらいかな。でも子どもと思えば、安いものじゃないですか?」

そう話すのは橋田すみれ(仮名・48歳)だ。夫と2匹のトイプードルと暮らしている。

「私たち夫婦にとって、翔と凛は子ども、いやそれ以上の存在かもしれません。子どもは成長すると手がかかるでしょう?イヤイヤ期とは反抗期とかもあるって聞きますし。翔と凛に限ってはそんなことはありません。いつまでも可愛くて、私たち夫婦に癒しと愛をくれる存在なんです。本当に優秀」

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©︎Getty images

すみれが2頭に食べさせているのは、超高級フード。国産の食材を使ったこだわりのフレッシュフードで3週間に1度冷凍で送られてくるらしい。さらにおやつも免疫力をあげるという国産ジビエを使ったものだけ。犬の食費だけで月に5万近く。驚きの価格である。

「私たち夫婦より明らかにいいもの食べていますね、翔と凛は。だってこの子たちのほうが寿命は短いわけですし、少しでもいいもの、食べさせてあげたいんです」

と言いながらすみれは涙ぐんでいる。寿命のことを考えるといつもこうなってしまうんだという。

「翔と凛がいなくなったら……そう考えるだけで涙が止まりません。先月も友人の大事な大事な子が亡くなって、それを聞いただけで私、この子達がいなくなる、なんて嫌な想像しちゃって、ご飯が食べられなくなっちゃったんです……」

相当なペット愛である。夫も同じように犬たちを子どものように思っているのだろうか?

「夫の方がすごいかもしれません。甘やかしすぎるところがあるので、私が注意することもしょっちゅう。この間だって、3万円もするリードを2本も作ってきちゃったんです。なんでもカスタマイズできるらしくて……。結局はこの子達にぴったりだったんで許しちゃいましたけど」

そう言いながらすみれは、昼食だというプロテインを飲み始めた。なんと夫婦揃って、1日のうち2食はこのプロテインだけだという。

「この子達にいい暮らしをさせるために、ドックランが近くにあって、庭のあるマンションに引っ越しをしたんです。実際のところかなり無理をしてローンを組んだので、自分たちはできるだけ節約しているんです。夕食はだいたいうどんとか、焼きそばとか、お茶漬け…そんな感じです。外食をすることはありません。だってこの子達と一緒に食べに行けるところなんてあまりありませんし、何より私たちの食事にそんなお金を使うなんてありえないんです」

徹底した犬愛、溺愛ぶりにはあっぱれである。そんなすみれの周りには、すみれ同様ペットを愛している人が多くいる。

「散歩の途中やドッグランで知り合った方がほとんどですね。みなさん我が子を本当に愛していて、お互い子ども自慢することもしばしば。家族ぐるみでの付き合いなんかもありましたが、コロナ禍もあって最近はもっぱら外で会うだけになってしまいましたけど」

ペットを家族と感じる人ばかりがいる環境……それが大きな問題を生むとはこのときは、気がついていなかった。

「最近、お隣に同世代の女性が引っ越してきたんです。もともとは家族連れが住んでたんですがここだけの話、幼稚園に通う息子さんの叫び声とか、生まれたばかりの赤ちゃんの鳴き声がうるさくて……。うちの子たちが興奮しちゃうから、早く引っ越してくれないかなと思っていたところだったんです」

女性はすみれと同世代で、どうやら単身のようだった。初対面は、女性がすみれの家に引っ越しの挨拶にきたときだったという。

「うちの子たちが玄関まで出てきちゃって、その姿を見て彼女がすごく可愛いと言ってくれたんです。安心しました。前の一家は、うちの子たちのこと毛嫌いしていたもんですから」

それからというものすみれはマンションの廊下はもちろん、近所のスーパーや遊歩道で彼女に会うたび、積極的に声をかけた。彼女の方もまんざらではなさそうだったとすみれは話す。

「引っ越ししてきたばかりで、友人もいないようでしたから。それに、あれでしょう?この年齢で、このマンションってことは、やっぱり訳ありかなって。例えば、DV旦那と離婚した慰謝料とか、親の遺産とか……なにかないとこんな額支払えませんでしょう?女性ひとりで。知り合いもいないところに引っ越してきたことにも、きっと何か理由があるんじゃないかなって思っていたんです」

すみれと女性は道端で合えば、世間話をするような仲になっていったという。あるとき、女性が実家からリンゴがたくさん届いたからいらないか?とすみれに問いかけたという。

「喜んでいただきますと言いました。すると彼女、よろしかったらアップルパイもあるから、お茶にきませんか?と誘ってくれたんです」

すみれは翌日、喜んで「翔と凛」を連れて彼女の家を訪ねた。

すると、ドアを開けた彼女の顔が明らかに曇ったという。その表情にすみれは戸惑ったが、彼女はすぐに表情を戻して、すみれたちを招き入れ、テーブルに案内した。

「『まずはこの子達にお水をください』と言いました。携帯用の小さなカップを差し出すと彼女の顔がまた、一瞬曇ったんです。玄関で感じたあれといい、どこかに違和感を覚えました。でもすぐに水を入れたカップをこの子たちの前に、紅茶とアップルパイを私と彼女の前に置き、いつものように世間話を始めたので違和感はどこかへ飛んでいってしまいました」

すみれはこの日、彼女との距離がぐっと近づいたと感じた。もしかしたら、久しぶりに家を行き来する友達ができるかもしれない……そんな期待すらもったという。ところが事態は、そうは転ばなかった。ペットを愛するあまり、人間とうまく関われないすみれさんが起こしたトラブルの詳細は、次回でさらに詳しくレポートする。

ライター:悠木律

▶︎後編に続く


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