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LIFESTYLE 女たちの事件簿

「家族から嫌われた... 」62歳主婦が「勘違い自転車ルール」を押し付けて後悔していること。

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

道路交通法が改正され、自転車のヘルメット着用が努力義務になって数ヶ月が経つ。これまでも13歳以下の子供に対しては努力義務が課されていたが、これからは自転車に乗るすべての人に対しての努力義務となった。それに伴い、帽子型のヘルメットなど、よりおしゃれで日常的に被りやすいデザインが人気を集めているという。

遠藤和子(仮名・62)は、この改正に賛成だと話す。

「自転車って車に比べるととても手軽な乗り物に感じますけれどね、本当はとても危ないと思うんです。私自身自転車に乗りますが、乗っている側でも、歩いている側でもヒヤッとすることがしょっちゅうあります」

確かに自転車は、乗り方によっては危険がいっぱいだ。

「例えば、歩道を歩いているとびっくりするスピードですり抜けていく自転車がいたりするでしょう。驚いてしまいますよね。それに静かな自転車だと後ろにいることに気が付かないなんてことも。私はこれまで、通り抜けするときは必ずベルを鳴らして、相手に知らせるようにしてきました」

自転車は思う以上にスピードが出る乗り物。平均時速は15kmほどといわれているが、それ以上出している自転車も少なくない。さながら車のようにスピードを出しているケースもある。

「近所に暮らす高校生の孫が自転車に乗っている姿を街で見かけたときは、それはそれは驚きました。目にも止まらぬ速さだったんです。でも孫に言わせると、自転車は肩身の狭い思いばかりするらしいんです」

都内には自転車専用レーンが数多く設けられている。そのほとんどは車道の端部分。車と並走するには、どう見ても狭いというようなところも多く見かける。とはいえ、歩道では歩行者が優先だ。どっちに転んでも、自転車は走りにくい状況といえよう。

「確かに、自転車専用レーンを子どもを乗せた自転車なんかが走っているのを見ると、何やってるのかしらと思いますよね。歩道を走るべきよね、ほんと。それに最近は大きな荷物を背負った宅配の自転車もよく見かけるようになりました。あれも不安定そうで怖いですよね」

そんな和子は、ヘルメット着用努力義務化の前から、すでにヘルメット着用を始めていたという。

「私、今62歳なんですけれど、車を運転しないこともあって近所のスーパーには自転車に乗っていくんですよ。『自転車は危ないから、そろそろやめたらほうがいい』と長男に言われていますが、やっぱり買い物すると荷物が重くなるでしょう? 歩くのはなかなか面倒で」

3ヵ月ほど前には、自転車でスーパーに出かけた際、曲がり角で同年代の男性とぶつかって怪我をしたという。

「二人ともママチャリに乗っていました。スピードが出ていなかったことが幸いして、軽傷で済みました。でも、自転車のカゴが曲がってしまいました」

大事故になっていてもおかしくはない状況。しかし、和子が最も恐怖を感じたのは、ぶつかった相手の態度だった。

「急に怒鳴りつけてきたんです。どっち側を走ってるんだ、とか言って。びっくりしてしまって、何も言えませんでした」

同年代とはいえ、相手は恰幅のいい男性。何かされたらと思うと怖くて、強く抗議ができなかったそうだ。

「車だったら、ナンバーを覚えておけば、事後処理もできますが、自転車にナンバーはありません。修理のこともありましたし、どうにか連絡先を聞こうと試みたんですが……。『間違っているのはあんたのほうだ、しっかりしとけ』と言って、その場からいなくなってしまいました」

声をかけてくれる人もおらず、和子は泣き寝入りせざるを得なかった。

「それ以来、必ずヘルメットを被るようになりました。何かあってからでは遅いですからね」

この事故のあと、和子は長男の妻にあたる嫁や孫にも必ずヘルメットを被るように念を押すようになった。

「でも、全然被っている気配がないんです。それが原因で、この間少し言い合いになってしまいました」

長男一家は、和子の家から歩いて15分程度の距離に住んでいる。共働き世帯ということもあり、最近は会う機会がめっきり減ってしまった。

「嫁姑がうまくやる秘訣は、言いたいことをきちんと言うこと」と主張する和子は、顔を合わせる機会があると、長男の妻に自らの意見を伝えてきた。

「今回のヘルメットの件も何度も、何度も言ってきたんです。そのたび『確かに危ないですしね』と濁すばかりで。全然買う気配がないから、仕方なく私が買って渡したんですよ。私自身事故に遭っているわけだし、孫がものすごいスピードで自転車に乗っている姿も見ているんですから」

和子はホームセンターで手ごろな価格のヘルメットを購入し、孫用に、と手渡した。

それでも、孫は、いっこうに和子の購入したヘルメットをかぶる姿を見せなかった。

「わざわざ買ってあげたんだから、文句なんて言わないで欲しいですけどねぇ」

こんな風に孫と嫁への不平不満を近所の友人に漏らしていたところ、ある日、友人の一人が、和子の孫がヘルメットを被っていたところを見たと教えてくれた。

「やっと!と思いましたよ。それを聞いてすぐにね、お嫁さんにLINEしました。被った写真が欲しいって。でも、待てど暮らせど写真は送られてきませんでした」

和子は痺れを切らし、長男に頼んで孫が着用しているヘルメットの写真を送ってもらった。しかし、その写真は和子の期待を大きく裏切ることになった。

「息子から送られてきた写真を見てびっくり。私があげたヘルメットじゃないものを使っていたようなんです。ひどいでしょう?」

孫はなぜ、和子が贈ったヘルメットを使わなかったのか。背景には、意外な理由があった。また、これをきっかけに和子のすさまじい勘違いが明らかになっていく。

☆次回、自転車ルールに関する高齢者の大きな勘違いについて詳報する☆

取材/文 悠木 律

▶︎後編に続く


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