何かと忙しい師走。
一年の締めくくりで仕事は慌ただしく、忘年会やクリスマスの準備、家族行事の予定を立てたり年末年始に実家へ帰省するスケジュールを組んだり、あっという間に過ぎていく月ではないだろうか。
「12月になると、クリスマス前の悲劇を思い出します。家族のために、繁忙期の業務と残業を頑張ってくれていると思っていた夫がまさか浮気をしていたなんて......。浮気が発覚したときは怒りと悲しみのダブルパンチで発狂でした」
苦しげな表情で話すのは、二児の母である中村千紗さん(33歳・仮名)だ。
千紗さんの家族は、夫の実家である二階部分で生活。第一子出産を機に実家をリフォームし、完全分離型の二世帯住宅で暮らしている。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう指摘する。
「年末年始は家族や友人と楽しく過ごせる時期ですが、パートナーが浮気に走りやすい時期でもあります。寒くなって人肌恋しくなり、年末の繁忙期や忘年会などの催し物で帰りが遅くなっても怪しまれないので、浮気相手と密会を重ねる傾向にあります。
多くのサラリーマンはボーナスが入るので財布のひもが緩み、浮気相手へのプレゼントや旅行へ出かける人もいますよ。もともと浮気をしていなくても、年末年始の忘年会や新年会、同窓会をきっかけに浮気に発展するケースも。イベントが多いこの時期はとくに注意が必要です」
今回は、金融機関に勤める主婦を襲ったクリスマス前の悲劇をリポートしていきたい。
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「夫は真面目で仕事熱心。他の同期に比べて出世が早い方で、営業で残業が多く、取引先とのゴルフや飲み会は日常茶飯事です。一階に住んでいる義両親が子育てのサポートをしてくれるため、夫には仕事を頑張ってもらい、私は仕事をセーブして家庭を支える構図になっています。義両親は昭和的な価値観をもっていて、男が仕事で結果を出さないといけない、残業が多くても仕方ないといった考えです。12月は残業や飲み会が多いのは知っていますが、去年は明らかにおかしい量の残業をしていました」
千紗さんと夫は、共に金融系の企業に勤めている。会社は違うものの職種が同じなので、夫の仕事内容や繁忙期の忙しさについては理解していたようだ。
企業側は働き方改革を取り入れ従業員の残業を減らす努力はしていたが、人手不足は解消されないため夫の帰宅が21時以降というのもザラだった。
千紗さんは仕事と家庭を両立すべく、短時間勤務に変更。仕事量は減らしてもらい、激務の夫のサポートをするべく義両親と協力し合い子どもたちを育てている。
「夫は昔から真面目で取るべき資格はすべて一発合格、営業成績も良い方です。出世していくだろうなと感じているので、家のことはなるべく私が中心にやっています。義両親は、自分たちの息子には仕事を頑張ってもらうから、子育てはサポートするねという感じでいつも助けられています」
仕事熱心で真面目な夫とは仲が良く、コミュニケーションも取れている方だと思っていた。彼から嘘をつかれたことはなかったが、最初に疑問を抱いたのはボーナスが支給されてしばらく経った頃だった。
「夫は稼いだ分をちゃんと家庭に入れてくれます。欲しい靴やアウターを買うため毎回3万から5万円を引いた分を私に渡してくれていました。その年、冬のボーナスがいつもより15万円ほど多かったんですが、15万円をまるまる自分のお小遣いにしていたので珍しいなとは感じていました。なにか買ったの?と聞くとゴルフクラブを買ったと答え、見せてと言うと『会社のロッカールームに置いてある』って言うんです。個人のゴルフクラブを会社に置くか......? と疑問に思いながらも一旦はスルー。ボーナスをちゃんと妻に渡してくれるだけいいかと思っていました」
それから度々、夫の言動や行動におかしいと感じる回数が増えたようだ。
以前までは家に帰ってきてくるとスマホを一切気にせず、車に置き忘れるような夫が、急に脱衣所まで持ち込むようになったのだそう。外出先で5歳の長男が「パパの携帯でYouTube見たい!」とせがむと、すぐに渡さず何かを操作したあとに差し出すようになっていた。
「そのときは浮気を疑うとかではなく、『昨日の夜にエッチなものでも見たのかな』と本気で思ってました(笑)付き合っているとき、たまたま見つけてしまったことがあるので。浮気を疑ってなかった理由は、夫はモテるタイプではないからです。不細工ではないんですけど学生時代は男ばかりで集まっていたし恋愛に関する話を聞くことがなかったので。しかも若干デリカシーがないというか女性心をわからない人なので、女性関係の心配はしていなかったんです」
ボーナスとスマホの一件があってから、残業から帰ってくる時間がだいぶ遅れていったという。
決算時期と監査が重なったと言い、23時帰宅の日が続いた。もちろん千紗さんは同業者のため、急な監査対応は定時で帰れるわけがないのを知っている。
忙しい12月に急に監査が入ったとはいえ、土日出社や朝方3時に帰宅するのは絶対おかしいとこの頃に感じるようになっていた。
何か怪しいと思いながら日々を過ごすなか、それでも不器用な夫が浮気できるはずがないと決めつけていた千紗さん。後半では、仕事に誠実なはずの夫が残したショッキングな浮気三昧の証拠をリポートしていく。
取材/文 錦城和佳