――生理が来ないから婦人科を受診したら、妊娠していたの。
唖然としましたね。妊娠にはかなり気を遣い、必ず避妊具を使用していましたから……。
こんな時、男側としては返す言葉を考えまくりますね。
愛する恵子さんとの間に授かった命でも、僕は家庭を壊すわけにはいかない。だからと言って、産んでほしいとも堕ろしてほしいとも言えなくて……電話をかけましたが、通じないんですよ。
とりあえず、電話をしてほしい旨を伝えると、翌日、彼女から電話がありました」
一睡もできないまま、通話ボタンを押した達郎さん。
恵子さんとは以下のような会話をしたという。
「――ごめんなさい。大切な命だけど……堕ろそうと思うの。
その言葉に、正直、ホッとした達郎さんだったが、
――体は大丈夫? 避妊には気をつけていたのに申し訳ない……。
深く謝罪をしたという。
――大丈夫。病院には女友達が付き添ってくれるから……で、費用だけ負担してほしいの。
――もちろんだよ。いくらかな?
――私、持病があって……30万円。
――えっ、30万?」
予想外の金額に、達郎さんは驚愕した。
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