「あれは馬鹿製造機でしょ」
吐き捨てるように言う隆一さん(42歳・仮名)は、社会科の教員だ。
「歴史が苦手でも、大河ドラマでやっていた時代の日本史だけはものすごく詳しい生徒とか、アニメの影響で戦国武将の名前をものすごくたくさん知っている生徒とか、昔はいたんですよね。昔って言っても4、5年前かな。でも今の子たちはドラマを見ることができない。3時間の映画なんて絶対に無理。」
隆一さんは、手をバンザイの形にあげてみせる。
お手上げということだろう。
「M-1の漫才すら、『長いなー、いつ面白いところが来るんだろう。面白いところだけ見せてくれないかなあ』と思うらしいよ。その話を聞いたときに僕は、なにかの冗談かと思って、何度もその言葉の真意を聞いたけど、真意も何もその言葉通りなんだ。4分が長くて退屈で我慢できないんだって。そりゃあ、僕の授業時間50分なんて苦痛に決まっているよね」
隆一さんは、もう、諦めてしまったというような顔だ。
「僕は子どもたちの興味に寄り添って、できるだけ『社会』という教科を面白がってもらえるように結構努力するタイプなんだ。だから流行っているアニメやドラマや映画は必ず見て、それと日本の法律や歴史とを関連させられないかと考えるタイプ。でもshort動画だけは、短すぎて関連付けなんてものが無理だ。しかもあんな中身のない動画は、見ている子どもたちの中にも何一つ残さないからね。」
隆一さんの言葉はもはや、ほぼボヤキだ。
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