子供への性教育をどのように行えばいいのかわからず悩んだ、という経験をお持ちの方は多いのではないだろうか。わが子への性教育について、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう助言する。
「性については、親自身も実は正確な知識を持っていなかったり、偏った意見を持っていたりするなど、子供に教えるといっても一筋縄では行かないことも。また、夫婦間で方針が異なり、なかなか進まないという声も聞かれます。
厚生労働省は、若い世代のさまざまな性の悩みや課題に寄り添えるよう「スマート保健相談室」を開設していますので、こうした情報を年頃のお子さんにさりげなく共有するところから始めるのも一案ですよ」
「うちでは息子がスマホでアダルトサイトなどを見られないようにフィルターをかけ、PCにも対策していましたが、実際には管理が十分でなかったということです。
それに、息子の性教育について夫と意見が衝突してそれがこじれてしまい、夫婦仲まで険悪になっています。夫は『お前が間違っている』の一点張りで......」
こう語るのは、中学1年の息子の性への関心やそれについての対応に悩んでいる若浦さつきさん(仮名)。オンラインで事務仕事を請け負っている40代の主婦だ。
「息子が使っているパソコンはもともとは夫が使っていたもの。息子には自分のアカウントしか使ってはいけないと説明してセーフサーチも使用していました。あと、このPCでは動画は視聴しないという約束でした」
ゲームや宿題のためのリサーチなどにPCを日々活用しているというさつきさんの息子だが、
先日、さつきさんが自宅のワークスペースで作業をしていた息子に学校行事のことで質問をしに行くと、息子は慌ててマウスをカチカチとやり、明らかに慌てた様子を見せた。
「これは何か大人なやつを見てるなって、ピンと来たんです。私もつい動揺してしまいました。今どきは表現が過激になっているんでしょうし、そんなものばかり見られても困るなと」
さつきさんは仕事でPCが不可欠だ。その点を利用し、自分のPCが不調であることを理由に夫からパスワードを聞き出して、息子がアダルト動画などを視聴した履歴がないかどうか調べてみることにした。
「私が見た限り、アダルトサイトを利用した跡はなかったです。動画は見ないという約束は多分守られていないですが、ゲーム解説みたいな動画しか見ている形跡はありません。ただ......」
画像をまとめたフォルダに、大量の猥褻画像がストックしてあるのを見つけてしまったのだという。
「たくさん出てきました。しかも、かなり過激な物もあって、ショックで凍り付いてしまったんです。ビキニ着てポーズとかじゃなくて、法律的に大丈夫なのかっていう画像もありました。行為中みたいなものとか、修正しなくていいの?っていうものとか」
もともとは夫のPCだということもあり、それらが夫が保存した画像である可能性も考えられたが、PCを息子に貸すと決まった段階で、夫はデータを全て移すと話していたはずだ。
さつきさんは、画像が息子のものである可能性はきわめて高いと思い、不安を募らせた。
「悩みに悩みましたし、とても聞きにくかったですが、息子に聞いてみたんです。勉強の妨げになるようなものをPCで調べているんじゃないの?と。
そうすると、息子は般若のような顔になって、何勝手に見てんだよ!と低い声で、凄むように言いました。ほんの数年前までは『お母さん、おやつ何~』なんてかわいく言ってきてたのに。私、息子の変化についていけずに、後で一人で泣いてしまいました」
息子は小学5年あたりから徐々にさつきさんに対して言葉数が少なくなったり、反抗的な態度を取ったりするようになった。
「まあ、普通に思春期だなという感じで、周りのママ友も似た感じでしたので、そこは気にしないようにできたのですが、何しろ会話が減ったので、今何に興味があって何で悩んでるとかはほとんどわかりません。気持ちが知りたいだけなのに」
さつきさんは、夫に「私の代わりに時々話を聞いてやってほしい」と再三頼んできたが、「過保護だ」「年頃の男なんてそんなもんだ、放っとけ」とけんもほろろだったそう。
「私は男の兄弟もいないですし、特に体の成長とか男の子ならではの興味や心理などが本当にわからないので、頼みの綱は夫だけなのですが……」
さつきさんの対応に夫は......。後編に続く。
取材/文 中小林亜紀