「時間がもったいないし、チャットGPTで片付けちゃうよ」
『先ごろ文科省より「生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が教育現場に通知されました。ガイドラインでは、チャットGPTを限定的な利用から始めることが適切とし、生成AIの使用に関して、特に小学生については慎重に対応すべきことが謳われています。
新技術の使い方を学ぶことと同時に、独力で課題に取り組むことも子供の成長にとっては重要。チャットGPTの使用には十分な配慮が必要です』
こう語るのは、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏。
一方、「子供の力で夏休みの宿題をさせるべき」というのは建前で、すでに子供の課題にチャットGPTを使ったり、サポートの域を超えて親が宿題に関わったりしているという家庭も、実際にはあるのではなかろうか。
今回は小学校4年の子を持つ丸野律子さん(仮名)にお話を伺った。
「先日、学校行事で会った何人かのママと立ち話した時、チャットGPTの話題が出ました。まだまだ登場したばかりの技術だと思っていたのですが、意外とすでに試してる、使ってるという人がいて驚きましたね」
中には、子供が家で宿題や授業の直しなどをする時、すでにチャットGPTを利用しているという親もいたそうだ。
「あれ凄いでしょ、やらない手はなくない?とか自信満々に言ってるのでびっくりしましたね。子供が自分で考えないようにならないのか、心配じゃないんでしょうか」
律子さんはそう鼻息を荒くしたが、今回問題にしているのは、もっとずっと前から存在する「親が代わりに夏休みの宿題をやっちゃう問題」の方だという。
チャットGPTに夏休みの作文を書かせることが不正なら、親が代筆するのも不正だ、と律子さんはいきり立つ。
聞けば、つき合いの長いママ友(Aさん)が、何年も続けて子供の夏休みの宿題を代行していることに強い疑問を持っているという。
「子供同士も保育園から仲が良いんです。お互いに子供が要領が悪くてのんびり屋さんということもあり、親同士も意気投合して以来、Aさんとはずっと仲良くしてきました」
Aさんが子供の夏休みの宿題を自ら制作している事実を初めて知ったのは、律子さんたちの子が小学2年生の夏休み終了後、まだコロナ禍の最中のことだった。
「電話で近況報告をし合った時、私が『夏休みの宿題って、もはや親の宿題だよね』と言うと、Aさんはそれに激しく同意したあと、作文も工作も私がやったのよ、と言い出したんです。しかも、大笑いしながら言うので、私、驚いてしまって」
律子さんが「夏休みの宿題は親の宿題」と言ったのは、工作や観察の材料調達・準備のほか、作文のテーマの相談に乗ったり、ドリルの採点をしたりする「サポート」が大変だ、という意味だったのだそう。
しかし、Aさんの家庭では、本格的に親が宿題を手がけていたというわけだ。
「昨年、つまり3年生の時も、同じようにAさんが子供の読書感想文、コンクール作文、工作を制作したそうなんですね。サポートじゃなくて、ほとんど全部やったんだそうです。
しかも、コンクール作文の方は入賞しちゃったらしくて、地元紙に名前が載るって言ってました。そこも爆笑しながら報告してきたんですよ。『子供っぽさを残すことが一番難しいわ』とか見当違いな感想を言いながら」
教員は、子供の日頃の作文能力・工作技術と照らして、その作文や工作を子供自身が制作したかどうか判断ができないものなのだろうか、と律子さんは首を傾げる。
後編では、替え玉宿題における「各家庭の衝撃の実態」について詳しく話を聞いていく。あなたの家庭と比べて読み進めてほしい。
取材/文 教育ジャーナリスト 中小林亜紀